本記事は、松本剛徹氏、小島幹登氏の著書『99%失敗しない 新規事業の創り方』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

ビジネスアイデア発想法 「モノマネ発想法」

アイデア
(画像=yumeyume/stock.adobe.com)

商品・サービスをそのまままねるのではない

ビジネスアイデア発想法は「モノマネ発想法」です。

ビジネス書でよく「TTP=徹底的にパクる」という言葉が紹介されるように、うまくいっている企業や商品をモノマネすることは、ビジネスの王道でもあります。

モノマネの発想で新たなビジネスアイデアが生まれないか、試してみましょう。

ただし最初に理解していただきたいのは、商品・サービスをそのまままねるのではないという点です。それはただの模倣であり知的財産権の侵害です。

ではどうするかというと、「売れている商品・サービスの売り方やコンセプトをまねする」のです。

ポイントは、「売れている商品」のところです。当たり前ですが、売れていない商品をまねしても仕方がありません。

売れている商品・サービスを見つけたら、そのコンセプトや売り方をよく観察します。もう少し詳しくいえば、商品の切り口、顧客ターゲット、販売・提供方法、広告の見せ方、商品名の付け方、デザイン、インターネットの活用方法などに着目し、それをよく調べてまねするということです。

売れている商品・サービスの不平不満を改良

また、売れている商品・サービスの不平不満を改良してまねるという方法もありでしょう。いくら売れている商品であっても、顧客の100%を満足させることはできません。どの商品にも必ず何かしらの不平不満が存在します。

そのような商品を、模倣にならないようにまねしつつ、不平不満を改良するかたちで新商品を作ることができれば、元の商品より売れる可能性があります。

すでに売れている商品のバージョンアップ版といったイメージです。

その時に気をつけたいのは、そっくりそのまままねしない、ということです。

ロゴやデザイン、商品・サービス名など、商標に関わる部分は絶対にまねしてはいけません。その点はよく調べる必要があるでしょう。

また、価格もまねしてはいけません。同じ価格でモノマネ商品を出しても、顧客にとっては新鮮味がなく、ただの後追い商品に見えてしまうからです。

元の商品の不平不満を解消しつつ、価格を下げて売ることがポイントです。そんな商品を実現できれば、顧客にとっては買わない理由がなくなります。

モノマネ発想法で上場を果たした事例もある

モノマネ発想法を徹底的に実践し、株式上場まで果たした珍しい事例があります。パーソナルトレーニングサービスの「24/7ワークアウト」を運営する株式会社トゥエンティーフォーセブンです。

パーソナルトレーニングの分野でいえば「ライザップ」がすでに圧倒的トップとして存在しました。そのライザップを、24/7ワークアウトはかなりの部分でまねしています。

例えば、両サービスの顧客ターゲットは全く同じです。「痩せたい」あるいは「筋肉をつけたい」といった目的を持つユーザーに対してサービスを提供しています。

また、パーソナルトレーナーが1人ひとりの顧客にトレーニングプランを作成して、細かく指導してくれる点も同じです。

広告やウェブサイトの見せ方(キャッチコピーや、ビフォーアフターの写真を使うなど)も非常によく似せています。

ただし、ある部分で24/7ワークアウトは、ライザップと大きく異なる特徴を打ち出しています。

それは価格です。ライザップよりも大幅に安く設定しているのです。

ライザップは「結果にコミットする」のキャッチフレーズでも話題になったように、丁寧なパーソナルトレーニングを提供し、成果を期待できるサービスといえます。

しかし難点は料金が高いこと。この不平不満ポイントに、24/7ワークアウトは狙いを定めたわけです。

低価格を追求したことで、ライザップとの違いがいろいろなところで生じています。例えば店舗の立地は、駅近にあるライザップと比べてやや不便な場所にあります。

また、ライザップの店舗は高級感がありますが、24/7ワークアウトの店舗は高級感を売りにはしていません。その他、ライザップと比較して細かい点で、サービスの質を下げているといえます。

