ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「新生日銀は円安スタート。貿易赤字改善進まず。今週は貿易統計と生保運用方針」

ドル円=131-136、ユーロ円=144-149、ユーロドル=1.07-1.12

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨9位(8位)、株価9位(9位)、新生日銀は円安スタート。貿易赤字改善進まず。今週は貿易統計と生保運用方針」
 日銀新総裁デビューの先週は円は最弱となった。月間でも年間でも12通貨中9位。昨年は11位が定位置だったので、それよりも上位だが、日本同様に「持たざる国」の欧州3通貨(スイス、ユーロ、ポンド)が上位に位置していることに比べると安い。

 やはり貿易赤字の改善が遅れていることが大きい。3月までは推定で5兆円超えの赤字が予想される。昨年は約3兆円の赤字だった。原油安で輸入が減少しているが、輸出も同様に伸びず赤字の改善が見られない。そこにOPECプラスの予想外の減産があり原油価格が上昇してきているので今後も貿易赤字の減少も不透明だ。

 米国の物価低下や景気指標の悪化でドルが売られているが、新生日銀も大規模金融緩和、YCCを当面維持するとしているので欧州通貨のような伸びはない。円買い介入という需給面の調整効果もなくなり、ドル円はこじっかりか。クロス円も強い。今週は3月貿易統計や生保の運用方針発表などにも注目したい。

*米ドル「通貨7位(7位)、株価(NYダウ)16位(16位)、中くらいの強さなり。欧州通貨より弱く、円より強い」
 ドルは対円で強く、ドル高に見えるが、週間8位、月間7位、年間7位と全体では強くはない。まだインフレが低下し続けているが、2%の目標には遠いのでFRBは引き締め継続だが、一方では金融不安懸念、景気後退懸念があるので伸びない。

 5月の0.25%の利上げ確率は4分の3以上とみられている。ただFRB見方も分かれている。アトランタ連銀ボスティック総裁は、インフレがFRBの2%目標に着実に回帰していくと予想し、0.25%の利上げを1回実施すれば現行の引き締めを終了できるとの見方を示した。シカゴ連銀グールスビー総裁は、FRBが過去1年間にわたり実施してきた急速な利上げの効果が経済全体に浸透しているため、米国で今年、リセッションが起こる可能性は確かにあると述べた。
 FRBの金融引き締めと同様、あるいはそれ以上の金融引き締めを行う可能性のある欧州通貨は強く、緩和維持の日本の円は弱い。

 米国の直近のファンダメンタルズもそれほど弱くはない。注目の米銀決算は金融不安がある中で、金利上昇による利益押上げで好決算で始まった。23年1QのアトランタGDPナウも4月14日付で年率換算2.5%成長と4月10ひの2.2%を上回ってきた。イエレン財務長官も、経済が冷え込み、インフレが緩和するにつれて、米国が景気後退と失業率の急激な上昇を回避できるとの楽観的な見方を維持した。今週は最重要指標はないが中程度の指標が多く発表される。

*ユーロ「通貨3位(4位)、株価3位(3位)DAX)、ユーロ強し、ただボリバン2σ上限は達成。ECB0.25か0.5か」
 ユーロも株価も強いユーロ圏。ただユーロドル、ユーロ円も2σ上限に達しているので少しは気をつけたい。FRBと比べれば、やや金融引き締め感が強いことと、経常収支の黒字化がユーロを支えている。経済指標は強くはないが去年と比べると回復の道を歩んでいる。直近は原油価格の上昇があるが、昨年と比べると下落している原油価格も支えだ。日本よりエネルギーの海外依存度も低い。

 5月4日にECB理事会がある。5月3日のFOMCの翌日となる。ラガルドECB総裁は、必要に応じ高いインフレに対して行動する用意があると言明した。現在の市場の緊張を注意深く監視し続けており、ユーロ圏の物価と金融の安定を維持するため必要な対応をする用意がある。ユーロ圏の銀行セクターの資本と流動性ポジションは強固で、同セクターには耐性がある。いずれにしてもECBには、金融政策の円滑な効果波及を守るために、必要に応じてユーロ圏の金融システムに流動性支援を提供する手段が完全に備わっているとした。
 
3月もSVBやクレディスイスの金融破たんがありながら0.5%の利上げに踏み切った。今回も0.5%利上げの予想もあるが、センテノ・ポルトガル中銀総裁は 利上げの停止または0.25%の利上げは、5月の会議で可能なオプションで、0.25%以上引き上げる理由はないと抵抗している。

*ポンド「通貨4位(2位)、株価12位(12位)、伸び悩み」
 伸び悩んだ。先週は9位。年間でも2位から4位へ後退。対ドルでは年初来高値を更新し1.2546をつけるも、対ドル、対円でボリバン2σ上限を達成したこともあり1.24台前半へ反落。

 経済指標も冴えなかった。2月のGDPは前月比横ばい。公務員によるストライキが響き、予想の0.1%増を下回った。ただ1月GDPの前月比伸び率は0.3%増から0.4%増に上方修正された。この修正により1Qのリセッション入りには3月GDPが0.6%減となる必要があり、その可能性は低下した。英中銀のチーフエコノミスト、ピル氏は、2月のGDP統計を含むこのところの経済指標について英中銀の予想よりは良好だったものの「若干期待外れ」だったと述べた。 物価情勢については、インフレは想定より上下に振れる可能性があるとしながらも、昨年のエネルギー価格の高騰の前年比の数字に対する影響がなくなるため、2Qは低下が予想されるとの見方を示した。IMFは、23年のGDP見通しを0.3%のマイナス成長とした。1月のマイナス0.6%から改善を見込むものの、G20の中で最大の落ち込み幅になると予測した。

