ウクライナを支援するため、ドイツが主力戦車を供与することになった。しかし、日本にも戦車はある。政府は兵器の調達コストを引き下げるために2014年に「防衛装備移転三原則」を制定して武器輸出に力を入れてきたが、「実績不足」から採用は進んでない。だが、ロシアからの侵攻を食い止めるために各国に武器供与を求めているウクライナなら、受け入れてもらえるのではないか?

日本もウクライナへの武器供与は可能

ウクライナのゼレンスキー大統領はバフムートなど東部戦線で苦戦を強いられており、戦車などの兵器を早期に供与するよう西側諸国に求めている。これに応えてドイツ政府が「レオパルト2」の直接供与を決め、ポーランドやフィンランドなど保有国からの供与も認めた。

防衛装備移転三原則では、紛争当事国への武器移転を認めていない。しかし、これは国連安全保障理事会が「対応が必要」と決議した紛争当事国であり、ロシアから攻撃を受けているウクライナは「対象外で問題ない」というのが政府の見解だ。戦争放棄を定めた憲法第9条があるから、武器を輸出できないわけではない。

事実、政府はウクライナに防弾チョッキとヘルメットのほか、非常用食料や防寒服、テント、発電機、カメラ、衛生用品、ドローンなどを供与する。「10式戦車」もウクライナに歓迎されるのではないか?だが、10式戦車は日本での運用を想定した戦車で、ウクライナでロシア軍相手にレオパルト2並みの戦力になるかどうかは疑問が残る。


「ガラパゴス」化した国産戦車、海外では使えない

10式戦車は先代の「90式戦車」が50.2トンと重く、北海道以外では運用が難しいとの反省から44トンに軽量化された。そのため、60トンを超えるレオパルト2や英国の「チャレンジャー2」、米国の「M1 エイブラムス」に比べると防御力が弱いとされる。

10式戦車の最大の強みは、指揮系(作戦系)システム・業務系システム・通信インフラ系システムなどで構成される「C4Iシステム」。多くの情報を瞬時に処理し、戦闘を有利に運ぶ「スマート(賢い)戦車」だ。

同システムは概ね米軍に準じたものだが、ロシア製兵器を装備するウクライナ軍の情報システムとの互換性はない。そもそもウクライナには米国や日本で整備されているような高度戦闘情報システムが存在しないのだ。

10式戦車は情報化により作戦や戦術、交戦で本領を発揮する戦車なのだが、インフラとなる情報システムが構築されていないウクライナでは「宝の持ち腐れ」になる可能性が高い。

「実績不足」が日本製兵器の弱点とされる。が、日本のように高度な情報インフラが整備されたエリアでしか運用できない以上、供与できる地域は限定されるため、実績の積み上げようがないのが実情だ。

本来、戦車は大陸の大平原での戦闘向けの兵器。島国の日本での利用を想定した「特殊用途」の国産戦車が国際的な競争力を持つのは不可能に近い。だからと言って海外で通用する戦車を生産すれば、日本では使いないというジレンマに陥る。メイド・イン・ジャパンの兵器もまた「ガラパゴス化」しているのだ。

文:M&A Online編集部