モニターに映し出された株価チャート ストックマーケット
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先物取引では「売り」と「買い」を同時におこなう「スプレッド取引」がよく利用されています。この記事では一般的なスプレッド取引の仕組みおよび、日経平均株価とTOPIX(東証株価指数)を利用した「NTトレード」について解説します。

スプレッド取引とは

スプレッド取引とは、2つの商品間(株価指数や商品先物)の価格差の差額(スプレッド)を利用して行う取引のことを指します。先物取引などにおいて活発に行われており、通常は割高な銘柄を売り、割安な銘柄を買うことによって、利益を得るのです。

スプレッド取引には、主に同じ商品で異なる限月を取引する「カレンダー(限月間)・スプレッド取引」と、同じ商品を異なる市場で取引したり、異なる商品を同じ限月で取引したり「インターマーケット(市場間)・スプレッド取引」があります。

限月間スプレッド取引とは

限月間スプレッド取引は「カレンダー・スプレッド」とも呼ばれ、同じ商品の異なる限月間の価格差の変動に注目して行うスプレッド取引のことを指します。たとえば、日経225先物では3、6、9,12月の4つの限月があるので、3月限を買って、6月限を売る取引をします。

これは、先物取引において、異なる2つの限月取引間の価格差(スプレッド)により注文を行い、取引が成立した場合にそのスプレッドが縮小することにより利益を得ることができる取引です。

先物取引においては、限月ごとに同じタイミングであっても取引される価格はズレていることがあります。

限月間スプレッド取引は、そのような価格のズレを利用して、割安な方を買い、それと同時に割高な方に売りを入れて、その価格差が縮小して適正水準に戻った時に反対売買を行うことで、利益が得られるのです。

インターマーケット・スプレッド取引とは

インターマーケット・スプレッド取引は、異なる市場間の価格差を利用した取引で、「市場間スプレッド取引」とも呼ばれています。

インターマーケット・スプレッド取引では、同じ有価証券や金融商品でも市場によって価格が異なる場合があることに着目し、その価格差を利用して取引できます。たとえば、ある金融商品が市場Aでは2万円で売られているが、市場Bでは2万2,000円で買える場合、市場Aで金融商品を2万円で購入し、市場Bで金融商品を2万2,000円で売ることによって、2,000円の利益を得ることができます。

市場間の価格差は様々な要因によって生じることがあります。地域的な価格差、需要状況の違い、政治的・経済的なイベントなどが考えられます。インターマーケット・スプレッド取引は、そうした価格差を利用することで、リスクを抑えた取引を実現することができます。

たとえば、日経225先物取引は大阪取引所だけでなく、シンガポールのSGX(シンガポール取引所)や米国のCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)にも上場しています。大阪証券取引所とシンガポール、CMEとの日経225先物の価格差がある場合は、インターマーケット・スプレッド取引が可能です。

ただ、近年はアルゴリズム取引によってカレンダー・スプレッドやインターマーケット・スプレッド取引は困難になっています。カレンダー・スプレッド取引やインターマーケット・スプレッド取引は価格差があれば利益になる確率が高い取引ですが、近年はアルゴリズム取引によって価格差は瞬時に解消される傾向があるからです。

アルゴリズム取引とは、ヘッジファンドや機関投資家などの大口投資家が管理するコンピュータが自動的に株式売買注文のタイミングや数量を決めて注文を繰り返す取引のことです。

2000年代以降、ヘッジファンドなどでアルゴリズム取引の採用が進んでいます。スプレッド取引のアルゴリズム取引は、スプレッド取引を自動化するためのプログラムです。

スプレッド取引とは、先物取引において、異なる2つの限月取引間の価格差などを利用して取引を行う方法です。スプレッド取引のアルゴリズムは、このスプレッド取引を自動化することで、取引をより効率的に行うことができるのです。

日経平均株価とTOPIXの価格差を利用したNTトレードとは

同一銘柄でのスプレッド取引は利益を出しにくくなっていますが、異なる銘柄でのスプレッド取引もあります。日経平均株価を対象にした先物取引のスプレッド取引では、NT倍率を利用した「NTトレード」が有名です。

