本記事は、Frank Figliuzzi氏の著書『FBI WAY 世界最強の仕事術』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています

「知識豊富で説明責任の取れるリーダー」はどうやって育つのか

リーダー
(画像=jirsak/stock.adobe.com)

監査を免除されているプログラムや部局はなく、通常少なくとも3年ごとに監査の対象となる。私が務めている間に参加した監査では、10を優に超える数の地方局、いくつかの本部の部局、さらに、ロンドン、テルアビブ、アンマンの司法担当官事務所が対象だった。また、捜査官が関わる発砲事件の再調査を何件も行った。

私は、できるだけFBIの隅から隅まで知りたくて、FBIの上級管理職に9人しかいないフルタイム監査官になった。1年間ほぼ休みなく巡回監査を行う監査官補のチームをいくつも束ねていた。その年の終わりには、当時の長官ロバート・モラーからFBI主任監査官に任命された。私のキャリアにおいて、テロ対策、防諜(スパイ防止)、サイバー、刑事といった作戦プログラムから離れていた時間は長くはない。しかし、その離れていた間に、これらのプログラムが、そしてFBIがどのように機能しているかについて学んだことは非常に大きかった。

FBIの監査手続きは、伝説的と言えるほど深掘りもするし、幅も広い。

監査官は、FBIの各チーム・各プログラム・各リーダーの業務の効率性と有効性についての判定を〝コール〞しなくてはならない。FBI全体から集められた大きな監査チームが2、3週間にわたって部局を訪問し、調査ファイルや情報提供者ファイルを引っ張り出して調べる。地方犯罪の問題と国家安全保障上の脅威に関しては、優先順位と結果が評価された。管理官と捜査官への聞き取りが行われ、地域・郡・州・国の警察組織にいるパートナーたちは、FBIの活動はどんな様子か、改善できることはないか、などの質問を受けた。素晴らしい成果を上げている〝ベスト・プラクティス〞が認められると公表され、ほかの部局に情報共有された。

監査対応は数字合わせでは済まされなかった。大勢の逮捕者を挙げていても、それは部局の責任者が、込み入った有意義な捜査よりも、〝手っ取り早く〞統計数値を作ったということかもしれない。

監査の中心は「この部局およびそのリーダーの働きで、このコミュニティはどれだけよくなったのか?」という点にあるのだ。どんな組織でも、どこまで真剣にコンプライアンスを実行するかを決めているのは、そのトップだ。FBIも例外ではない。

だから、私はモラー長官に監査結果の概要を直に報告していた。その報告が終わると、監査を受けた部局の責任者と長官が出席するテレビ会議のスケジュールが組まれて、その席で主な監査結果について長官が部局長に確認していく。局長が自分の釈明をしているときには、高解像度のディスプレイがない時代でも、玉の汗が額に見て取れた。

このように、FBIは、職務責任局の業務にも監査プロセスにもリーダー層を必ず参加させることで、知識豊富で説明責任の取れるリーダーを育てている。

一方、多くの企業は従業員に対して、無意識のうちにコンプライアンスや職業倫理は他人の仕事だというメッセージを送っている。監査員のポジションは幹部候補者のための研修メニューの1つぐらいに考えられることも多く、監査員のモチベーションを維持すること、つまり十分な報酬で報いることもできていない。いざ不正行為の告発に対応するとなると、ほとんどの企業が人事部門か法務部門だけに責任を押し付ける。だが、リーダーが規範をしっかり守らせていなければ、どうしてリーダーがその規範を守ると信じられるだろうか?

FBI WAY 世界最強の仕事術
Frank Figliuzzi(フランク・フィグルッツィ)
FBIの特別捜査官として25年勤務。米国の主要都市でFBI地方局の管理職を務めたほか、FBI主任監査官に任命され、数々の難しい内部調査を指揮監督した。その後、本部の補佐官にまで昇進し、FBIの中でも名高い防諜部の責任者となった。フェアフィールド大学卒業。コネチカット大学ロースクール修了。ハーバード大学ケネディスクール、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院の修了生でもある。現在は、NBCニュースの国家安全保障アナリスト。リーダーシップやリスクマネジメント関連の講師としても人気を博している。

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