ほとんどの富裕層はお金に関する悩みを抱えているものだが、一般論として、それをあまり表に出す方は少ない。あまりにオープンに話してしまうと、彼らを食い物にしようする“搾取者”を呼び寄せてしまうためだ。そのため、富裕層が実際にどのようなことに悩んでいて、どのような解決策を取るかは、意外と知られていないように思う。
そこで本連載では、筆者の元に届いた富裕層の資産運用相談の実例を紹介していきたい。この連載を通じて「富裕層がどのような悩みを抱えており、どのような解決法があるのか」の参考になれば幸いだ。
今回は、富裕層向けに資産運用コンサルティングを行なっているペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社 代表の山口聰氏に、富裕層の資産運用相談の実例を聞いた。なお、守秘義務の関係から、諸条件は多少修正していること、脚色を加えていることをご容赦いただきたい。
10億円を運用したい上場企業オーナー経営者「国際分散投資のポートフォリオを組んで欲しい」
それではまずは、今回の相談者の概要を見ていこう。この相談者をEさんと呼ぶことにする。
<Eさんのプロフィール>
・50代男性
・上場企業オーナーであり、現役経営者でもある
・5年前に上場し、会社の成長と共に、少しずつ自社株を売却(現金化)してきた
・現在運用に回せる金額は10億円〜15億円ほど
<相談事項>
・1億円で税引き前4%利回りの日本株のポートフォリオを作りたい
・(上記の1億円とは別に)10億円で国際分散投資のポートフォリオを作りたい
Eさんはいわゆる「上場企業オーナー」で、富裕層ピラミッドのなかでも最上位に位置する属性だ。第2回「資産30億円の上場企業オーナー経営者が資産収入2,000万円を望む」にて「時価総額がそれほど大きくはない上場企業のオーナー経営者の場合は、周りが思っているほど、家計に余裕があるわけではない」と説明した。ただ、Eさんは順調に(自社の)時価総額を伸ばし、それに伴い自社株を少しずつ売却することで、ある程度まとまった現金を手にしている。