当たり前が、人を笑顔にする
日本国中がラグビーワールドカップ開催に沸き立った2019年。
オープン当初の「BAR 寅馬」も、プロジェクターによるラグビー観戦とお酒を目当てにした外国人観光客で賑わいました。
コロナウイルス感染症が猛威を振るい始めたのは、ちょうど店の売上が安定し始めたころ。
店は2020年4月から休業と再開を繰り返し、結局1年半ほど営業できない状態が続きます。
「当時はもう、開き直るしかなかったですね。めったにできない経験をさせてもらったと今ならそう言えます。」
常連さんに助けられつつ、ここまで来られたと語る洋輝さん。
休業中に知人の手で制作されたシャッターは、今では待ち合わせの目印になり、昼間は近所の子どもたちが喜んで前を通るといいます。
コロナ禍も気負うことなく、寅と馬、2人で続けたバーの人気メニューはハイボールです。
グラスをきちんと氷で冷やし、ウイスキーを注いでさらに冷やしたら、炭酸をゆっくり入れてステアする。
基本に沿った当たり前のことをしているだけと、洋輝さんは照れくさそうに笑います。
ハイボールにあうフードメニューの充実ぶりも注目です。
トロトロの「軟骨ソーキ」のレシピは、真理華さんのお母様直伝だそう。
沖縄だしをきかせた「やきそば」は、スパムの旨味と塩味がお酒を進ませます。
野菜をふんだんに使用した「タコライス」も店の定番メニューです。
店内のアメリカンなイメージに合わせ、ウイスキーはバーボンを中心に揃えられています。
青春時代にバーボンを嗜んだ50代のお客様からは「こんなんあるんや、懐かしい」「昔はここみたいな酒場でよう飲んだわ」と喜ばれることも多いそう。
真理華さんが居た頃は“ネオスナック”とも呼ばれていたという「BAR 寅馬」。
今回は、メニューにはない、おすすめウイスキーをこっそりと教えていただきました。
「ウィレット ファミリー エステート スモールバッチ ライ 4年」
ライ麦を主原料とするライウイスキーは、洋輝さんおすすめのジャンルだそう。
「Willett(ウィレット)」は、アメリカケンタッキー州にあるバーズタウンで古い歴史を持つ蒸留所。
なかでも「ファミリー エステート」は世界的評価の高い人気商品だといいます。
「梅干しみたいな風味があるでしょう?」と洋輝さんがおっしゃるように、後口に残るソルティな風味と独特のアタックが印象的。
赤みがかった琥珀色を店内のライトがきれいに照らします。