「カタナ」と聞いて、あなたはどんなバイクを思い浮かべますか？
多くの人は日本刀をイメージした名車「GSX1100S KATANA」を思い浮かべることでしょう。もしくはそのデザインを踏襲した最新モデル「KATANA」かも知れません。残念ながら主役の座をつかめなかった「じゃない方」のKATANAを紹介します。
ハンス・ムートが手がけたもう一台のKATANA「GS650G」
「GSX1100S KATANA」は、1980年のケルンショーで発表されました。イタリアのハンス・ムートがデザインし、自らのオフィス「ターゲットデザイン」がコンセプトモデルとして制作したことは有名です。
「ターゲットデザイン」は、GSX1100S KATANAのほかにも、ミドルモデルのデザインも手掛けていました。1981年に発売された「GS650G」にも、KATANAのペットネームが付けられています。フロントからテールまで流れるようなデザインや、星形キャストホイール、特徴的なサイドカバーなどが共通しています。しかしGSX1100S KATANAほどの斬新さはなく、メインストリートを進むことができませんでした。「じゃない方KATANA」として1983年に販売を終了しています。
メーカー名：スズキ
車名：GS650G KATANA
重量：210 kg
エンジン：空冷4サイクル直列4気筒
排気量： 673cc
最高出力：65ps/9500rpm
GS650G KATANAには弟分と言える「GS125E KATANA」、「GSX250E KATANA」、「GSX400E KATANA」が存在していました。もしかしたら、スズキは、このデザインを推していきたかったのかも知れません。しかし「GSX1100S=KATANA」のイメージが強く、人気はイマイチ。後に発売されたGSX1100S KATANAのスケールダウン版「GSX250S KATANA」、「GSX400S KATANA」のようなヒットにはなりませんでした。
メーカー名：スズキ
車名：GSX250E KATANA
重量：157.3 kg
エンジン：空冷4サイクル並列2気筒
排気量： 249cc
最高出力：29ps/10000rpm
そっくりでもダメだった！GSX750Sの嘆き
姿かたちがソックリな「GSX750S KATANA」も不運な一台です。当時、大型免許は試験場で取得する以外に方法はなく、合格率も1ケタ台の難関でした。また各社の自主規制により、国内で販売されるバイクの最大排気量は750ccがリミット。「せっかく大型免許を取ったんだから、フルパワーの逆輸入車に乗りたい」と思うのは仕方がありません。
また、セパレートハンドルではなく、「耕運機」と呼ばれたアップハンドルが装着されていたのもデザインを台無しにしていました。当時、セパハンに変更した「なんちゃって1100cc」が流行りましたが、違法改造になるため、取り締まりを強化する「刀狩り」なる言葉も生まれました。
メーカー名：スズキ
車名：GSX750S KATANA
重量：222.5 kg
エンジン：空冷4サイクル直列4気筒
排気量： 747cc
最高出力：69ps/8500rpm
オリジナルデザインで新登場
1982年に発売された「GSX750S KATANA」は、翌年マイナーチェンジされて、1984年に「NEW KATANA（通称Ⅲ型）」に生まれ変わります。ハンス・ムートのデザインを踏襲しながら、スズキのオリジナリティでまとまっています。なんと前代未聞のリトラクタブルヘッドランプを装着。ライトをオンにすると、ランボルギーニ・カウンタックのように格納されていたライトが開きます。
さらには、ライトケース（この表現でいいのか?）のKATANAのロゴが鏡文字など、理解し難い工夫も取り入れられています。当時は初代KATANの呪縛から抜けられませんでしたが、摩訶不思議なデザインは、今でも色あせていません。なんと近くのショップでは、ボロボロな車両に120万円のプライスが付いていました。
メーカー名：スズキ
車名：GSX750S KATANA
重量：212kg
エンジン：空冷4サイクル直列4気筒
排気量： 747cc
最高出力：77ps/9000rpm
原付きやクルマのKATANAも登場！
「夢よ、もう一度」と言うわけではありませんが、1997年にスズキは「KATANA50」という珍車を発売します。スペインスズキ製(2013年に撤退）で、国内にはデリバリーされていないようです。スズキの公式ホームページにも掲載されておらず、ヨーロッパではロングセラーだとか、空冷仕様と水冷仕様があるとか、メーターは120km/hまで刻まれているなど、怪情報しか得られまれませんでした。
スズキの欧州部門は、乗用車のスイフトスポーツに「Suzuki Swift Sport Katana」を設定し、オランダで限定30台を発売しています。グリルの下部にKATANAのロゴを配し、ボンネットやドアには、二輪車のカタナをモチーフにしたストライプを装着。「バイクに憧れたクルマ」という新しいジャンルを築きあげました。
今後もスズキは新しいKATANAブランドを生み出すことでしょう。そのうち最速の軽トラ「キャリィKATANA」が販売されるかも知れませんよ?!