NT倍率とは、日経平均株価(日経225)を東証株価指数(TOPIX)で割った数値のことです。たとえば、2022年12月14日時点では、NT倍率は14.24でした。

NT倍率は、日経225とTOPIXの頭文字(NとT)をとった呼称で、日本の株式市場全体の方向性を把握する際に役立ちます。また、トレード戦略を立てる際にも参考になる指標となっています。日経平均株価とTOPIXの特徴に差があるからです。それぞれの指数の特徴について解説します。

日経平均株価の特徴

日経平均株価は、日本経済新聞社が発表している株価指数で、東京証券取引所プライム市場に上場する代表的な225銘柄をもとに算出されます。対象となる225銘柄は、市場での流動性が高い銘柄を中心に、業種間のバランスに配慮して日本経済新聞社が選定しています。

日経平均株価は、国内の株式市場の大きな動きを把握するための代表的な指数として、投資信託や先物取引などの商品にも利用されているのです。

日経平均株価は日本の代表的な銘柄を選定しているため、定期的に採用銘柄数を見直し、株式分割や銘柄入れ替えなど市場変動以外の要因を排除して分母(除数)を調整し、指数値に連続性を持たせています。

TOPIXの特徴

TOPIX(Tokyo Stock Price Index)は、東京証券取引所に上場している銘柄を対象に算出・公表されている株価指数で、「東証株価指数」ともいいます。2022年4月の東京証券取引所の新市場区分への移行までは、1968(昭和43年)年1月4日を基準日とし、その時点の時価総額を100として、東証一部上場全銘柄の時価総額を各銘柄の浮動株数で算出していました。

そして、2022年4月1日の新市場区分の実施に伴い、TOPIX自体の見直しを行い、構成銘柄を市場区分から分離し、市場代表性と投資対象としての機能性をさらに向上させています。国内株で運用する機関投資家のベンチマーク(運用指標)としては、日経平均株価よりもTOPIXの方がよく使われます。日経平均株価は対象銘柄が225ですが、TOPIXは2,000銘柄以上を対象にしており、より市場全体の動向を表していると考えられるからです。

日経平均株価とTOPIXの違い

日経平均株価は225銘柄の株価の平均であるため、株価の高い銘柄(値がさ株)の影響を受けやすくなっています。一方、TOPIXは、日本の株式市場を幅広くカバーする株価指数です。日経平均株価よりも市場全体の値動きをよく表していると言われていますが、時価総額の大きい銘柄(大型株)の値動きに影響されやすいという特徴があります。

  日経平均株価TOPIX
対象銘柄 東証プライムを代表する銘柄東証上場銘柄(主に東証プライム市場)
銘柄数 225銘柄2,000銘柄以上
算出元 日本経済新聞社東京証券取引所
特徴 値がさ株(値嵩株*)の影響を受けやすい時価総額の大きい銘柄の影響を受けやすい

*値嵩株:1単元当たりの株価の水準が高い銘柄のこと。1単元(100株)の購入金額が50万円以上、株価が5,000円程度以上の銘柄のことを呼ぶのが一般的。


日経平均株価はハイテク株などのグロース株が多いのが特徴です。グロース株とは、業績や株価が市場平均よりも高いと評価される銘柄のことで、「成長株」とも呼ばれます。一方、TOPIXに影響を及ぼす時価総額の大きい銘柄は銀行株などのバリュー株が多いのが特徴です。バリュー株とは、「割安株」とも呼ばれ、本来持っている価値(その会社の利益や資産等に対しての評価)に比べて、株価が低いと思われる銘柄のことを指します。

ですから、グロース株がバリュー株優位の場合は「NTトレード」買い戦略が有効です。一方、バリュー株が優位の場合は「NTトレード」売りが優位になります。2021年まではグロース株がバリュー株に対して優位だったのでNT倍率は上昇し、高値15.66まで上昇しましたが、2022年はバリュー株が優位になり、NT倍率は低下傾向にあります。この傾向が2023年以降も続くかどうかに注目です。