投資心理学は、投資家が取引をする時に影響する心理的要因や市場動向に対する投資家心理を研究する学問です。投資家の心理状況は、投資の損益に大きな影響を与えることがあります。この記事では投資心理学が投資家に与える影響や、投資で失敗しないためにはどのようにすればいいのかについて解説していきます。
投資に失敗する原因
行動経済学は、心理学や経済学をもとに、実証実験を行いながら個人の意思決定や行動に関する理論構築を行う学問です。そして、投資心理学は、投資家が取引をする際に生じる心理的な作用を分析し、それらの心の動きが投資の成果やパフォーマンスにどのような影響を与えるかを研究する学問です。両者は密接に関連しており、現在では、投資家の行動や意思決定のメカニズムを行動経済学的の観点から考察する研究なども進められています。
まずは具体例を挙げながら、「投資に失敗する原因」を探っていきます。
非合理的な判断をしてしまう「損失回避性」
大きな損失を抱える原因として、「ナンピン買い」(保有株の価格が下落した際に買い増しをして購入時の平均単価を下げること)があります。たとえばある株を1株1,000円で100株購入し、その後 株価が800円まで下がったとしましょう。
その時、100株ナンピン買いをすると、平均取得価格は900円になります。しかし株価がさらに 700円まで下落した場合、元の100株の含み損は3万円(300円×100株)となり、追加で購入した100株の含み損は1万円(100円×100株)となります。
このように、ナンピン買いをして平均取得単価を下げても、含み損が大きくなってしまうというリスクがあるのです。
ナンピン買いをしてしまう理由は、同じ金額でも損失の苦痛は利益の喜びの2倍という「損失回避性」にあります。ナンピン買いをする投資家は損失回避性の影響によって、株価が下がった時に損失を取り戻すことを優先してしまい、リスクを考えずに取引してしまう傾向があるのです。
ナンピン買いをする時は、銘柄企業の業績や財務状況などをきちんと調べて、その銘柄を本当に買うべきか、長期的に成長する銘柄であるのかを十分に検討する必要があります。ナンピン買いで平均取得単価を下げても、大きな損失を抱える恐れがあるという点を十分に理解し、慎重に取引するようにしてください。
SNSで生じる「認知的不協和」
SNSの情報を参考にしている人も多いと思います。私も常にTwitterで投資情報をチェックしています。投資のSNSには、さまざまな意見や情報がリアルタイムに投稿されて取引の参考になるからです。しかし、時には自分の意見とは異なる情報が多く出回ることで、自分の持っている認識との間に「認知的不協和」が生じることがあります。
たとえば、あなたが「A社の業績は将来的に伸び、株価は上昇する」と考えていたとします。しかし、SNS上で多くの投稿者が「A社の業績は悪化し、今後の株価は下落する可能性がある」と投稿している場合、自分の認識と情報が異なるために不安を抱くことになるのです。
このような認知的不協和が生じると、投資家は自信を失い、多くの場合、決断力が低下します。日頃から、信頼性の高い情報(新聞社のニュースや豊富な知識とバランスのとれた分析力を有する金融の専門家の意見など)を頼りに自身の投資判断力を磨いていくことで、SNSで拡散される根拠不明の情報に影響されることは少なくなるでしょう。
投資を焦ってしまう「ハーディング効果」
「ハーディング効果」とは、周りの人と同じ行動をとって安心感を得ようとする心理現象です。多くの人は、自分1人で意思決定をしたり、物事を合理的に判断するよりも、周りの人に合わせて行動することを好みます。こうした行動は、集団から外れたくないといった心理によって引き起こされます。ですから、周りの人が“間違った行動”をとっていても、自分1人だけが合理的な判断をして行動することは難しいのです。
ある投資商品の価格が急激に上昇している時は、その価格がさらに上がると期待する投資家が増えます。そして、そんな期待が過剰に膨らんで市場にバブルが発生することがあります。2000年に起こった「ITバブル」も、このような過剰な期待が拡大した結果で、ハーディング効果の一例です。多くの投資家は、インターネット関連の企業が将来的に大きな利益を上げると期待して、株式を買っていたのです。しかし、IT企業のほとんどが実際には利益を上げることができず、結果としてバブルは崩壊しました。
