総括
FX「今年は幾分円高、原油価格が波乱要因。首相と日銀総裁会見にも注目」
ドル円=130-135、ユーロ円=142-147、ユーロドル=1.06-1.11
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨8位(6位)、株価9位(7位)、今年は幾分円高、原油価格が波乱要因。首相と日銀総裁会見にも注目」
今年はここまで円は12通貨中8位であり、ドルが7位で後方で競い合っている。円は昨年は終始11位であったので今年は全体では幾分円高推移している。米景気減速観測による米金利低下と資源価格の下落で、ポンド、ユーロ、スイスという持たざる国の通貨が今年は堅調で、円も遅ればせながらなんとかその動きについていっている。昨年の円安の要因は原油などエネルギー価格の急騰で貿易赤字が拡大したことだが、昨年後半から原油安が続き。一時はWTIが70ドルを割り込んだ。ただ先週は予想外のOPECプラスの減産で80ドル台を回復したのが円の不安要因だ。
本日4月10日は岸田首相と植田日銀新総裁が初面会する。日本の景気回復も低調な折り、現状の金融緩和を続けるとの意見で一致しそうだ。その時に円相場がどう反応するか。やや予想外で物価高の話に言及すれば、YCC撤廃観測も出てくる。また今週からは企業の新年度の取引も活発してくるだろう。生保などの機関投資家の投資方針もチェックしたい。企業の23年度想定レートは131円後半なので132円超えでは輸出のドル売りも出始める。米国の消費者物価、FOMC議事要旨も円相場に影響を与えよう。
*米ドル「通貨7位(7位)、株価(NYダウ)16位(17位)、強くないドル。今週はCPIとインフレ期待指数。経済指標は強くはないが、FRBはまだタカ派」
ドルは12通貨中7位、ナスダックは15.49%高で今年の世界最強株価指数、ただNYダウは僅か1.02%の上昇にとどまっている。先週の3月雇用統計は好感されたが全体では米国の経済指標は強くはない。ISM製造業・非製造業ともに悪化、求人件数も大幅減少している。建設支出、工場受注も悪化、2月貿易赤字は拡大した。アトランタ連銀GDPナウも1Qは年率換算で1.5%予想と3月の予想3%台から低下している。一方FRB幹部からはインフレ抑制に向け利上げを継続する必要があるとの見方が多い。米雇用統計後のCMEフェドウォッチによると、5月FOMCで0.25%の利上げを決定する確率は67%と4月6日の49.2%%から上昇している。
今週は3月インフレ期待指数、消費者物価、FOMC議事要旨と金利敏感指数などの発表がある。米銀の決算発表も注目したい。
さて米国はニアショアリング、中国とのデカップリングの動きを示しているが、中国は欧州との経済交流拡大、BRICS、中東などの連携強化で対抗している。IMは 米国と中国の「デカップリング」により、世界の GDPの2%が失われる可能性があるとした。世界の交流を深めたほうが経済の発展はあるがイデオロギーや感情の対立は是正できない。中国も大人になり、今後も米国離れ、米国との対立が強まる。
*ユーロ「通貨4位(3位)、株価3位(3位)DAX)、ユーロは12通貨中4位とまずまずの位置、欧州株価も好調」
ユーロは12通貨中4位とまずまずの位置、株価(独DAX)は年初来12.02%高と好調、他の欧州株価市場も底堅い。何がユーロを強くさせているかと言えば、7位の米ドルの軟調だ。また先週はOPECプラスの減産で原油価格が上昇したが、最近のエネルギー価格は1年前と比べれば大きく下落し、輸入圧力を減少させ、ユーロ圏の経常赤字を黒字に転換させている。欧州は日本ほどエネルギーの海外依存度は高くない(半分程度)なので貿易・経常需給の回復も速い。
インフレは低下しているがECB当局者は慎重だ。クノット・オランダ中銀総裁は、5月に0.5%の利上げが必要なのか、それとも利上げ幅を0.25%に引き下げる可能性があるのかは不明確だと述べた。
クノット総裁は、「利上げはもちろん終了していない。ユーロ圏のコアインフレは現在6%近い。3%の金利では対抗できない」と続けた。
経済指標は強くはないが弱くもない。3月PMIは製造業PMIは伸び悩むも、サービス業PMIの伸びが強く、総合PMIを押し上げた。独はIFOの3月業況指数に続き、鉱工業生産も改善した。今週はユーロ圏小売売上や鉱工業生産の発表がある。
