ID外為レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「円相場は貿易収支本位制、原油相場本位制」

ドル円=130-135、ユーロ円=142-147、ユーロドル=1.06-1.11

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨8位(6位)、株価7位(8位)、円相場は貿易収支本位制、原油相場本位制」
 新年度、輸出入、機関投資家も動き出す。4月初めは年間計画策定か。4月中旬より本格的に動き出すだろう。円相場は貿易収支本位制、さらに原油価格本位制だ。昨年秋は、貿易赤字の需給を奥の手の「為替介入」を通じて修正し、20円以上のドル下げ効果を生んだ。さて原油価格は120ドルから一時70ドル割れで現在は79ドル台。輸入額は昨年夏前後の前年比50%増から、現在は10%程度の伸びだ。これも去年ほどの円安相場となっていない要因だ。ただロシア、中東などは原油下落を抑えたいようだ。それが減産か、ロシアの新たな緊張造成かはわからない。

 昨年を除いた例年は輸出のドル売り先行が、輸入を上回る現象が夏まで続くが、まだ不安定な原油動向も注視したい。
円相場は2月の12通貨中、11位から8位へ上昇してきている。需給が少しずつ変化を見せていることは確かだ。
 日本の景気指標は徐々に改善しているがまだ力強さがなく、日銀が政策を変更するのはまだか。ただ4月の生活用品の値上げもあり、金融政策正常化への道を歩んでいることは確かだ。

*米ドル「通貨7位(7位)、株価(NYダウ)17位(17位)、FRB、ECBはまだタカ派だが、10年国債利回りはハト派」
 米ドルはじり安。2月末はメキシコペソに次いで2位だったが、3月末は7位で8位の円に迫られている。3月は一時、円に抜かれたこともあった。FRBやECBは依然、インフレは高水準にあるとして、金融引き締めの継続を示唆しているが、欧米の10年国債利回りは着実に低下している。米10年国債は22年末が3.878%で現在3.471%まで低下している。米短期金利先物市場では、5月のFOMCで金利据え置きが決定される確率が0.25%利上げの確率をやや上回っている。2月の個人消費支出(PCE)価格指数は伸びが鈍化した。またミシガン大の3月の消費者調査確定値は1年先のインフレ期待が3.6%(速報値は3.8%)とがさらに後退し、ほぼ2年ぶりの低水準になった。

 一方で景気の先行きに対する消費者の見方は比較的暗い状態が続いた。3月の消費者マインド指数(確定値)は62.0に低下、速報値は63.4、前月は67だった。さらには22年4QのGDP確報値は年率換算で前期比2.6%増と、改定値の2.7%増から下方改定された。インフレは低下しているが、まだ高水準としていると日本のバブル崩壊時に、日銀が金融引き締めを続けて大失敗したことを思い出す。
 さて、S&Pは バンク オブ アメリカ、JP モルガン チェース、PNC、および Truist の格付けの見通しをポジティブから安定的に引き下げた。まだ金融ショックの余震は続いている。今週は3月雇用統計の発表だが、非農業部門雇用者数の伸びは減少する予想だ。

*ユーロ「通貨3位(4位)、株価3位(6位)DAX)、株価指数の軒並み10%以上の上昇は先行き楽観を示している」
 株価が強い。独、仏、イタリア、スペイン、ギリシャなどの株価指数が軒並み年初来10%高である。先行きの楽観的な見方が強まっているのだろう。総合インフレは徐々に低下しているがラガルド総裁やビルロワドガロー仏中銀総裁などは、ユーロ圏のコアインフレ率はなお「著しく高すぎる」と述べている。まだ金融政策の手綱は緩めていない。ただ10年国債利回りは着実に低下している。市場はハト派的な当局の動きを予想しているかのようだ。3月の消費者物価は、前年同月比の伸び率が6.9%と前月の8.5%から大幅に低下した。縮小幅は1991年の統計開始以来最大となった。ただ価格変動の大きい食品やエネルギーなどを除くと5.7%と最高を更新した。

 経済指標は成熟欧州の特徴ではあるがいつも通り力強さはないが、徐々に回復している。製造業PMIは伸び悩むも、サービス業PMIの伸びが強く、総合PMIを押し上げた。独IFOの3月業況指数は93.3で、前月の91.1から上昇した。弱いものでは、3月のユーロ圏景況感指数が99.3と2月の99.6から低下した。 昨年は赤字だった経常収支は、原材料価格の急落で輸入額が減少し黒字化しユーロを支えている。
 フィッチは、ユーロ圏の中心国の独の格付けが AAA であり、見通しが安定していることを確認している。

*ポンド「通貨2位(2位)、株価15位(14位)、リセッション回避と利上げ観測で上昇。TPP加盟も若干好感」
 3月半ばから2位を維持している。リセッションは回避した。22年4QGDP確報値は前期比0.1%増。旅行業が好調だったほか政府による光熱費負担軽減策が寄与し、景気後退を辛うじて回避した。
電気通信、建設、製造業が従来の見通しよりも好調だった。家計の可処分所得は1.3%増と5四半期ぶりにプラスに転じた。ただGDPは19年終盤の水準を0.6%下回った。G7で英国だけが新型コロナ前の水準を回復していない。バークレーズは23年1QのGDP伸び率の予測も0.1-0.2%上方修正した。1Qの製造業回復のほか、1月の経済成長率が予想を上回ったことを受けた。「最小限の景気後退」になるという。今年のGDP予測は前年比0.3%減。
 また英中銀のターミナルレートの予想を0.25%引き上げ4.5%とした。インフレ率が予想以上に上昇したこともあり、5月の0.25%利上げ予想は維持した。

