三菱UFJ信託銀行が、不動産などを小口売買できるデジタル証券の普及に向け、ブロックチェーンを活用した独自のデジタル通貨を発行することがわかった。7日、日本経済新聞などが報じた。
デジタル証券は、不動産や社債などをトークン(デジタル権利証)として発行される。小規模な資産を証券化できることから、投資家も小口投資をできるようになることが特徴だ。現時点ではデジタル証券を利用した際、制度上の問題で証券の資金決済まで2日ほど時間を要する。そこで、取引の際にデジタル通貨を利用することで、即時決済も可能となるという。
今回明らかになったデジタル通貨の名称は「プログマ(Progmat)コイン」。ブロックチェーンを活用しているが、暗号資産(仮想通貨)に分類される通貨ではない。
2023年春の発行を目指し、1円=1プログマコインで交換される。円と連動した「ステーブルコイン」と同じ仕組みだ。金融庁は近く改正する資金決済法で、銀行の電子通貨の発行を認める方向で動いている。
現在は証券管振替機構(ほふり)、日本証券クリアリング機構(JSCC)が取引成立後に資金や証券の受け渡しを行っており、株や社債など、証券取引全体で年間数百億円のコストが掛かっている。プログマコインによって、即時決済が可能になることで、取引額の1%のコストを削減できるという。
三菱UFJ信託は、SBIなどが2023年に共同で立ち上げるデジタル証券取引所にも参画する。取引所には野村證券、大和証券、SMBC日興證券、SBI證券などが参加し、その決済にはプログマコインが利用されるという。
国内では、インターネットイニシアチブ(IIJ)傘下のディーカレットが事務局となり、国内大手金融機関などによって構成される「デジタル通貨フォーラム」において、円建てステーブルコイン「DCJPY(仮称)」を試験的に発行する計画を打ち出している。
日銀も今年4月から中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実証実験第2弾を始める予定で、プログマコインはこうしたデジタル通貨とも交換性を持つことになるようだ。
三菱UFJ信託は昨年から「プログマ(Progmat)」という名のプラットフォームを開発してきた。ブロックチェーンを利用した、独自のデジタル証券発行、管理プラットフォームだ。
セキュリティ(Security=有価証券)をブロックチェーン上で発行するセキュリティトークン(デジタル証券)の権利移転と資金決済を自動かつ一括で行うことが可能となっており、365日24時間フル活動可能で、小口投資家から海外投資家まで幅広く対応することができる。
前出の通り、今までは決済に時間が掛かる点が問題とされていた。それをプログマコインで一気に解消することが可能となる。スマートコントラクトやプログラマブルマネー(プログラム可能なお金)との連携により迅速な金融取引を可能にするという方向性も打ち出しており、暗号資産との取引も可能になる可能性が考えられる。(提供:月刊暗号資産)