この記事は2022年4月8日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「景気ウォッチャー調査(2022年3月)~まん延防止等重点措置の解除で現状、先行きともに改善も、原材料価格の高騰に懸念」を一部編集し、転載したものです。


景気ウォッチャー調査
(画像=PIXTA)

目次

  1. 1 ―― 現状判断DIは大きく反転、先行き判断DIも2か月連続で改善
  2. 2 ―― 景気の現状判断DI:飲食関連が大きく改善
    1. <まん延防止措置解除に関連した回答者の主なコメント>
    2. <原油や原材料価格の高騰、物価上昇に関連した回答者の主なコメント>
  3. 3 ―― 景気の先行き判断DI:2か月連続で改善
    1. <まん延防止等重点措置の解除やワクチン接種の進展に伴う先行き期待に関する主なコメント>
    2. <原材料高騰や値上げ、ウクライナ侵攻に関する主なコメント>

1 ―― 現状判断DIは大きく反転、先行き判断DIも2か月連続で改善

4月8日に内閣府が公表した2022年3月の景気ウォッチャー調査(調査期間:3月25日から月末)によると、3か月前との比較による景気の現状判断DI(季節調整値)は47.8と前月から10.1ポイント上昇した(3か月ぶりの改善)。また、2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は50.1と前月から5.7ポイント上昇した(2か月連続の改善、50を超えたのは3か月ぶり)。

景気ウォッチャー調査
(画像=ニッセイ基礎研究所)

地域別でみると、現状判断DI(季節調整値)は全国 12 地域全てで改善した。また、先行き判断DI(季節調整値)も、調査期間中に感染者数の再増加傾向がみられた沖縄以外の11地域で改善した。ただし、沖縄の先行き判断DI(55.6)は50を超えており、改善傾向は続いている。

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まん延防止等重点措置の解除が現状判断DI、先行き判断DIの改善に寄与した。ただし、現状判断DIは50を下回っており、悪化の度合いが緩和されたという段階といえるだろう。現在の景気の水準自体に対する判断を示す景気の現状水準判断DI(季節調整値)も40.7となり、前月から7.7ポイント上昇したものの、昨年12月の47.4を下回っている。また、原材料価格高騰やそれに伴う値上げ、ロシアによるウクライナ侵攻が景況感の下押し要因になっている点に留意が必要だ。

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2 ―― 景気の現状判断DI:飲食関連が大きく改善

現状判断DIは、まん延防止等重点措置解除が好感されて大きく上昇した。回答者構成比でみても、「改善」(「良くなっている」と「やや良くなっている」)と「変わらない」が増加し、「悪化」(「やや悪くなっている」と「悪くなっている」の合計)が3割未満まで減少した。

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現状判断DIの内訳について、家計動向関連は46.8(前月差13.1ポイント、3か月ぶりの改善)、企業動向関連は45.5(同2.4ポイント、4か月ぶりの改善)、雇用関連は59.5(同7.4ポイント、2か月連続の改善)と、全てで改善した。

また、家計動向関連の内訳では、飲食関連(46.9(前月差27.0ポイント))を筆頭に、サービス関連(47.5(前月差15.4ポイント))、小売関連(46.7(同11.1ポイント))で前月から大きく改善した。

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回答者のコメントからは、景況感が改善したと判断した回答者のコメントには、まん延防止等重点措置の解除により、人出が増加するなどして、需要が戻ってきているという内容が多く含まれる傾向にあった。他方、景況感が悪化していると判断した回答者のコメントには、原材料価格高騰やそれに伴う値上げへの懸念、ロシアによるウクライナ侵攻に関する内容が含まれる傾向がみられた(*1)。

<まん延防止措置解除に関連した回答者の主なコメント>

  • まん延防止等重点措置の解除に伴って、来客数が緩やかな回復基調にある。(北海道・観光型ホテル)

  • 気温が上昇していることに加え、まん延防止等重点措置が解除されたことで、来客数が多くなっている。ただし、過去の同時期に比べると、本格的な回復とまではいえない。(南関東・百貨店)

<原油や原材料価格の高騰、物価上昇に関連した回答者の主なコメント>

  • 新型コロナウイルスの影響による外出自粛に伴う販売不振に加え、原油高に伴う燃料価格高騰による買い控えがみられる。(南関東(東京都)・その他専門店)

  • 3月に入って受注量が減少傾向で厳しい状況である。値上げを実施したが、それ以上に原材料価格や運賃が高騰しており、再値上げが必要な状況である。(中国・食料品製造業)

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

*1: KH Coderによる対応分析を実施。


3 ―― 景気の先行き判断DI:2か月連続で改善

2~3か月先の景気の先行き判断DIは2か月連続で改善し、3か月ぶりに50を上回った。全体として、先行きの改善期待が高まっている。

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先行き判断DI(季節調整値)の内訳について、家計動向関連は50.9(前月差6.6ポイント)、企業動向関連は45.1(同2.2ポイント)、雇用関連は55.3(同7.2ポイント)であった。また、家計動向関連の内訳をみると、現状判断DIと同様に、飲食関連(前月差10.9ポイントの52.2)を筆頭に、サービス関連(同8.9ポイントの54.5)、小売関連(前月差5.5ポイントの49.8)が大きく上昇し、飲食やサービスは50を超えた。

景気ウォッチャー調査
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回答者のコメントでは、先行きへの期待を示す回答者のコメントには、まん延防止等重点措置の解除や、ワクチン接種の進展で感染拡大の影響が少しずつ薄れていくことによる先行きの経済回復への期待が言及される傾向が強い一方で、先行きへの懸念を示すコメントには原材料価格高騰やそれに伴う値上げへの懸念、ロシアによるウクライナ侵攻に関する内容が多く含まれる傾向がみられた。

<まん延防止等重点措置の解除やワクチン接種の進展に伴う先行き期待に関する主なコメント>

  • 3回目のワクチン接種率の上昇に伴って、景気がやや良くなることを期待している。(北海道・旅行代理店)

  • まん延防止等重点措置解除に伴い、ゴールデンウィーク期間中の多くの人出が期待できる。(四国・観光遊園地)

<原材料高騰や値上げ、ウクライナ侵攻に関する主なコメント>

  • 受注販売は好調だが、資材や原料等の原価高騰が発生している。高騰幅がみえない部分もあり、全てを売価に反映できない。売上は増加するが、利益は減少となる見込みである。(九州・輸送業)

  • ロシアのウクライナ侵攻により、エネルギー問題が注目されているが、石油製品の更なる値上がりが予想される。仮に原材料の価格上昇分を製品価格に転嫁すれば、受注量の減少につながる。(近畿・プラスチック製品製造業)

  • 地価の高止まり、建築価格の高騰など、かなり厳しい状況が続いている。ウッドショックが引き続き影響していることや、ロシアに対する経済制裁なども影響してくると思うので、今後の景気も悪くなる。(南関東・住宅販売会社)

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山下 大輔(やました だいすけ)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員

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