この記事は2022年3月2日に「株式新聞」で公開された「永濱利廣のエコノミックウォッチャー(23)=景気予測調査から読み解く22年度業績見通し」を一部編集し、転載したものです。


2022年3月11日(金)に公表された2022年1月~3月期法人企業景気予測調査は、2022年2月下旬にかけて資本金1000万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、来期の業種別企業業績計画を予想するための先行指標として注目される。コロナ禍やウクライナ情勢が悪化する中でも好調さが見込まれる業種を予想してみたい。

株式新聞20220404
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輸入原材料高騰で増収・減益傾向

宿泊や生活関連は経済正常化期待

調査対象企業の売上高と経常利益計画の年度見通しの推移を見ると、全産業の売上高は2022年度が2期連続の増収計画となっている。一方、経常利益は2021年度が22.1%の増益計画となっているが、輸入原材料の高騰などにより、2022年度は0.3%の減益に転じる方向だ。このことから、4月下旬からの決算発表では、多くの業種で来年度減益計画が出てくることが予想される。

業種別では2022年度は「宿泊、飲食サービス」「石油・石炭」「生活関連サービス」「生産用機械」「電気・ガス・水道」が2ケタ増収の計画だ。生活関連サービスの詳細は、クリーニング業や理・美容業、銭湯、エステティック業、旅行業、冠婚葬祭業などわれわれの生活に密着したもの。宿泊、飲食サービスとともに、新型コロナウイルスに対する経口薬の普及や、GoToキャンペーン再開などが追い風として期待される。

石油・石炭や電気・ガス・水道については、原油価格の水準が引き上がったことに伴う価格転嫁の影響が大きいことが推察される。また、やはり経済活動の正常化により、各種製品の需要回復も見込んでいる可能性がある。生産用機械は、半導体などの部品不足の深刻化により、製造装置などのさらなる需要拡大が視野に入る。

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(画像=株式新聞)

自動車、繊維など大幅増益を予想

続いて、経常利益計画から2022年度の業績拡大が期待される業種を見通してみよう。4割以上の業種で減益計画となっており、これは原油をはじめとする国際商品市況の高騰などによるコスト増が主因だろう。

こうした中、増益率が高い業種は宿泊、飲食サービスと生活関連サービスのほか、「娯楽」「運輸・郵便」「自動車」「繊維」であり、いずれも急拡大を見込んでいる。

特に、娯楽と宿泊、飲食サービス、生活関連サービス、運輸・郵便については、新型コロナの収束やGoTo再開により、空運や鉄道旅客数が正常化に向かう動きに加えて、テレワークやEC(Eコマース=電子商取引)化の進展に伴う宅配需要の増加も寄与してきそうだ。

また、2021年度に大幅増益見込みの自動車や繊維も、2割以上の増益計画となっている。自動車は半導体不足の段階的解消が想定されていることに加え、繊維はその川上の化学繊維や炭素繊維のさらなる需要拡大も予想されているとみられる。

このほか、非製造業ではアフターコロナの「小売」や「医療、教育」、製造業では「鉄鋼」や「金属製品」「その他輸送機械」などが2022年度に2ケタ増益を計画していることにも注目したい。

永濱利廣
第一生命経済研究所首席エコノミスト。1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒業、第一生命保険入社。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。2016年より現職。専門は経済統計、マクロ経済分析。