自分自身のアバターを介して、世界中の人々とリアルタイムでコミュニケーションを楽しめる3DCG仮想空間「メタバース」。Meta(Facebook)を含む大手企業が市場に参入するなど、にわかに注目を浴びています。

VR(仮想現実)やAR(拡張現実)といったテクノロジーの進化により、仮想空間が現実味を帯び始めた今、ゲームからビジネス、教育、日常生活まで多様なシーンで活用するための動きが加速しています。

世界が注目する「メタバース」とは?

ブロックチェーンが創る次世代仮想空間「メタバース」の未来
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

「メタバース(Metaverse)」は古代ギリシャ語の「メタ(超過した・高次の)」と英語の「ユニバース(宇宙・全人類)」 を組み合わせた造語で、もともとはSF小説に登場する仮想空間の名称として使われていました。

インターネット上に構築された仮想空間であり、国境を越えたコミュニケーションを楽しめるというコンセプトはMMORPG(規模多人数同時参加型オンラインRPG)と共通しますが、メタバースにはあらかじめ決められたシナリオやキャラクターなどが存在せず、ユーザーは3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)で構築された世界の中で自由に行動できます。

「あつまれ、どうぶつの森(任天堂)」「Second Life(リンデンラボ)」「Fortnite(エピックゲームス)」など、メタバースの構想を用いたゲームはすでに多数リリースされています。

2021年10月下旬にはFacebookが社名をMeta(メタ)に変更し、メタバース事業に本腰を入れる意向を発表しました。同社が目指すメタバースは、ユーザーがメタバース内で実際に働き、学び、現実の世界と融合できるというもので、「仮想空間に存在するもうひとつの現実になる」と期待されています。

ブロックチェーン技術がメタバースにもたらすメリット

さまざまなポテンシャルが議論されているメタバースですが、実用化に向けた課題も指摘されています。

その中のひとつが、「アイテム(通貨を含む)の所有権保護」を巡る問題です。既存のメタバースでは、アイテムの所有権や著作権、管理権はプラットフォームを運営する会社が有しています。そのため、運営会社が破たんするなどの理由でサービスが終了した場合、所有しているアイテムやデータが消滅するリスクがあります。また、それらの権利を保護する手段が確立されていないため、現在は詐欺・不正行為の取り締まりが困難です。

このような問題は、メタバースの活用幅が広がるほど深刻化すると考えられています。

そのソリューションとして注目されているのが、改ざん不可能という特徴を持つブロックチェーン技術です。ここからは、ブロックチェーン技術とメタバースの融合がもたらす主なメリットについて見ていきましょう。

透明性・相互運用性の向上

個人・法人ユーザーが所有しているデジタル資産や取引に関するデータをブロックチェーン上に記録し、秘密鍵をユーザー自身が管理することで、資産データや権利、取引などの透明性が向上すると期待されています。

また、デジタル資産を「NFT(Non-Fungible Token/代替不可能トークン)」化することで相互運用性を持たせ、複数のメタバースプラットフォームで利用できるようになります。NFTはブロックチェーンを基盤とするデジタルデータの一種で、唯一無二の価値を証明するトークンとしてデジタルアートやコンテンツ、ゲームなどの領域での活用が広がっています。

独立した経済圏の構築

前述のとおり、既存のメタバースではアイテムやデータの管理はプラットフォームを運営する会社が行っているため、例えばプラットフォーム上でアイテムを売買する際は、運営会社に仲介してもらう必要があります。

しかし、ブロックチェーン技術を利用すればP2PやB2B取引が実現するだけでなく、仮想通貨のマイニングのようにユーザーが利益を得られるインセンティブ制度を導入することもできます。これにより、管理会社に依存しない独立した経済圏をメタバース内に構築できるでしょう。

メタバース×ブロックチェーン・プロジェクト

メタバース×ブロックチェーンの可能性が注目される中、以下のようなプロジェクトが続々と登場しています。

「The Sandbox(サンドボックス)」

2020年に発売された、イーサリアムのブロックチェーンを基盤とする仮想ゲームシステム。ユーザーは「SAND」と呼ばれるネイティブトークンなどを利用して、プラットフォーム上で土地を購入したり、キャラクターやアイテムを取引したりできます。オリジナルのアイテムを作成し、NFTを利用してマーケットプレイスで売買することも可能です。

「Metaani(メタアニ)」

世界最大級のクリプトアート展示会「クリプトアートフェス」の主催者であるメケゾー氏と、VRクリエイターのミソシタ氏が発足した国内発のプロジェクト。10月には1万体限定のアバター「Mettani GEN」が販売され、話題になりました。

イーサリアムのブロックチェーンを基盤とするNFTアートをアバターとして使用するため、同じデザインのアバターが存在せず、かつ唯一無二の価値を証明できます。

ユーザーとともに独自のメタバース「Metaani Land(メタアニランド)」を発展させ、アートや音楽のフェスティバルを開催することを目指しています。

現在は開発初期段階であるため規制面などの課題はあるものの、メタバース構想の実現を目指す動きは加速しています。ブロックチェーン技術は、メタバースの未知のポテンシャルを最大限に高めるための切り札となるかもしれません。Wealth Roadでは今後、メタバース関連の投資が活発化する可能性にも注目していきます。

※上記は参考情報であり、暗号資産や特定企業の株式の売買や投資を推奨するものではありません。

(提供:Wealth Road