戸建住宅の新築や建て替えで「コンクリート住宅(RC造)と木造住宅どちらを選べばよいか迷っている…」方もいらっしゃるのではないでしょうか。一般的に戸建住宅は木造が中心ですが、なかにはコンクリート住宅を勧めるハウスメーカーや工務店もあります。識者の見解や信頼性の高い参考資料に基づきながら、ここでは4つのテーマ「耐久性・耐震性・寿命・建築コスト」で徹底比較します。
目次
耐久性が高いのは?コンクリート住宅と木造住宅を比較
1つ目のテーマの耐久性ですが、コンクリートと木を比べたとき、「強度があるのはコンクリートのほう」と思う人が大半ではないでしょうか。
しかし、元・東京工芸大学教授の大野隆司氏は、著書のなかで「じつはそう単純な話ではありません」と述べています。
その理由は、コンクリート住宅と木造住宅の材料には下記のようなメリットとデメリットがあるからです。
コンクリート住宅 (主な材料:鋼材とコンクリート) |
木造住宅 (主な材料:木材) |
|
メリット | ・引っ張る力に強い(鋼材の特性) ・変形しにくい(同上) |
・重さがない割りに強さがある ・環境の負荷が少ない |
デメリット | ・サビやすくさらにサビが剥がれやすい(鋼材の特性) ・高温になると強度が弱まる(同上) ・ひび割れしやすい(コンクリート) |
・湿気が多いと腐りやすい ・繊維方向によって強度が変わる |
(引用:講談社BOOK 住宅建築なんでも小事典)
コンクリート住宅のほうが強いわけではない
表面的な耐久性だけで比較すると、木造住宅よりもコンクリート住宅のほうが上回ります。
しかし、重さあたりの強さ(比強度の高さ)で比べると「木材は、鋼材と比べても遜色がありません」と大野氏は解説しています。
つまり視点を変えると、「木造住宅よりもコンクリート住宅が強い」わけではないということです。
ここで大事なのは「コンクリート住宅のほうが強い」と思い込まずに、ハウスメーカーや工務店が提供する個々の住宅の耐久性を数値などで確認することです。
耐震性が高いのは?コンクリート住宅と木造住宅を比較
次に、2つ目のテーマである耐震性でコンクリート住宅と木造住宅を比較してみましょう。
林野庁や木構造振興らが作成した資料「科学的データによる木材・木造建築物のQ&A」によると、鉄筋コンクリート造の構造壁(厚さ15㎝)と木造の構造壁(合板の両面張り)を単純比較した場合、鉄筋コンクリート造の構造壁のほうが耐える力が数倍あります。 (引用:林野庁 科学的データによる木材・木造建築物のQ&A)
重さを合わせて考えると木造住宅にも有利な点がある
しかし、さきほど触れた「耐久性の比較」と同じように、建物の重さを合わせて考えると木造住宅にもアドバンテージが出てきます。
また、この資料では、データを交えながら木造住宅の耐震性を以下のように解説しています。
・建築基準法で定められている耐震性能レベルは構造に関わらず同じである ・建物に伝わる地震力は建物の重さに比例する(木造は鉄筋コンクリート造の約4分の1の重量比しかない) ・(新耐震基準の建物なら)大地震の際の木造の全壊率は鉄筋コンクリート造などほかの構造と比べて高くない ・木造はほかの構造に比べて耐震性能を効率よく上げることができる (引用:林野庁 科学的データによる木材・木造建築物のQ&A) |
上記の内容を踏まえると、耐震性というテーマでも「コンクリート住宅のほうが上」と思い込まないことが大切であることがわかります。
寿命が長いのは?コンクリート住宅と木造住宅を比較
建物の寿命についても、一般的なイメージだと「コンクリート住宅のほうが勝る」と考える人が多いのではないでしょうか。
しかし耐久性や耐震性と同様、こちらも単純ではありません。コンクリート住宅に長寿命のイメージがあるのは、木造住宅よりも「耐用年数が圧倒的に長いから」です(下記参照)。
鉄筋コンクリート造の耐用年数 | 47年 |
木造の耐用年数 | 22年 |
「耐用年数=実際の建物の寿命」ではない
この耐用年数は「建物の寿命」を示す指標といわれることもありますが、実際には税金を計算するときの基準として国が設定した使用可能期間のことです。
つまり、「耐用年数=実際の建物の寿命」ではないということです。
100年以上持つ木造住宅も
では、木造住宅とコンクリート住宅のリアルな寿命はどれくらいなのでしょうか。