 さて、スナク英首相は、英国の環太平洋連携協定(TPP)への加盟が合意されたとし、英国の欧州連合(EU)離脱以来最大の貿易協定だと述べた。
スナク首相は、TPPへの加盟で「英国は活動的で成長する太平洋経済圏の中心に据えられる」とし、「ブレグジット後の自由がもたらす真の経済的利益」が示されると述べた。
英国のTPP加盟国に対する輸出額は昨年9月末までの1年間で605億ポンド。TPP加盟により自動車、蒸留酒、乳製品などの関税が撤廃され、長期的には毎年18億ポンドの経済効果が期待できるとしている。

*豪ドル「通貨10位(11位)、株価16位(16位)、豪の4大銀行も利上げか据え置きで真っ二つ。経済指標は強くはない。インフレをどうみるか」
 通貨も株価も弱く、悲観的だ。円より弱くなっている。4月4日に政策金利決定がある。4大銀行でも据え置きと0.25%利上げで意見が分かれている。CBAとウエストパック銀行は利上げを休止すると予想している。2月の消費者物価の伸び率が8カ月ぶりの低水準となり、小売売上高もごく小幅な伸びにとどまった。これまでの積極的な利上げの影響が鮮明に示されたとした。一方、NABとANZは0.25%の利上げを予想している。労働市場の指標、先行指標、依然として比較的高いインフレ率は、いずれも追加引き締めの必要性を示しているため、2月のインフレ鈍化だけでは引き締めバイアスを放棄するのに十分とはいえない、とした。市場金利(10年国債)は2月末の3.88%から3月末は3.24%へ低下している。3月PMIでは製造業・サービス業・総合といずれも前月より低下したことも弱材料。

 今年になってから豪中関係が改善して貿易量も増加が期待されるが、政治では豪米英が対中国で原子力潜水艦の配備で協力していることもあり、一瞬に関係悪化となることも想定したい。 もちろん資源価格通貨で昨年末からの資源安で下落してきたので、その動向もチェックしていきたい。

*NZドル「通貨9位(10位)、株価11位(10位)、リセッションでも利上げの苦しさあり」
 豪ドル同様、通貨も株価も弱い。その中で今週は政策金利決定がある。豪RBAほど予想の不一致はなく、0.25%の利上げ予想が多い。ただ経済の中味は豪より深刻だ。22年4QのGDP伸び率はマイナス0.6%。23年1Qもマイナス0.3%、緩やかなリセッションとなりそうだ。こうした状況を受け、中銀は今回利上げペースを緩める公算が大きい。物価上昇率は7.2%となお30年ぶりの高い伸びで、中銀の目標上限の3%をはるかに上回っている。

 そのためなお追加利上げ余地はありそうだ。労働市場は依然として非常にタイトで、予想物価もとても高い。実体経済は減速しているものの、それほど急激ではない。3月の消費者信頼感指数は77.7と、前月の79.8から低下した。金利が急速に上昇し、生活費が購買力を低下させている。3月の企業信頼感はほぼ横ばいとなった。向こう1年間に経済が悪化すると予想した回答の割合は差し引き43.4%と、2月調査の43.3%からほとんど変わらなかった。

テクニカル分析

*ドル円「5週ぶり陽線。2σ下限から反発も中位止まり」
日足、ボリバン中位越えられず3月は終える。雲中。3月24日、28日の下ヒゲで上昇も月末31日は長い上ヒゲを出す。3月30日-31日の上昇ラインがサポート。3月8日-31日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き、20日線下向き。
週足、2月27週の週足カブセで4週連続陰線も先週は5週ぶり陽線。雲中。20週線に抑えられ中位を上抜けず。5週線、20週線下向き。3月20日週-27日週の上昇ラインがサポート。3月6日週-27日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、2月は陽転も5か月移動平均線は下向いたまま。3月は陰線。2月-3月の上昇ラインがサポート。22年10月-11月の下降ラインが上値抵抗。
年足、2023年はここまで陽線。3月20日週は陰転するも月末週には再び陽転。2022年は大陽線に終わるも、長い上ヒゲで圧力を残した。21年-22年、12年-21年の上昇ラインがサポート。

*ユーロドル「ボリバン上位で推移」
日足、雲上維持。2σ上限では反落。ボリバン上位で推移。3月30日-31日の上昇ラインがサポート。3月30日-31日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、ボリバン中位で反発。雲の上に出るも2σ上限で2度跳ね返される。3月20日週-27日週の上昇ラインがサポート。1月30日週-3月27日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、ボリバン中位まで上昇。23年2月-3月の下降ラインが上値抵抗。22年12月-23年3月の上昇ラインがサポート。5か月線上向き、20か月線下向き。
年足、年足陽転。20年‐21年の上昇ラインを下抜く。2022年は2年連続陰線もボリバン2σ下限到達し反発。下ヒゲが長く反発力あり。02年-22年の上昇ラインがサポート。21年‐22年の下降ラインが上値抵抗。

*ユーロ円「年度末週で大陽線。ただ年度末の日足は長い上ヒゲで弱い」
日足、3月31日は一時2σ上限へ上伸も、長い上ヒゲで陰線で終わる。3月30日-31日の上昇ラインがサポート。5日線が20日線を上抜く。
週足、先週は大陽線も2σ上限から小反落。3月20日週-27日週の上昇ラインがサポート。22年12月12日週-23年3月27日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線ほぼ横ばい。
月足、ボリバン上位で推移。3月は下ヒゲの長い寄り引き同時。22年10月-23年3月の下降ラインが上値抵抗。23年1月-3月の上昇ラインがサポート。
年足、3年連続陽線。今年も陽線。20年-22年の上昇ラインがサポート。08年-22年の下降ラインが上値抵抗。

情報提供元:FX湘南投資グループ
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