米政府の債務は上昇の一途を辿っており、その債務上限は2001年度の5倍超に拡大しています。これまで米国債がデフォルトに陥ったケースは一度もありませんが、それは第二次世界大戦以降、一時停止を含めた債務上限の見直しを100回以上も繰り返しているからです。投資家は現在の米国の予算策定プロセスをどのように評価すべきでしょうか。また、この問題の本質をどのように整理したらよいでしょうか(ZUU online編集部)。
国の「債務上限」とは
本稿が公開される頃(2023年5月30日)には何らかの展開が起きているかもしれないが、執筆時点(5月23日)においては、残念ながら「米国債務上限問題」の解決については、その糸口さえ見つかっておらず、米国債のデフォルトを含む最悪の事態へ向かう可能性を完全には排除できていない(*)。
(*)編集部注:バイデン米大統領と野党・共和党のマッカーシー下院議長は5月28日、米政府の法定債務上限の効力を2025年1月まで停止する合意案を明らかにしました。
国の「債務上限」とは、端的に言えば政府支出(歳出)に対して政府収入(歳入)が不足する場合に起きる国債発行額の上限金額のことだ。一般の家計にたとえていうなら、生活費に対して給与が不足している場合に「銀行から借りられる限度額」というイメージだ。生活費の不足を補う喩えをしたことで、少なからずそれが「健全な家計のやり繰りの仕方」ではないというイメージも伝わると思うが、必ずしも一時的に何らかの理由によって借り入れを起こすこと自体が家計の健全性を損ねるわけではないのと同様、国の「債務上限」についても同じことが言える。
米国の債務上限は2021年12月に約31兆3,815億ドルに引上げられているが、歴史を紐解くと1980年は9,351億ドルに過ぎなかった。その後、何度も債務上限は引き上げられてきたが、米国債の格下げ問題も起きた2011年8月には14兆2,940億ドルから16兆3,940億ドルに引き上げられている。すなわち、1980年からの30年余りで約15倍になり、そしてその後の20年余りでさらに約2倍になったという計算だ。