担当のプライベートバンカーは仕組預金の提案ばかりだった
しかし本来、上場企業オーナー個人の資産運用は、経営している上場企業の主幹事のプラベートバンキング部門が第一の窓口となるはずだ。有価証券によるポートフォリオ運用であれば“なおさら”である。なぜこのような相談が届いたのだろうか。
山口氏は「担当のプライベートバンカーが銀行系出身だったのでしょうか。その担当者は株式や債券といった有価証券の運用にはあまり詳しくなく、仕組預金(しくみよきん)の提案ばかりだったようです。仕組預金自体は悪ではありませんが、ポートフォリオ運用がしたかったEさんは、主幹事以外の金融機関も回るようになり、結果的に私がご縁をいただくことになりました」と話す。
仕組預金とは、デリバティブ取引を組み込んだ預金商品の総称だ。特にプライベートバンクでは、預金開始時に一定の条件を定めるドル/円の仕組預金がよく提案されている。「預金開始時のドル円レート」と「満期を迎えた時点でのドル円レート」の差によっては元本割れの可能性があるため、通常より高い利息を得られるわけだ。なお、仕組預金に関する詳しい説明は一般社団法人全国銀行協会のWebサイト(一般社団法人全国銀行協会「仕組預金」 )を参照していただきたい。
6つのセクターに分散し、20銘柄ほどで日本株のポートフォリオを作る
Eさんの要望に対して、山口氏はどのような提案を行ったのか。まずは「1億円で税引き前4%利回りの日本株のポートフォリオを作りたい」という1つ目の要望から見ていこう。
「Eさんは『インカムゲインで税引き前4%利回りが欲しい』とのことでした。そのため、まずは日本の個別銘柄を利回りで大まかにスクリーニングし、その後は配当利回り、業種配分、将来性、安定性などを総合的に勘案しながら、組入銘柄を決めていきました」と山口氏は解説する。
具体的には、6つのセクターに分散し、20銘柄ほどのポートフォリオになったという。「金融や公益といった安定セクターに加えて、やや配当利回りは落ちますが、成長性を見込んでハイテク・電機セクターも入れました。また景気サイクルを見越して、ドラックストア・百貨店・化粧品といったインバウンド関連のセクターを厚めに配分していることも特徴です」(山口氏)と言うから、インカムゲインだけではなく、キャピタルゲインも狙えるポートフォリオになっているようだ。