この記事は2022年11月25日に「月刊暗号資産」で公開された「ニューヨーク州で「暗号資産マイニング制限法」が成立」を一部編集し、転載したものです。
米ニューヨーク州のキャシー・ホウクル(Kathleen Hochul)知事は22日、ビットコイン(BTC)などPoW(プルーフ・オブ・ワーク)型の暗号資産におけるマイニングを規制する「暗号資産マイニング制限法」に署名した。ロイターなど複数のメディアが報じた。
この法律は暗号資産のマイニングで使用される化石燃料が環境に悪影響を及ぼすとして、今年6月にニューヨーク州上院議会で可決されたものだ。電力の供給を制限し、マイニングで発生する温暖化ガスの排出を抑えることを目的としている。
暗号資産マイニング制限法が成立したことにより、ニューヨークを拠点とするマイニング企業が他州に流れる可能性が高まった。
同法では、マイニング業者に対し、化石燃料を電力源とした発電所の新規使用許可を2年間停止する。なお、再生可能エネルギーなどを使用する場合は制限の対象外であるとしている。
ホウクル知事は発表で「これは国内で初めてのことです。ニューヨーク州が化石燃料を用いたマイニングを制限することで、二酸化炭素排出量を抑制します。これはニューヨークにとって重要なステップです」と述べている。
暗号資産マイニング制限法は2050年までに温室効果ガス排出を85%削減する取り組みの一環で制定された。ホウクル知事は当時「環境保護と経済活動があまり活発ではない地域での雇用機会保護のバランスを取る必要がある」と述べ、署名を検討するとしていた。そのため、6月にニューヨーク州上院議会で法案が可決されたものの、即時署名されることはなかった。
法案を作成した民主党のアンナ・ケレス(Anna Keres)下院議員は、暗号資産のマイニングによって排ガスや大量の廃棄物が発生し、マイニングの拠点となっている地域の自然環境を汚染していると主張しており、これまで取り締まりを求めていた。
一方、暗号資産関連団体は反発している。ブロックチェーン支援団体「チェンバー・オブ・デジタル・コマース(Chamber of Digital commerce)」のペリアンヌ・ボーリング(Perianne Boring)代表はTwitterで「ニューヨークはこれまで他の産業に対してエネルギーの使用量を理由に干渉したことはない。この承認はニューヨーク州で誰が権力を行使できるかできないかを決定する上で危険な前例となる」と述べ、暗号資産業界に対して不公平な決定であるとの見方を示した。
現在、米国は世界有数のビットコインマイニング拠点となっているが、暗号資産マイニング制限法に賛同する動きが強まればその地位が揺らぐ可能性もある。(提供:月刊暗号資産)