このような過ちが起きた原因はなんなのでしょう。投資家が周囲の人の行動に影響され、自分自身で投資判断を行わなかったためです。当時のIT関連銘柄ではPER(株価収益率)数十倍はざらでした。それほど株価が上昇していたのです。
投資で失敗しないために大切な3つの方法
感情に左右されずに投資を成功させるための3つの方法を紹介します
投資プランを決める
投資プランとは、投資をする目的や期間、リスク許容度を明らかにしてどのような資産や銘柄に投資するかを決めることです。たとえば、あなたが40歳台で退職後の生活費の確保を目的に投資を始めた場合、1,000万円など目標額に到達するためにどの程度のリターンが必要なのかを計算し、リスク許容度に応じたポートフォリオ(株式や債券などの資産配分)を決めるようにします。意見を聞くのであれば信頼できるプロフェッショナルに、情報を参考にするなら、根拠(ソース)のしっかりした情報(いまなら新聞や専門的な金融/経済メディア、あるいは信頼性の高い一次情報など)に助けを求めつつ、自分自身できちんとしたプランを立てることが大切です。
損切りルールを決める
損切りルールとは、保有している銘柄がある一定の損失に達した場合、損失を抑えるために売却することです。たとえば投資している株式が購入した価格から10%下がった場合に売却すると決めておきます。
損切りをすることで、大きな損失を防ぐことができます。損切りを行う時は感情に左右されずに、客観的に行うことが大切です。そして、損切りをする時は「逆指値注文」を利用するようにしましょう。
逆指値注文は、指定された価格(トリガー価格)に到達した時点で、通常の指値注文や成行注文が発注されます。逆指値注文を設定しておくことで、あらかじめ決めた損切りルールによって自動的に売却が行われます。マーケットが急変している時でも、逆指値注文を利用することによって迅速に売却できるというメリットがあるのです。
短期投資と長期投資を区別する
短期投資とは、数時間から数カ月程度の期間で利益を狙う投資手法です。1日で売買を完結させるデイトレードや、数日~数カ月ポジションを持つスイングトレードが短期取引に該当します。
一方の長期投資とは、数年から数十年といった長期で資産を増やすことを目的とした投資手法です。長期的に成長が見込まれる企業の株式に投資をしたり、株価指数などに連動するインデックスファンドに投資する手法が長期投資です。
短期投資は、以下の理由から感情に左右されてしまう恐れがあります。
(1)日々のマーケットの変動に影響をうける
短期投資では、日々のニュースや価格変動が直接的な利益や損失につながります。ですから 投資家は短期的な値動きに一喜一憂し、 感情的な決定を下す恐れがあります。
(2)頻繁に取引するようになる
短期投資では取引を頻繁に行うことが一般的です。そのため、マーケットを常に監視し、ポジション調整を行う必要があります。頻繁に取引をしていると感情が介入しやすくなり、冷静な判断ができなくなる可能性があります。
(3)損失が怖くなる
短期取引では損失回避性の心理が働きやすくなります。その心理が投資判断に影響を与え、感情に左右された取引を行ってしまう可能性があるのです。
短期投資は、日々の株価の変動によって利益や損失が生じます。株価が一時的に下落した場合、感情的に取引して損失を回避しようと焦って売却してしまうことがあります。しかし、その後株価が回復し、長期的には利益が出ることもあります。短期的な損失を恐れて、長期的な利益を逃してしまうことがあるのです。
一方、長期投資では、株価の短期的な変動に左右されず、企業の成長性や資産の本質的な価値に注目します。成長が見込まれる企業の株式に投資して、長期的な利益を追求することができるのです。短期的な株価の変動による損失に対しても冷静に対処し、長期的な利益を考えて投資するようにしてください。
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この記事では投資で失敗してしまう原因の「損失回避性」「認知的不協和」「ハーディング効果」について解説しました。投資の成果は感情に大きく左右されるので、あらかじめ投資プランをきちんと立て、リスクマネジメントや資金管理、感情をコントロールすることが大切です。投資心理学を学び、投資成績の向上を目指してください。
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