トルコリラ見通し
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「エルドアン大統領勝利。リラ化政策継続。市場は失望か」トルコリラ見通し

 (通貨11位、株価20位)   

予想レンジ トルコリラ/円6.4-7.4

(ポイント)
*大統領選はエルドアン大統領が勝利。リラ化政策継続。市場は失望か
*大統領は高インフレでも低金利政策を約束
*NATOとロシアの間で動く
*対ドルで安値更新、対円で安値圏で推移
*貿易赤字ではリラ安が続く
*隣国ギリシャも貿易赤字国であったがユーロ入りで経済は安定
*大統領選挙後の市場はどう動いたか
*今週は貿易収支、GDP、製造業PMIの発表
*銀行の融資には債券購入を義務付け=長期金利低下
*議会は与党連合が過半数獲得
*4月の消費者物価は50%割れ
*リラも株価も弱い2023年
*地震でも世銀が成長率見通しを上方修正
*リラ安防衛策はリラ預金増に繋がるがリラ安を抑えきれない
*国内預金が外貨預金を上回る=リラ化政策で
*今年は建国100周年


(強権政治継続。高インフレでも利下げとリラ化政策)
 トルコ大統領選は5月28日に決選投票が行われ、エルドアン大統領が、野党統一候補クルチダルオール氏の得票を上回り勝利した。約20年にわたりトルコを率いたエルドアン大統領の政権がさらに5年間続くことになる。
 エルドアン大統領の得票率は52.1%、クルチダルオール氏は47.9%となり、国民の分断を浮き彫りにした。クルチダルオール氏は「近年で最も不公正な選挙」と主張したが、結果に異議を唱えることはしなかった。
エルドアン大統領はアンカラで勝利演説し、全ての対立を忘れて国家全体の価値感と理想の下で結束するよう呼びかけたが、その後にトーンを変えて野党を性的少数者(LGBT)寄りなどと批判し、クルチダルオール氏がテロリストに味方していると根拠を示さず主張した。

また、インフレがトルコの最も喫緊な課題だと述べた。ただ高金利でも低金利政策を継続する。それと、貿易赤字によるリラ安は国民に外貨預金よりリラ預金を薦め外貨預金を行った時より損失を被る時は損失を補填する「リラ化政策」も継続する。
 外貨預金を受けたり、融資を拡大する銀行には国債保有を義務付け金利低下を狙う。

(ハザマその1、プーチン大統領、バイデン大統領が祝辞)
NATO加盟国はエルドアン氏がロシアのプーチン大統領と近い関係にあることに警戒を強めていたため、クルチダルオール氏の敗北に失望するとみられる。
プーチン大統領はエルドアン氏大統領を「親愛なる友」と呼んで祝意を伝えた。
バイデン米大統領はツイッターに「NATO同盟国として2国間の問題や共通の国際的課題について引き続き協力することを楽しみにしている」と投稿した。

エルドアン氏は結果判明後、イスタンブールで支持者に「きょうの勝者はトルコだけだ」とし、「あと5年間、国を治める責任を再び与えてくれた国民に感謝する」と述べた。
 選挙戦でエルドアン大統領は、民族主義的で保守的な政策で有権者にアピールしていた。
 一方のクルチダルオール氏は、民主主義の重要性などを指摘し、変革を訴えた。同氏は、権威主義的な政権を変えようとする人々の意思が投票により示されたと述べた。

(エルドアン大統領勝利後の為替、株価、長期金利は)
・為替、リラ円は7.04から6.96へ1.14%下落、対ドルでは19.9702から20.1753へリラが1.03%下落
・株価(イスタンブール100)4501.73から4768.56へ4.1%上昇
・10年国債利回り 9.18%から9.04%へ低下

(政策金利は据え置き)
 トルコ中銀は5月25日、政策金利を8.5%に据え置いた。据え置きは3カ月連続で予想通り。中銀は2月、甚大な被害を出した大地震後の経済を支援するため政策金利を0.5%引き下げた。
 昨年、85%を超えたインフレ率は低下し、4月は43.7%だった。
中銀は、インフレの基調は引き続き改善したと指摘するとともに、地震による需給不均衡の影響を注意深く監視していると述べた。

市場は、インフレ率が再び上向くと予想している。ただ、エルドアン大統領の意向で今後も金利は据え置かれると見込んでいる。
 市場はトルコ経済は現在のマクロ経済の不均衡に対処するため、今よりもずっと高い金利と現行政策からの迅速な転換を切実に必要としているが、エルドアン大統領の政策ではかなわない。

(今週は貿易収支、GDP、製造業PMIの発表)
 今週は4月貿易収支、1Q・GDP、5月製造業PMIの発表がある。5月経済信頼感は103.7で前月の102.2を上回った。

テクニカル分析(トルコリラ/円)

雲中維持。ボリバン中位越える

 日足、雲中維持。ボリバン中位越える。5月12日-26日の上昇ラインがサポート。5月26日-29日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線下向き。
 週足、ボリバン3σ下限からは反発。ボリバン中位。5月8日週-22日週の上昇ラインがサポート。3月6日週-5月22日週の下降ラインが上値抵抗。5週線下向き、20週線上向き。
 月足、21年12月-23年5月の上昇ラインがサポート。21年12月-23年5月の下降ラインが上値抵抗。
 年足、8年連続陰線。その間52円から6円台へ沈む。今年は僅かに陽転していたが3月陰転。ただ5月は円より強く、年足も陽転したり陰転したりめまぐるしい。

トルコリラ見通し
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

メルハバ

ハザマその2、スウェーデンとトルコ、NATO加盟交渉

 スウェーデンのNATO加盟を巡り、両国が近日中に会談する予定。スウェーデン外務省が発表した。スウェーデンのビルストロム外相は当初、6月1日にオスロで開催されるNATO外相会談でトルコのチャブシオール外相と面会する予定としていた。しかし、チャブシオール氏が外相会談に出席しないこととなり、二者会談は見送られたという。それでもビルストロム氏の広報担当者は、会談は「近いうちに」行われるとの見通しを示した。
 スウェーデンとフィンランドは昨年、NATO加盟を申請した。フィンランドは4月にNATOへ正式加盟したが、スウェーデンの加盟にはトルコとハンガリーが難色を示している。(ロイター)

情報提供元:FX湘南投資グループ
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