本記事は、Frank Figliuzzi氏の著書『FBI WAY 世界最強の仕事術』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています
「給料アップ」よりも大切なこと
私は、いろいろなリーダー職に就き、責任が増し、管理する職員の数が増えるに従って、昇進とは、1つには、より多くの職員に手を貸すチャンスをもらうことだと考えるようになった。
これから管理職になろうとする捜査官からよく質問を受けたものだ。仕方のないことだが、次のような質問が多かった。「本部との折衝や、多くの人やプログラムの責任を担って、ストレスが大変そうですが、わずかばかりの給料アップで見合っているのでしょうか?」。それに対して、私はまず、もし給料アップのために管理職になるなら、失望するだけだと答えていた。次に、FBIを高度1万メートルから見て学んでいると、公私にわたって成長するべきときが本能的にわかると話し、ジョークを交えながら、ほかのみんなの案件を代理体験することもできると言う。しかし、答えとして絶対に外せないのは〝影響力〞についてだ。
私にとって、そしてほとんどのFBI管理職にとって、チーム、ユニット、課、地方局、FBI本部全体を運営することは、自分1人だけで扱えるよりもはるかに広い範囲に影響力を持てるチャンスになる。犯罪事件、コミュニティ、国家への目に見える影響力に加えて、FBI職員の人生をよりよいものに変える真のチャンスをもらうことになるのだ。FBIのコア・バリューのひとつであるコンパッション(慈悲・思いやり)がこの種の影響力の鍵になることも多い。
自分の影響力について強く印象に残っているのは、自分の立場を使って部下の職員を助けられたという経験である。私は年下の管理職にそう伝えてきた。
たしかに、捜査、大きなポリシー変更の起案、新しい法律を作る戦い、追加リソースの獲得、タスクフォースの組成、訓練の設計などについて重要な意思決定もしてきたが、持っている影響力を使って最も報われたと感じるのは、人の人生に関わることができたときなのだ。正直に言うと、FBIが雇用する人々に監督はあまり必要ない。この本に書いた事件の多くは、私がいてもいなくても、おそらく同じ道をたどっただろう。というよりも、たぶん、私が担当したにもかかわらず同じ道をたどれた、ということでもある。
FBI職員は、ずっと監督している必要はないが、コンパッションを必要とするときがあって、一定の職位にある管理職がいい影響を及ぼすことができるのはそのときだ。
チーム管理官の役割は、地方局管理職の入門編というところだ。チーム管理官の上には、地方局内に何層もの管理職がいて、さらに本部にも多くの層があり、たいていは、対児童犯罪・防諜・サイバー犯罪・医療詐欺など、1つのプログラム ―― つまり1つの目的 ―― を専任で担当するチームを運営する。チームには、だいたい8人から20人の捜査官・タスクフォース担当官・解析官がいる。チームのミッションにもよるが、捜査官の経歴の長さはさまざまで、新人もいれば、中堅も大勢いて、退職間近の者もいる。管理官の責任は重いが、官僚組織全体への影響力は大きくなく、だからこそ、多くの役職のように、自分がこうしたいと思うとおりにできる。
チーム管理官は自身のチームを支え、地方局やFBI本部のリーダーたちに対する信頼関係と影響力を築き、独創的な戦略を実行し、物事の本質を見極めて何事も前に進めなければならない。私はチーム管理官として、チームの案件を支えるだけでなく、チームの人を支えることで、やるべきことができると学んだ。そして、この2つは密接に関係している。つまり、思いやりを持って人のマネジメントをすれば、日々の仕事でよりよい結果が生まれるようになるのだ。そのうえで、コンパッションは管理職の極めて重要な資産となる。
あなたの同僚やチームメートは大きな善のために命を犠牲にする必要はないかもしれないが、貴重な時間・エネルギー・才能をあなたのために使っている。あなたが、いかなる階層にしても1つの集団の指揮を任されているならば、コンパッションのある指揮を執る義務がある。それは正しいだけではなく、賢明なことでもあるのだ。
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