外為マーケットレポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

先週のドル・円相場は週初は3月のISM.製造業・非製造業景況指数が何れも市場予想を下回り、また2月のJOLTS.(求人労働移動調査)での求人件数が前月から減少したことを受けて長期金利が低下し、それにつれて徐々に値を下げて安値130.59まで下落した。

その後週末に発表された3月の米国雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比で+23万6千人と前月の+32万6千人を下回り、また平均時給も前年比+4.2%と前月の+4.6%から伸びが大きく減速したものの、失業率が前月の3.6%から3.5%へと好転して次回のFOMC.での利上げを見送る様な内容ではなかったことを受けて長期金利が再び上昇するのにつれてドル・円相場も132円台を回復することとなった。

米国経済データが出る度にその内容に一喜一憂して、“果たしてFRB.は利上げ継続か否か?”と騒ぐのには閉口するが、まあ米国経済が減速傾向にある事は間違いあるまい。

次回、5月のFOMC.での利上げが最後となる可能性は高かろう。

さて本日から植田新総裁による新たな日銀体制が発足する。
10年に渡った黒田体制は終了したが、黒田さんは自らの体制を振り返って、異次元緩和に関してはデフレ脱却に成功し、日本経済の潜在的な力が十分発揮出来たと言う意味で成功だったと胸を張るが、果たしてこの10年間の我が国の経済成長はそれを反映しているのであろうか?

確かに異次元緩和により金利は下がって円高から円安へと為替相場は動き、また株価は凡そ2倍上昇したが、長期金利の硬直や日銀のバランスシートの膨張などの副作用も招いた。

そもそもイールド・カーブ・コントロール政策(YCC.)により長期金利上昇を抑える事は市場原理に反する。
長期金利は市場参加者の債券の自由な売買により価格=利率が決まるべきであり、中央銀行が金利上昇を防ぐ為に一定のレベルで買い続けるなどは全く無謀な政策であるとしか言えない。

植田新総裁は表立ってはYCC.に対して露骨な批判は避けてはいるが、かつてはYCC.に関して“YCC.は金利の微調整には向かない仕組みで、金利上限を小幅に引き上げれば市場は次の引き上げを予想して大量の国債売りを招く恐れがある。”と批判的な意見を述べておられる。

市場参加者の多くが、“全くその通りである。”と思っていた筈であるが、黒田さんはYCC.を押し通した。

“物事を論理的に考え、市場との対話を重視する。”学者出身の新総裁が遅かれ早かれYCC.の変更、ないし撤廃を打ち出す可能性は高かろう。

今週は米国3月の消費者物価指数(CPI.)の発表が12日(水)に有り、市場予想は前年同月比で5.1%と前月の6.0%からの好転を期待するが、食料品やエネルギーを除いたコアのCPI.は前月の5.5%から5.6%へ悪化すると見る。

全体のCPI.の継続的な下落に重きを置くか、それともコア・CPI.の上昇を重視するか?

再びその結果に一喜一憂することになりそうであるが、中長期的に見ると米国の利上げ打ち止めから利下げへの移行、そして我が国の緩和政策からの脱却から鑑みてドル安&円高への動きとなると思われる。


今週のテクニカル分析の見立てはレンジを予想するが、133.50を上切れば134.50までの上昇を見込み、逆に131.50を下切れば130.50までの再度の下落の可能性も有る。