先週4月27日~28日に掛けて注目の日銀政策決定会合が開催された。
市場では筆者を含め、特に海外勢から何らかの政策変更が有るのではないかとの期待が有ったが、会合では大規模な金融緩和政策の維持を決めた。
ドル・円相場は会合後の政策発表内容や植田総裁の記者会見での一部の発言に反応して133.50割れを二度試す場面が有ったが、徐々にドル高&円安となり136円台迄上昇して週明けの東京市場では137円台を伺う展開となっている。
(4月28日正午から5月1日正午までのドル・円相場10分ローソク足。)
海外勢は植田新総裁の元、政策変更はAnytime soon.(なるべく早いうちに)と期待していたが、今回の会合後の“1998年以降の25年間を対象とした緩和策を1年から1年半掛けて多角的に評価するレビューを実施する。”を“えーっ、では政策変更は1年~1年半後になるの?”と早とちりした感が有る。
植田新総裁は記者会見で色々述べられたが、よく見てみると大変慎重ながら“現状は維持するが、必要とあらば政策変更は行いますよ。”と仰られている様な気がしてならない。
金融引き締めに積極的なことをタカ派的、逆に金融緩和に積極的なことをハト派的と言うが、勝手に発言をそのどちらかか、或いは中立かに分けてみた。
「今回の会合で金融政策の先行き指針を一部修正して、整理・明確化した」=タカ派的
「拙速な引き締めで2%物価目標が達成できないリスクの方が大きい」=ハト派的
「新型コロナ感染症に基づいた政策方針、政府の分類変更や経済などへの影響リスク低下したので整理した」=タカ派的
「四半世紀の政策レビュー、多角的に分析して今後の政策運営に有益な知見得るため」=中立
「足元のインフレ率はかなり高いが、今年度後半には2%下回る」=ハト派的
「物価、下がっていった後の反転上昇には様々な前提が必要で不確実性が高いとの声が政策委員には多い」=中立
「物価目標達成、ある程度の可能性見えてきているとの声が複数の委員からあった」=タカ派的
「政策レビュー、どういう種類の政策運営につながるか現時点で決まってない」=中立
「政策レビュー、内部の分析に加え外部の有識者招いた研究会や学者への個別ヒアリング・金融経済懇談会などの活用を検討」=中立
「政策レビュー、目先の政策変更に結び付けてやるものではない」=中立
「政策レビューを実施していても、政策変更の必要があれば実行していく」=タカ派的
「政策レビュー、途中経過を発表しても政策変更に結びつくわけではない」=中立
「欧米の金融不安を受けた市場環境は一応安定しているが、経済の不確実性の高まりとして織り込んで今日の決定になった」=中立
「米中堅銀行への不安残る、今後それがどう表れるか注意深く見守らないといけない」=中立
「金融緩和の副作用も認めざるを得ない、注意深く分析進めつつできる限り情報発信していきたい」=タカ派的
「副作用対策として、今時点で何かを考えているわけではない」=中立
「企業収益など経済変数の動き見ていく中で、物価2%持続的に達成されると判断の可能性もある」=タカ派的
「非伝統的な政策のレビューとして、過去25年間を対象とするのは適切」=中立
「過去の時間軸政策や量的緩和検証することで、将来同じ状況になったときに知見が役に立つ」=中立
「YCCの副作用がまったくなくなったわけではない」=タカ派的
「金利ガイダンスの削除は、緩和を粘り強く続けるという文言の中で読み込むと整理したつもり」=タカ派的
「物価上昇は、賃金の上昇や企業収益の増大を伴う必要がある」=中立
「われわれの少し先のインフレ見通しはまだ自信の度合いが低い」=中立
「基調的なインフレ動向が安定的に2%実現までは、長短金利のイールドカーブ・コントロールを続ける」=ハト派的
「政策『レビュー』という用語は、近い将来の政策変更と結びつく点検・検証という言葉からは少し距離置いた」=中立
「展望リポートの2025年度コアCPIの+1.6%は少し低い」=中立
「短期の政策決定に必要な分析は毎回の政策決定会合で行っていく」=中立
「政策レビューの間に金融緩和の正常化始める可能性もゼロではない」=タカ派的
「長引く緩和の副作用をどう減少させていくかという点も政策レビューに含めていきたい」=タカ派的
「一時的な為替の変動にはコメント控えたい」=中立
この30の発言を分けて見ると、タカ派的10、ハト派的3、中立17となり、ドル・円相場を133円台から136円台まで持ち上げる程、円にとって弱気な決定会合ではなかったのではないかと思うのであるが、如何だろうか?
今週は2日~3日にFOMC.が開催され、市場は0.25%の利上げを見込んでいる。
焦点はFOMC.後の記者会見でパウエルFRB.議長が、果たして今回の利上げで打ち止めとなるのか、或いは更なる利上げを仄めかすのかが注目される。
週末、米大手地銀のファースト・リパブリック銀行の株価暴落、及び買収案が報道された。
この銀行にはつい数週間前に大手米銀による預金預け入れが行われたが、シリコンバレー銀行破綻の余波による預金流出は止まらず、2008年のリーマン・ショック以降最大の米銀破綻になる可能性が大である。
問題はファースト・リパブリック銀行で事が収まるのか、或いは未だ問題を抱えた中小銀行が存在するかである。
筆者は未だ未だ存在すると思っており、金融当局の監督・規制が益々強まると予想する。
その結果は銀行の与信の圧縮であり、当然米国経済の足を引っ張る。
そして未だヴェールに包まれているシャドー・バンキング(影の銀行)と呼ばれる表に出ていない銀行以外の与信についても懸念が広がる可能性が大である。
現在は日銀の金融政策の変更なし、そしてFRB.による追加利上げによる金利差拡大を受けてドル・円相場の堅調な地合いは続くと思われるが、その後大きく下げるであろうとの考えは変えていない。
ドル・ベア(ドルにとって弱気)の辛抱は未だ続く。
今週のテクニカル分析の見立ては前週の高値を上切ったことで更なる上昇を見込むが、買われ過ぎにも要注意。
パウエルFRB.議長の発言次第では135円割れのドル安も有り得る。