 次回英中銀政策金利は5月11日。ECB、FRB見てからの開催となる。今の所の予想は0.25%の利上げ。今週は3月消費者物価の発表。予想は9.8%、前月は10.4%、コア予想は6.0%.前月は6.2%。

*豪ドル「通貨8位(10位)、株価15位(15位)、中銀コメント、経済指標改善で持ちなおし。今週はRBA議事要旨とPMI」
 下げ止まって10位から8位へ浮上、年初来では円を抜いた。RBAは政策金利を据え置いて豪ドルが小緩んだが、ロウ総裁は金利据え置き決定は利上げ終了を示唆するものではなく、インフレ抑制にさらなる引き締めが必要になる可能性はあると述べたことで豪ドルは下げ止まった。

 その後、4月消費者信頼感は昨年6月以来の高水準、3月豪企業景況感指数はプラス16と前月から1ポイント低下したものの、長期平均は大幅に上回り底堅さを維持し豪ドルは底堅くなった。さらに3月雇用統計も豪ドルを支えた。就業者数が2カ月連続で予想を上回った。失業率も50年ぶり低水準近辺となった。就業者数は前月比5.3万人増加、予想は2万人増。原油急騰で他のエネルギー価格の上昇を導いたことも豪ドルを支えた。
今週はRBA議事要旨と4月製造業・サービス業PMIを注目したい。

*NZドル「通貨10位(9位)、株価13位(13位)、高いインフレ弱い経済指標」
 弱含んだ。対豪ドルでも弱い。4月第1週にRBAが据え置き、NZ中銀が予想の0.25%を上回る0.5%の利上げで強含んだが先週は反落した。強かった豪の経済指標で豪ドルが買われ、対価としてNZドルが売られた。元々高インフレでありながらリセッションも予想されていることもある。3月の製造業パフォーマンス指数(PMI)は48.1と、前月の51.7から低下し、景況の悪化を示した。長期平均も引き続き大幅に下回った。 新規受注は46.7と、前月の51.5から低下した。1Qの企業信頼感指数はマイナス66で前回のマイナス70より改善したが、依然低水準だ。主要輸出品の乳製品価格も下落が続いている。

ロバートソン財務相は、住宅の需要と供給のバランスが再調整されている兆候が見られるとした。国際環境の悪化は、経済が直面する最大のリスク、サイクロンの被害の悪影響が残っているとした。ただ財政状況は良好で、債務はGDPの20%未満と述べた。
 次回5月24日の金融政策会合で政策金利の0.25%の引き上げが予想されている。インフレ率は7.2%と、目標1-3%の上限を大きく上回っている。それでもリセッション入りが予測され苦しいところだ。

テクニカル分析

*ドル円「日足、週足、雲の下に落ちず。5日線、20日線上向く」
日足、ボリバン中位上抜く。雲下に落ちず雲中。雲下で下ヒゲでる。4月13日-14日の上昇ラインがサポート。4月12日-14の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、雲の下に落ちず雲中で推移。中位を越える。5週線、20週線下向き。4月3日週-10日週の上昇ラインがサポート。3月6日週-4月10日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、3月陰転。4月も陰線スタートも先週陰転。5か月移動平均線は下向いたまま。2月-3月の上昇ラインがサポート。22年11月-23年3月の下降ラインが上値抵抗。
年足、2023年はここまで陽線。3月20日週は陰転するも月末週には再び陽転。2022年は大陽線に終わるも、長い上ヒゲで圧力を残した。21年-22年、12年-21年の上昇ラインがサポート。

*ユーロドル「4週連続陽線で一時ボリバン3σ上限まで上昇」
日足、2σ上限から反落。ボリバン上位で推移。4月12日-14日の上昇ラインがサポート。22年3月31日-23年4月14日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、4週連続陽線で一時ボリバン3σ上限まで上昇。雲の上。4月3日週-10日週の上昇ラインがサポート。22年2月7日週-23年4月10日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、ボリバン中位越え。23年2月-3月の下降ラインを上抜く。21年5月-6月の下降ラインが上値抵抗。22年11月-23年3月の上昇ラインがサポート。5か月線上向き、下向きの20か月線を上抜く。
年足、年足陽転。20年‐21年の上昇ラインを下抜く。2022年は2年連続陰線もボリバン2σ下限到達し反発。下ヒゲが長く反発力あり。02年-22年の上昇ラインがサポート。21年‐22年の下降ラインが上値抵抗。

*ユーロ円「7日連続陽線」
日足、4週連続陽線でボリバン2σ上限の沿って上昇。4月13日-14日の上昇ラインがサポート。22年10月21日-23年4月10日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、ボリバン2σ上限越える。4月3日週-10日週の上昇ラインがサポート。22年10月17日週-23年4月10週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向く。
月足、ボリバン上位で推移。22年10月-23年3月の下降ラインを上抜く。ボリバン2σ上限は150.96。23年1月-3月の上昇ラインがサポート。
年足、3年連続陽線。今年も陽線。20年-22年の上昇ラインがサポート。08年-22年の下降ラインを上抜くか。

情報提供元:FX湘南投資グループ
本レポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたしま す。また、本レポートに記載された意見や予測等は、今後予告なしに変更されることがございます。 なお、本レポートにより利用者の皆様に生じたいかなる損害についても、FX湘南投資グループグならびに株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承願います。