しかし、それらのデメリットを踏まえても、料金が安い方がいいという顧客もたくさんいて、そんな人たちに24/7ワークアウトは支持されています。

また、ライザップの営業時間が夜23時までであるのに対して、24/7ワークアウトは24時まで。仕事が遅くに終わる人にとっては、ありがたいサービスといえます。

このように、圧倒的トップ企業をベンチマークして、良いところは徹底的にまねしつつ、ところどころでバージョンアップしたサービスを提供することで、24/7ワークアウトは急速に成長しました。その結果、株式上場まで果たしています。

さらにこの企業の面白いところは、他のジャンルでもライザップを追いかけているところです。ライザップが「ライザップイングリッシュ」を始めれば、トゥエンティーフォーセブンも「24/7イングリッシュ」を始めるという具合です。

この潔い二番煎じ戦略は、他の企業経営者も参考にすべきだと思います。

ビジネスアイデアは量産できる

24/7ワークアウトの例に倣って、儲かっている会社や売れている商品を見つけたら、その商品・サービス内容やコンセプト、販売方法などを調べて、まねできないか試してみてください。

先行企業はたくさんのお金や手間をかけて、儲け方を確立してくれています。それをまねすればいいだけなので、ビジネスの立ち上げはそう難しくはありません。

また、「モノマネ発想法」に「逆張り発想法」や「掛け算発想法」を組み合わせれば、アイデアは無限に量産できます。

例えば、パーソナルトレーニングジムが流行っているとわかったら、別のターゲットと掛け算をしてみます。

ターゲットを富裕層に変えて、ラグジュアリーな施設でトレーニングするジムはどうか。あるいは逆張りで、低所得者層向けに思いきり低価格なジムは作れないか?

ターゲットを独身男性に絞ってみるとどうだろうか。若い女性トレーナーだけを在籍させれば、男性会員が増えるかもしれない(そのようなコンセプトのジムは実際にあり、かなり繁盛しています)。

または高齢者や、肥満で悩む小学生をターゲットにしてはどうだろう……などなどいろいろと考えられます。

さらにトレーニングだけでなく、外国語、ゴルフ、テニス、料理など他の分野で、パーソナルトレーニングを提供できないかと考えてみるわけです。

大切なことは、アイデア発想のための時間をきちんと取って、集中してやること。

アイデアをたくさん出せば出すほど、キラリと光るビジネスの種を見つけやすくなります。定期的に時間を設けて、アイデア発想法を実践することをおすすめします。

99%失敗しない 新規事業の創り方
松本剛徹(まつもと・たかのり)
株式会社リアルプロモーション代表取締役。1985年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒で富士通株式会社に入社し、その後に株式会社DeNAに転職してモバイルマーケティングに従事。スマホ集客やマーケティングを専門にする会社として、2011年に株式会社リアルネットを創業。2014年には化粧品通販事業を展開して、事業を拡大していき年商10億円、利益1億円にまで成長させ、20代経営者のベストベンチャー30に選出される。2019年10月に大手企業に会社売却。全10事業を多角的に展開し、経営する会社の年商規模は30億円超。事業売却、事業譲渡や会社売却も経験してきた。著書に『ゼロからはじめるスマートフォン集客術』(興陽館)、『ゼロから年商10億円企業を創る』(ぱる出版)がある。
小島幹登(こじま・みきと)
株式会社リアルプロモーション取締役/株式会社イーメディック代表取締役。1975年生まれ。下記の事業をはじめとした30社以上の複数事業のオーナー経営者であり、連続起業家。化粧品通販(年商10~20億円を3社、内2社は2019年、2020年に会社売却)、健康食品通販、医薬品通販、美容クリニック(年商8億円で、2019年に大手病院グループに売却)、メディア事業(2015年に会社売却)、歯科クリニック(事業譲渡)、泌尿器科クリニック(全国6医院まで拡大し事業譲渡)、瞬読事業(速読教室。書籍は3冊で18万部)、株式投資とFXの投資家向け情報提供サービス(のべ会員約3,000名)、不登校支援スクール、室内ゴルフレッスン事業、結婚相談所、ストレッチ専門店、メンズ美容専門店、医療人材専門の人材紹介業、ビジネスセミナーのプロデュースなど、多数の事業を展開。共著書に『1か月で3億円稼ぐジョイント思考』(あさ出版)がある。

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