*ポンド「通貨2位(2位)、株価12位(15位)、ポンドは反動高、先週対ドルで10か月ぶりの高値に達した。金融政策は転換点か」
ポンドは2位堅持。4月4日にポンドは対ドルで10か月ぶりの高値に達し2022 年6月以来初めて1.25ドルを突破した。リセッション回避など経済が予想以上に持ちこたえている兆候によって押し上げられた。
2022年9月にトラス政権が減税しながら借り入れを増やす計画を発表した後、ポンドは1.03ドル近くまで急落し、金融市場でパニックが発生してからの急回復だ。今週の2月GDPにも注目したい。
ただ金融政策は転換点を示唆している当局者がいる。英中銀のチーフエコノミスト・ピル氏は、これまでに実施した大幅な金融引き締めの影響は近く顕在化するとの見方を示しながらも、インフレ抑制に十分な利上げが行われたか、まだ確信できないと述べた。「ベース効果とエネルギー価格の下落が相まって、今年は総合インフレ率が大きく低下すると予想されているが、国内要因による物価上昇が持続する可能性があるため、インフレ見通しの評価にはまだ注意が必要だ」と述べた。
ハト派のテンレイロ英中銀委員は、おそらくこれまで考えられていたより早期に利下げに着手する必要があるとの見方を示した。テンレイロ氏は民間給与の伸びが過去数カ月大幅に鈍化しており、労働市場の冷え込みの兆候が見られると指摘。インフレ率は目標の2%を大きく下回るとの見方を示した。「政策金利が一段と制約的な領域に入っており、中期的にインフレ目標を達成するためには、より緩和的なスタンスが必要だと考える」と述べた。
*豪ドル「通貨10位(10位)、株価15位(16位)、豪政策金利据え置きで弱い。今週は消費者信頼感、企業景況感、インフレ期待指数、雇用」
豪ドルは11位、対ドルでは4日連続陰線で先週は終えた。週足では上ヒゲが長い。さて利上げ継続と一時休止で予想が分かれていた豪政策金利は3.6%に据え置かれた。これまでの利上げによる景気やインフレへの影響を評価する時間を確保するため、11会合ぶりに利上げを停止した。同時に、インフレ率を目標水準に戻すためには、ある程度の追加引き締めが必要になる可能性があると指摘した。
RBAロウ総裁は、これまでの利上げの影響を評価する時間を確保するために金利を据え置いたものの、理事会は経済やインフレに関する最新予測を基に政策を5月に再び評価すると説明。
インフレ率は昨年4Qで前年比で7.83%と33年ぶりの高水準となり中銀の目標レンジ(2-3%)を大きく上回った。ただ、その後は減速の兆しが見られる。ロウ総裁は、過去の金利サイクルで急速に調整した後、いったん休止して経済情勢を観察し追加措置が必要か検討したとし、今回の据え置きも、そうした対応の一環とした。
ただ経済指標が弱いことは確かだ。3月PMIでは製造業・サービス業・総合といずれも前月より低下した。3月の求人広告件数は前月比2.4%減と、2月の4.8%減に続き2カ月連続でマイナスとなった。
隣国NZは先週、予想の0.25%を上回る0.5%の利上げを行ったことで対NZドルでも豪ドルは下落した。今週は3月消費者信頼感、企業景況感、インフレ期待指数、雇用の発表がある。
*NZドル「通貨9位(9位)、株価13位(11位)、スタグフレーションの可能性」
予想を上回る0.5%の利上げとなった。ただ、対豪ドルでは上昇したものの、対円、対ドルで弱含んだ。NZ中銀は政策金利を5.25%とした。政策金利は14年余ぶりの高水準となった。
中銀はインフレ率が依然高く(7.2%)根強いとの見解を改めて示した。2021年10月の引き締め開始以降、利上げは11会合連続。中銀はインフレ率を中期的に目標レンジの1-3%に戻すために政策金利を引き上げる必要性があるとの見解で一致したと説明した。国内需要は引き続き減速すると予想、インフレを抑えることと金融の安定を維持することの間に実質的な矛盾はなく、労働市場は引き続き堅調とした。
ただ経済は弱い。22年4QのGDP伸び率はマイナス0.6%。23年1Qもマイナス0.3%、緩やかなリセッションとなりそうだ。
また、家計純資産は4四半期連続で下落している。家計が所有するすべての資産の価値からすべての負債の価値を差し引いた家計の純資産は、2022年12月の四半期に103億ドル減少した。不動産はが下落、預金は増加した。また家計債務が増加したことも、純資産の減少に寄与した。今暫くスタグフレーションの可能性で苦しみそうだ。