この記事は2022年8月4日に「月刊暗号資産」で公開された「JCBA・JVCEAが共同で暗号資産に関わる「税制改正要望書」を金融庁に提出」を一部編集し、転載したものです。
日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)と日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は3日、共同で暗号資産(仮想通貨)に係る「2023年度税制改正要望書」を金融庁に提出したことを発表した。
本要望書はJCBAの税制検討部会・斎藤岳部会長が中心となり作成されたという。
この要望書ではWeb3.0政策推進に向け、20%の申告分離課税と3年間の損失繰越控除、法人期末時価評価課税の見直し、相続した暗号資産譲渡による所得を所得費加算の特例対象とするなど、資産税の整備に関する内容が盛り込まれている。要望骨子としては以下のように挙げている
分離課税
暗号資産取引にかかる利益への課税方法は、20%の申告分離課税とし、損失については翌年以降3年間、暗号資産に係る所得金額から繰越控除ができることを要望する。暗号資産デリバティブ取引についても同様とする。法人税
期末時価評価課税の対象を市場における短期的な価格の変動又は市場間の価格差を利用して利益を得る目的(短期売買目的)で保有している市場暗号資産に限定し、それ以外のものを対象外とすることを要望する。少なくとも喫緊の課題への対応として、まず自社発行のトークンについて対象から除くことは必須である。資産税
相続により取得した暗号資産の譲渡時の譲渡原価の計算について、取得費加算の特例の対象とすることや、相続財産評価について、上場有価証券と同様、相続日の最終価格の他、相続日の属する月の過去3ヶ月の平均時価のうち、最も低い額を時価とすることを要望する。
両者は要望書を提出した背景として、日本での暗号資産税制の課題を挙げている。
要望書では、GMOインターネットがWeb3.0に特化したベンチャーキャピタルの新会社を設立、そして実業家の前澤友作氏がWeb3.0特化型ファンドを設立するなど、Web3.0領域への期待が高まっていることを指摘。さらに、政府が6月7日に閣議決定した「骨太の方針」において、Web3.0の推進に向けた環境整備の検討を進めると明記し、先月15日には経済産業省大臣官房に「WEB3政策推進室」が設置されたことについて触れた。
一方で、日本はWeb3.0を推進していくための税制環境が他国と比べ劣後していることから、人材の海外流出が止まらないと指摘する。
現在、世界的なWeb3.0への注目から暗号資産の時価総額と取引額は大幅に増加している。他の金融商品と同様、有用な決済手段、資産クラスとしての利用が国内外で確立されつつある。
また、NFT(非代替性トークン)における取引の決済、メタバースでの取引決済やDAO(分散型自律組織)におけるメンバー間の取引決済など、バーチャル空間では暗号資産が決済手段の主流となっていると説明し、そのような観点から申告分離課税の導入、法人税の整備、資産税の整備が必要不可欠だと主張した。
なお、JCBAおよびJVCEAは暗号資産の税務申告と税制改正要望に関する投資家へのアンケートを実施した。
アンケートによると、暗号資産保持者の中で税率の低い国への移住を50%が希望している。分離課税が認められた場合、暗号資産の投資金額を増やすと答えた人が80%に上った。また、その場合には確定申告を行う投資家は93%に上っている。(提供:月刊暗号資産)