この記事は2022年9月1日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「宿泊旅行統計調査2022年7月~日本人延べ宿泊者数、客室稼働率の回復は足踏み」を一部編集し、転載したものです。

宿泊旅行統計
(画像=tokyo studio/stock.adobe.com)

目次

  1. 7月は延べ宿泊者数、客室稼働率ともに回復が足踏み
  2. 第7波の宿泊旅行への影響は限定的だが、回復はまだ遠い

7月は延べ宿泊者数、客室稼働率ともに回復が足踏み

観光庁が8月31日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2022年7月の延べ宿泊者数は3,885万人泊となった。新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年同月比でみると、▲25.0%(6月:同▲24.7%)とマイナス幅がわずかに拡大した。

2022年7月の日本人延べ宿泊者数は3,807万人泊となり、2019年比同月比は▲7.1%(6月:同▲6.6%)とこちらもマイナス幅がわずかに拡大した。外国人延べ宿泊者数は78万人泊となり、2019年同月比は▲92.7%(6月:同▲93.4%)と低迷を続けている。

日本人延べ宿泊者数の2019年同月比は、3月21日にまん延防止等重点措置が全面解除されたことを受けて、マイナス幅が縮小していたが、5か月ぶりにマイナス幅が拡大に転じた。外国人延べ宿泊者数の2019年同月比は、2020年4月以降、▲90%台で推移を続けている。

宿泊旅行統計調査
(画像=ニッセイ基礎研究所)

2022年7月の客室稼働率は全体で46.7%となった。2019年同月差では▲16.6%(6月:同▲15.3%)と5か月ぶりにマイナス幅が拡大した。

宿泊施設タイプ別客室稼働率をみると、旅館は33.7%、2019年同月差:▲4.8%(6月:同▲4.3%)、リゾートホテルは46.9%、2019年同月差:▲12.7%(6月:同▲14.2%)、ビジネスホテルは55.5%、2019年同月差:▲20.6%(6月:同▲18.0%)、シティホテルは50.6%、2019年同月差:▲30.0%(6月:同▲30.6%)、簡易宿所は23.6%、2019年同月差:▲13.4%(6月:同▲10.6%)であった。2019年同月差ではリゾートホテルとシティホテルでマイナス幅が縮小しているが、それ以外のタイプの宿泊施設ではマイナス幅は拡大している。

第7波の宿泊旅行への影響は限定的だが、回復はまだ遠い

2022年3月21日にまん延防止等重点措置が全面解除されたことを受けて、日本人延べ宿泊者数と客室稼働率は回復していたが、7月はその回復が足踏みした。

新型コロナウイルス感染症の第7波では感染が爆発的に拡大したが、政府は現段階では行動制限を実施しない方針であり、社会経済活動をできる限り維持しながら、感染対策に取り組む姿勢を示している。そのため第7波が宿泊旅行に与えるダメージは限定的となっている。

宿泊旅行統計調査
(画像=ニッセイ基礎研究所)

観光庁は8月25日に県民割支援の実施期間を令和4年9月30日宿泊分(10月1日チェックアウト分)まで延長することを発表した。一方で、全国旅行支援については引き続き感染状況の改善が確認できれば実施するとしており、その時期は未定である。新型コロナウイルス新規陽性者数は依然として高い水準となっており、県民割の全国旅行支援への切り替え時期は見通しが立たない。日本人延べ宿泊者数の2019年比がプラスに転じるにはまだ時間がかかるだろう。

外国人旅行者については、受け入れを6月10日に開始したものの、7月は7,903人と極めて少なく、外国人延べ宿泊者数も伸び悩んでいる。外国人の訪日を妨げる主因は日本の厳しい水際対策だろう。政府は水際対策における変更点を新たに3点発表し、9月7日から実施する。1点目は、有効なワクチン接種証明書があれば、出国前72時間以内の陰性証明書の提示を不要すること。2点目は、入国者数の上限を2万人から5万人に引き上げること。3点目は、すべての国から添乗員なしのパッケージツアーでの外国人観光客の受け入れを開始することである。しかしこの変更点を踏まえても、日本の水際対策は諸外国と比べて厳しいため、外国人宿泊者数の回復は楽観視できない。

宿泊者数、客室稼働率がコロナ前の水準にまで回復するにはまだ時間がかかりそうだ。国内の旅行者を支援する全旅行支援はいまだ実施の見込みが立たず、外国人観光客の訪日条件は依然諸外国より厳しい。徹底した感染対策を前提に、国内旅行需要の喚起と外国人旅行者の訪日条件の緩和を進めていくことが重要だ。


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安田拓斗(やすだ たくと)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

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