この記事は2022年10月10日に「CAR and DRIVER」で公開された「独創のコンセプトと造形。シトロエンC5Xはちょっぴりクラウン・クロスオーバーに似ていると評判。その快適性をズバリ診断」を一部編集し、転載したものです。
シトロエンC5Xシャインパック 価格:8SAT 530万円 試乗記
セダン/ワゴン/SUVのクロスオーバー、果たしてその実態は!?
シトロエンC5Xが発売された。C5Xはメーカー自身が「セダン/ステーションワゴン/SUVの強みを合わせた独創的なフラッグシップ」と語る個性派。欧州では2021年4月に初公開された。
全長×全幅×全高4,805×1,865×1,490mmとフランス車としては大柄なボディは、パッと見ではいわゆるシューティングブレークのような印象。異形のステーションワゴンとも受け取れそうだ。が、後方で落ち込んだルーフラインと傾斜の強いリアウインドウはクーペに通じる流麗さを表現。
かと思えば、19シューズとインチ、それを余裕でクリアするブラックアウトされたホイールアーチ処理による足元の逞しさからは、SUVの香りも漂ってくる。ちょっと不思議で、ひと言では表現し難い造形は、シトロエンの面目躍如と受け取る人もいるだろう。
フロントマスクも個性的である。前身が歯車メーカーであったことに由来する「ダブルシェブロン」のエンブレムをフードに食い込ませるカタチで中央に置き、そこから左右に伸ばした薄いグリルをランニングライトにつなげながら、あえてヘッドライトは目立たないように配置している。紛れもないシトロエン顔ながら新しさも主張している。
インテリアも凝っている。モダンで合理的な基本デザインをベースに、シートバックやドアトリムの刺繍ラインにやはり「ダブルシェブロン」のモチーフを展開。遊び心が感じられる。
一時期のシトロエン車といえば、奇抜と表現したくなるほどに独創性に富んだインテリアが特徴だったが、C5Xでは各部の操作系に戸惑うようなロジックは見当たらない。
凝った足回りが、ふんわりと優しい。乗り心地は絶品!
8速ステップATとの組み合わせで日本に導入されるパワーユニットは、最高180psの出力と最大250Nmのトルクを発生するターボ付きの1.6リッターガソリン4気筒エンジンと、同エンジンを使ったPHV(モーターの最高出力は81kW、駆動用バッテリーの容量は12.4kWh)の2タイプ。今回は前者の純エンジン仕様に試乗した。
約1.5トンという車重に対して動力性能は、さしあたり不足のないもの。ただし、日常シーンの動きはややターボブースト頼りという印象がある。ブーストが期待できない発進直後や、エンジン極低回転域での身軽さはいまひとつ。同時に、アイドリングストップ状態からのエンジン再始動や微低速シーンでの動きの滑らかさには、あまり高い得点は与えられない。
このあたりは、モーターサポートが期待できるPHV仕様に分がありそうだ。
足回りには「ダンパー・イン・ダンパー」ともいうべきちょっと特殊な構造を採用している。フットワークのテイストは、期待どおりだった。フラット感の高い、ふんわりと優しい乗り味が心地いい。往年のハイドロニューマチック・サスペンション採用モデルとまではいかないまでも、これはC5Xならではといえる大いに魅力的なポイントだと実感した。
シトロエンC5X 主要諸元
グレード シャイン パック
価格=8SAT 530万円
全長×全幅×全高=4,805×1,865×1,490mm
ホイールベース=2,785mm
トレッド=フロント:1,600/リア:1,605mm
最低地上高=165mm
車重=1,520kg
エンジン=1,598cc直4DOHC16Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=133kW(180ps)/5,500rpm
最大トルク=250Nm(25.5kgm)/1,650rpm
WLTCモード燃費=未公表(燃料タンク容量52リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トーションビーム
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=205/55R19+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.6m
(提供:CAR and DRIVER)