総括
FX「難題残る。されどインフレ懸念で政策金利は0.25%引き上げか」南アランド見通し
「通貨最下位、株価9位」
「予想レンジ 南アランド6.7-7.2」
(ポイント)
*難題あり(停電、グレーリスト入り、中国・ロシアへの接近で対米関係悪化)
*今冬は前例のないレベルの計画停電か
*今年はここまで最弱通貨
*失業率、小売売上が悪化
*今週は消費者物価と政策金利
*AGOAの更新が不透明
*8月の南アでBRICS会議にプーチン拘束は?
*対中貿易深耕
*3月貿易黒字は縮小
*海外からの投資を呼び込む
*アマゾンが南アに投資
*IMFは成長見通し引き下げ
*南アの最大貿易相手国は輸出入ともに中国
*インフレ率は23年は5.4%、24年は4.8%と予想(中銀)
(最弱通貨継続)
先週は12通貨中9位、今月はここまで最下位、年初来でも最下位と、なかなか浮上出来ない。引き続き、難題は改善せず、ランドは弱い。先行きが見えない停電問題、マネーロンダリングでグレーリスト入りで資金流失、中国・ロシアへの接近で対米関係悪化など、南アにとって悪い材料が続く。
(今冬は前例のないレベルの計画停電か)
国営電力会社エスコムは5月18日、今冬は前例のないレベルの計画停電を実施せざるを得ない恐れがあると述べた。
老朽化した石炭火力発電所の頻繁な故障のため、1日10時間を超える計画停電に直面している。冬季に向け暖房の使用が始まると受給ギャップが拡大し、送電網に一段の圧力がかかるとみられている。
エスコムは「大変困難な冬になるだろう」と述べた。
これまでは最大6000MWの電力削減を求めるステージ6までの実施だったが、この幹部は今冬には最大8000MWの削減を求め停電時間が32時間毎に16時間となるステージ8を実施する可能性があると述べた。それでも効果が出なければ、送電網の崩壊を防ぐため完全停電に踏み切る可能性もあるという。
(経済指標は悪化)
経済指標悪化。1Qの失業率が32.9%と、2022年4Qの32.7%から上昇した。3月小売売上高は前年同月比1.6%減。予想は0.7%減だった。
(今週は消費者物価と政策金利決定)
5月24日には4月消費者物価の発表があり予想は7%、前月は7.1%。5月25日の政策会合では0.25%利上げが予想されている。インフレ抑制のため、過去1年半でレポ金利を計4.25%引き上げている。エコノミスト予想ではインフレ率は今年が5.9%、来年が4.9%、2025年が4.6%と、目標の3-6%の中間に近づいていく。 経済成長率は今年0.2%に減速した後、来年は1.3%に持ち直すとの予想が示された。
テクニカル分析(ランド/円)
ボリバン内へ反発も、下位で推移
日足、先週は3σ下限からボリバン内へ戻す。5月18日-19日の上昇ラインがサポート。5月9日-19日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き、20日線下向き。
週足、一時3σ下限まで急落。5月8日週-15日週の上昇ラインがサポート。5月1日週-8日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線下向き。
月足、雲上限越えきれずボリバン2σ下限へ下落。20年5月-23年5月の上昇ラインがサポート。23年1月-5月の下降ラインが上値抵抗。5か月線、20か月線は下向き。
年足、21年、22年は短い陽線。23年は陰転。20年-22年の上昇ラインを下抜く。08年-22年の下降ラインが上値抵抗。
喜望峰
ロシアへの武器供与疑惑、経済界は貿易への影響を懸念
ラマポーザ大統領は5月11日、駐南ア米国大使がロシアへの武器供与疑惑を公の場で言及したことに対し、裏付けがない中でコメントしたことは遺憾であり、両国のパートナーシップ精神を損なうものだと表明した。米大使は、2025年に期限を迎えるAGOAがその後更新されるかどうかは不明とし、その理由の1つはロシアとの関係があるとした。
南アの経済界は、南ア政府の政治的姿勢と今後のビジネスへの影響を懸念する声明を出した。南ア経済団体連合会(BUSA)は「今回の疑惑は、AGOAを通じた米国市場への継続的アクセスに悪影響を与える可能性が高い」とし、ビジネス・リーダーシップ・サウスアフリカ(BLSA)も「AGOAへの影響だけでなく、EUがロシアに関する枠組みを見直す際、EUと南アの貿易協定も影響を受ける可能性がある」と述べた(JETRO)