本記事は、松本剛徹氏、小島幹登氏の著書『99%失敗しない 新規事業の創り方』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
儲かるビジネスモデルとは?
誰に、何を、どう売るか
ビジネスチャンスを発掘し、ビジネスアイデアを発想して、ビジネスコンセプトを設計したら、次はいよいよビジネスモデルの構築に着手していきます。
ビジネスモデルとは、ひと言で言うと「儲かる仕組み」です。
では儲かる仕組みとは具体的に何を考えればいいのか。それは、「誰に、何を、どう売るか」を明確に設定することです。
「誰に」というのはターゲットのこと。商品・サービスを一番求めている顧客はどんな人なのか、明確にしましょう。
「何を」は商品・サービスのことで、「どう売るか」は販売の仕方です。
例えばアトピーに悩んでいる方々をターゲットとした場合、医薬品やサプリを売る、治療サービスを提供する、体質改善のノウハウを学んでもらうなど、いろいろな商品・サービスの提供方法が考えられるわけです。
また、見込み客を集客する方法としては、ネット広告か、あるいはオフラインで雑誌や新聞広告などを行うのか、いろいろなアプローチがあります。
商品・サービスの価格設定をいくらにするのかも重要な要素です。高額な商品を1回だけ買ってもらう方法もあれば、サブスクリプション型の月額課金制で提供する方法もあります。
このように、「誰に、何を、どう売るのか」があなたのビジネスモデルの根幹になり、ひと言で言うと儲かる仕組みになるということです。じっくりと検討していきましょう。
代表的なビジネスモデル2種
フロントエンド・バックエンドのビジネスモデル
ビジネスモデル設計の代表例を2つ紹介します。1つ目は「フロントエンド・バックエンドモデル」です。
フロントエンド商品で集客して、バックエンド商品の販売につなげて収益を獲得するというビジネスモデルです。
フロントエンドは見込み客を呼び寄せるための商品なので、そこで儲けを得る必要はありません。赤字覚悟で、あるいはマーケティング費用と割り切って低価格で販売します。
そしてフロントエンド商品を買ってくれた顧客に、高収益のバックエンド商品を販売します。逆に言えば、バックエンド商品が売れなければ利益が出ないということです。
フロントエンド・バックエンド設計はあらゆる業種で使われているビジネスモデルです。
例えばスーパーでは、特売の卵などがフロントエンドの役割を果たします。
特売チラシに「本日限り卵1パック98円!」などと記載してフロント商品を打ち出すと、多くの人が卵を買い求めに来ます。
そこで卵だけを買って帰る人もいるかもしれませんが、大半の人はついでに他の商品も買っていきます。
その「他の商品」がバックエンドです。肉製品など粗利の高い商品を買ってもらえれば、卵で赤字になったとしても全体ではきちんと儲けが出ます。
通販でもよく使われますね。フロントエンドとして格安なお試し商品や、無料のサンプル商品を提供して、見込み客のリストを獲得します。
その後、電話やメールによるセールスでバックエンド商品の定期購入につなげて収益を得るというかたちです。
ファーストフードでは、例えば100円コーヒーや、一時期マクドナルドが販売していた100円マックなどがフロントエンド商品です。そのような低価格商品で客引きをして、粗利の高いハンバーガーを買ってもらう設計になっています。
居酒屋なら、「夕方17時から19時まではハッピーアワー」などと設定して生ビールを格安で提供するのがフロントエンド。もちろん入店した顧客はドリンクだけでなく料理も頼むので、結果として利益を出せる設計になっています。
このように、フロントエンド・バックエンド設計はあらゆるジャンルのビジネスに応用できます。
ポイントは、自分の売りたいものを最初に売らないということです。
自分の売りたいものを前面に出してビジネスモデルを設計した場合、見込み客を集めることすらできず、何も売れなかったということにもなりかねません。
まずは撒き餌を撒いて魚をたくさん集めておいて、そこに釣り糸を垂らして本命の顧客を釣り上げる。収益をきちんと上げるにはそういった手順が大事です。
新商品・サービス考えて新規事業を創る際には、このフロントエンド・バックエンド設計で収益を最大化する仕組みを考えましょう。
フリーミアムのビジネスモデル
フリーミアムとは、基本的なサービスを無料で提供する一方で、特別な機能やカスタマイズされた付加価値サービスを有償で提供するビジネスモデルのこと。
具体的には次のように3つの形態があります。
(1)何かの商品やサービスを無料で提供して、他の商品の購入を促進させるモデル (2)基本的に商品・サービスを無料にして、プロ版などのアップグレードで課金するモデル (3)利用する顧客から代金をもらうのではなく、企業や第三者がコストを負担するモデル
(1)は、有料のソフトウェアなどを「1週間無料お試し」といったかたちで、機能を限定せずに無料で提供し、利便性や必要性を体感してもらうというモデルです。