まず木造住宅ですが、早稲田大学・小松幸夫教授の調査では、木造住宅は平均約65年で建て替えられています。
用途 | 1997年調査 | 2006年調査 | 2011年調査 |
木造専用住宅 | 43.43年 | 54.00年 | 65.03年 |
(出典:論文「建物の平均寿命実態調査」(2013年1月)早稲田大学 小松幸夫)
ただ注目したいのは、木造住宅の建て替え理由の多くが「機能やデザインなどが時代遅れになったこと」という点です。
これを考慮すると、大半の木造住宅には65年を過ぎても住むことが可能と考えられます。
前出の林野庁らが作成した資料では、以下のように等級などによって50年〜100年程度、構造を維持することが可能と解説しています。
耐震等級など | 構造躯体が維持できる目安 |
等級2 | 50年〜60年程度 |
等級3 | 75年〜90年程度 |
長期優良住宅 | 少なくとも100年程度 |
※劣化の早期発見と補修でさらに長期間使用することも可能
(引用:林野庁 科学的データによる木材・木造建築物のQ&A)
コンクリート住宅は50年以上〜120年程度
次にコンクリート住宅の寿命についてですが、国土交通省のレポートではいくつかの論文などをもとに鉄筋コンクリート造の寿命を50年以上〜120年程度(外装仕上げを施すことで150年程度)と解説しています。
(参照:国土交通省 中古住宅流通促進・活用に関する研究会報告書 取りまとめ後の取組紹介)
上記の内容に基づくと、コンクリート住宅のほうが木造よりも長寿命な傾向がありますが、最終的にはケースバイケースといえるでしょう。
建築コストが高いのは?コンクリート住宅と木造住宅を比較
コンクリート住宅と木造住宅を比べたとき、「建築コストが高いのはコンクリート住宅」です。
コンクリート住宅のコストは木造の1.5倍
問題は「どれくらい差があるか」ですが、一般的に鉄筋コンクリート造の坪単価や㎡あたり単価は木造の 1.5 倍〜2倍程度といわれています。
たとえば全国生コンクリート工業組合連合会らは、同じエリアに戸建住宅を建てた場合、鉄筋コンクリート造の建築コストの目安は「木造の1.5倍程度」と解説しています。
(参照:鉄筋コンクリート(RC)造の建物 Q&A③)
この「木造の1.5倍程度」という目安は各都道府県の法務局が定めている基準表をもとにしたものですが、エリアによって評価割合(鉄筋コンクリート造住宅の木造住宅に対する割高感)は以下のように変わってきます。
札幌 | 121.6% |
東京 | 150.5% |
大阪 | 146.2% |
福岡 | 150.5% |
※評価割合の適用期間:平成30年4月〜令和3年3月
(引用:全国コンクリート工業組合連合会)
上記の結果に基づくと、コンクリート住宅の建築コストの割高感は、札幌よりも東京・福岡のほうが高いということになります。
コンクリート住宅と木造住宅の比較内容をまとめると……
ここでは、コンクリート住宅と木造住宅を4つのテーマ(耐久性・耐震性・寿命・建築コスト)で比較してきました。その内容をまとめると次のようになります。
比較テーマ | 内容 |
耐久性 | ・単純な強さはコンクリート住宅が木造住宅に勝る ・ただし、建物の重さを考慮すると単純比較できない |
耐震性 | 同上 |
寿命 | ・木造住宅の寿命は耐震等級などで違い50年〜100年以上 ・コンクリート住宅の寿命は50年〜120年程度(延命で150年) |
建築コスト | ・コンクリート住宅は木造住宅の1.5 倍〜2倍程度高い |
はっきりしているのは、建築コストを抑えることを最優先するのであれば、木造住宅を選んだほうがよいということです。
そのほかのテーマ(耐久性・耐震性・寿命)では、単純比較できない部分もあります。
どちらを選ぶべきか迷うのなら、両方を視野に入れながら候補となっているハウスメーカーや工務店が採用する工法、提供するメンテナンスサービスの中身を確認しながら慎重に決めるのがよいでしょう。
その際は、将来どれくらいのメンテナンスコストがかかりそうかの目安(例:数十年間の見込みコストなど)も合わせて確認してみるのが賢明です。
たとえ同じ構造でも、メンテナンスコストの目安は業者によって変わってくるので注意が必要です。
(提供:タツマガ)
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