この記事は2022年3月3日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「ユーロ圏消費者物価(22年2月) ―― コア指数も最も高い伸び率に」を一部編集し、転載したものです。

目次

  1. 1 ―― 結果の概要:コア指数でも統計データ公表以来の高い伸び率を記録
  2. 2 ―― 結果の詳細:幅広く物価上昇圧力が見られる

1 ―― 結果の概要:コア指数でも統計データ公表以来の高い伸び率を記録

ユーロ圏消費者物価
(画像=PIXTA)

3月2日、欧州委員会統計局(Eurostat)は2月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。

【総合指数】
・前年同月比は5.8%、市場予想*1(5.6%)を上回り、前月(5.1%)から加速(図表 - 1
・前月比は0.9%、予想(0.8%)を上回り、前月(0.3%)からは加速した

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数*2】
・前年同月比は2.7%、予想(2.6%)を上回り、前月(2.3%)からは加速した(図表 - 2
・前月比は0.5%、前月(▲0.9%)のマイナスからプラスに転じた

ユーロ圏消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

*1: Bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
*2: 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。


2 ―― 結果の詳細:幅広く物価上昇圧力が見られる

2022年2月のHICP上昇率(前年同月比)は全体で5.8%となり、前月の5.1%を上回り、4か月連続で最も高い伸び率を更新した。「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」も2.7%と前月(2.3%)から加速、こちらも統計データ公表以来の高い伸び率となった。以下で見るように、エネルギーの価格上昇が顕著だが、コア以外の飲食料(アルコール含む)、財、サービスでも幅広く物価上昇圧力が生じている。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分の「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」は12月2.9%→1月2.1%→2月3.0%と大幅に加速した。「サービス」(エネルギーを除く)も12月2.4%→1月2.3%→2月2.5%と伸び率を拡大した。なお、12月はドイツの付加価値税の影響が生じているが、それを除くと伸び率の加速傾向にある(図表 - 3)。

1月までのデータであるが、娯楽業が12月2.1%→1月2.8%(いずれも税率の影響除き)、外食・宿泊業が12月3.2%→1月3.7%と(同)なり、感染予防策としての行動制限緩和を受けた対面サービス産業が伸びているほか、家具が12月2.1%→1月2.8%(同)と伸び率を高めている。原材料高の消費者物価への転嫁が進んでいると見られる。

コア以外の部分では「エネルギー」が前年同月比で12月25.9%→1月28.8%→2月31.7%となりついに30%を超えた。2月は前月比で3.3%と1月(6.2%)ほどではないものの、単月での上昇率が高い状況が続いている。また、前年同期比寄与度は2.98%ポイント程度(1月は2.80%ポイント)でエネルギー価格の上昇が全体の伸び率の過半を占める状況が続いている(前掲図表 - 1・2)。

ユーロ圏消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

「飲食料(アルコール含む)」は、前年同月比で4.1%(1月3.5%)となった。飲食料のうち加工食品の伸び率は3.5%(1月3.0%)、未加工食品は6.1%(1月5.2%)となり、未加工食品の伸び率が急上昇している(図表 - 4)。

ユーロ圏消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

国別のHICP上昇率では、2月は前年同月比で公表されている19か国中オランダを除いたすべての国が1月から加速した(図表 - 5)。前月比では19か国中すべての国がプラスの伸び率となっており、多くの国でインフレ圧力が増している(図表 - 6)。


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高山 武士(たかやま たけし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員

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