無料期間が終了したら制限がかかって使えなくなりますが、その商品に魅力を感じたユーザーは購入して使い続けてくれます。
また、無料でお役立ち資料を提供して見込み客を集め、有料サービスの購入を促すといった方法もこのモデルといえます。
(2)はゲームアプリなどでよく使われています。ゲーム自体は基本無料で遊べるものの、武器を買ってキャラを強くしたいとか、次のステージに行きたいといったユーザーには課金を求めるというかたちです。
(3)はグーグルの各種サービスのように、ユーザーには無料でサービスを提供し、スポンサー企業から広告費を徴収することで成り立つビジネスモデルが当てはまります。
フリーミアムのモデルでは課金率や購入率がビジネス成功の鍵を握っています。
例えばスマホアプリ・ゲームなどを無料で提供し、一部の顧客が有料課金するといったビジネスモデルの場合、一般的には課金率5%であれば収益が出るとされます。
アプリは数万以上のダウンロードがあり母集団が大きいため、課金率が低くても収益を確保できるからです。
一方、資料提供やセミナーなどを無料で実施して、集まった見込み客を有料の顧客に転換するといったビジネスの場合、購入率は最低10%、できれば20%はクリアしたいところです。
このようなビジネスはアプリのように母集団が多いわけではないからです。ビジネスを成立させるためには購入率20%が目標数値になるとお考えください。
また、購入率以外にも、無料で提供する期間をどの程度にするのか、どこまで無料でサービスするのかといった、無料部分と有料部分の見極めも重要なポイントになります。
商品・サービスの魅力を無料部分だけで十分に知ってもらい、「さらにお金を払えば自分にとってもっと魅力的なものが手に入る」と感じさせられるかどうかが勝負です。
無料部分で見込み客の心をきちんと掴むことができれば、フリーミアムモデルは成功するはずです。
本業とのシナジーを生む新規事業の考え方
本業の強みを新規事業でどう生かすか
新規事業を創って起業するのではなく、すでに本業がある企業が2本目の柱として新規事業を立ち上げる場合には、本業とのシナジーを考えたいところです。
安定的に運営できている本業には、何らかの強みがあるはず。まずはその強みを生かせるかたちの新規事業を検討しましょう。
例えば筆者はもともとスマートフォンによる集客・マーケティングを支援する会社を設立して独立しました。
スマホマーケティング事業では、スマホ用のページを制作したり、スマホマーケティングの方法をコンサルティングしたり、広告の運用を代行したりといったサービスを行っていました。
それが軌道に乗った後、新規事業として始めたのが化粧品や健康食品の通信販売です。
スマホマーケティングが得意という本業の強みを生かして、顧客の商品販売をお手伝いするだけでなく、自分たちで商品を作って販売しようと考えたわけです。
本業とのシナジーを起点に考えた新規事業のわかりやすい例といえます。
そして、この化粧品・健康食品の販売が軌道に乗ると、スマホマーケティング事業でも顧客が増えるという好影響が発生しました。
通信販売の同業他社が、「あの最近勢いのある通販会社は、スマホ集客のコンサルもやっている」と知り、自社のビジネスもサポートしてもらいたいと依頼してきたのです。
このように異なる事業のそれぞれがいい影響を及ぼし合い成長するかたちが、まさにシナジー効果のいい例です。
大企業でも同じようなビジネス展開はよく行われています。
例えば富士フイルムという会社はもともと写真用フィルムを作っていました。
写真用フィルムの原料はコラーゲンであり、製造においてはナノテクノロジーが必要となります。そんな写真用フィルムの技術やノウハウを生かして、富士フイルムが立ち上げた事業が、化粧品「アスタリフト」です。
今では化粧品事業も収益の柱の1つとなっています。
このように、コア技術を他のジャンルに応用する方法も、本業とのシナジーある新規事業の立ち上げ方といえます。
技術、ノウハウ、仕組み、知名度など、自社の強みをきちんと把握することが、シナジーのある新規事業創出の出発点となります。
本業での顧客との関係も、シナジーの源泉となります。
基本的に新規事業を始める時は、見込み客を獲得し、その見込み客を顧客に換えるというステップが必要になります。当然ながら見込み客を一から獲得するにはコストがかかります。
しかし本業ですでに顧客を獲得している場合は、このステップを飛ばすことができます。
その顧客が求める別の商品を用意して、買ってもらえばいいからです。
現在取引している顧客のことをよく観察し、不平不満や求めていることを理解し、そこを起点に新しい商品・サービスを考えてみるということです。これにより顧客獲得コストをかけることなく、スピーディーに利益が出る新規事業を創出できる可能性があります。
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