主要通貨ペア(ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円、ポンド/円)について前営業日の値動きをわかりやすく解説し、今後の見通しをお届けします。
作成日時 :2023年6月16日9時00分
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
目次
▼15日(木)の為替相場
(1):本邦貿易収支 22カ月連続の赤字
(2):強い豪雇用統計でRBA利上げ期待高まる
(3):中国経済指標は伸びが鈍化
(4):ECB利上げ及び7月の追加利上げを示唆
(5):米労働市場に軟化の兆候
(6):クロス円 軒並み高値更新
▼15日(木)の株・債券・商品市場
▼外為注文情報/ ▼本日の見通し/ ▼ドル/円の見通し:天井感を払拭できるかが焦点/ ▼注目の経済指標/ ▼注目のイベント
15日(木)の為替相場
期間:15日(木)午前6時10分~16日(金)午前5時55分 ※チャートは30分足(日本時間表示) 出所:外為どっとコム
(1):本邦貿易収支 22カ月連続の赤字
日本5月貿易収支は1兆3725億円の赤字と、赤字額は市場予想(1兆2868億円)より多かった。貿易赤字は22カ月連続。原油安などを背景に輸入は前年比で減少したが、海外経済の停滞などで輸出もさえなかった。
(2):強い豪雇用統計でRBA利上げ期待高まる
豪5月雇用統計は新規雇用者数が7.59万人増と予想(1.75万人増)を大幅に上回った。失業率は3.6%と予想および前月の3.7%を下回った。労働参加率は66.9%で過去最高を記録。市場予想(66.7%)も上回った。これを受けて豪政策金利先物が織り込む7月の25bp(0.25%)利上げの確率は50%前後に上昇。利上げ期待で豪ドルは上昇した。
(3):中国経済指標は伸びが鈍化
中国5月鉱工業生産は前年比+3.5%で予想と一致。同小売売上高は前年比+12.7%と予想(+13.7%)を下回った。いずれも前月から伸びが鈍化(前月:+5.6%、+18.4%)した。なお、中国人民銀行(PBOC)はこれより前に、中期貸出制度(MLF)の1年物金利を2.75%から2.65%に引き下げて景気を下支えする姿勢を示した。
(4):ECB利上げ及び7月の追加利上げを示唆
欧州中銀(ECB)は大方の予想通りに主要政策金利を3.75%から4.00%に引き上げた。中銀預金金利も3.25%から3.50%に引き上げた。声明では「金利を十分に景気抑制的な水準にすることを確実にする」と表明。スタッフ予測では2025年までの全期間でコアインフレ率の見通しを上方修正した。ラガルドECB総裁はその後の会見で「7月に利上げを続ける可能性が非常に高い。(利上げの)停止やスキップは全く議論していないし、考え始めることもしていない」と強調した。前日に利上げを見送った米連邦準備制度理事会(FRB)との対比からユーロ高・ドル安が進行したが、同時にドル/円が弱含んだためユーロ/円は一時伸び悩んだ。
(5):米労働市場に軟化の兆候
米5月小売売上高は前月比+0.3%と予想(-0.2%)に反して増加。自動車を除いた売上高は前月比+0.1で予想と一致した。同時に発表された米新規失業保険申請件数は26.2万件と市場予想(24.5万件)を上回った。消費需要の底堅さが示された一方、労働市場には軟化の兆候が見られた。ドル/円は、米長期金利の低下やユーロ高・ドル安の動きにつれて弱含んだ。
(6):クロス円 軒並み高値更新
NYダウ平均の上げ幅が500ドルに迫るなど米国株が上昇する中、クロス円が上値を拡大した。ユーロ/円が2008年以来15年ぶりの高値となる153.68円前後まで上伸した他、豪ドル/円は9カ月ぶりに96.73円前後まで続伸。ポンド/円もおよそ7年半ぶりに179.39円前後まで上昇した。ドル/円は米長期金利の低下を受けたドル売りと、クロス円の上昇による円売りが交錯したため140円台前半で動きが鈍った。
15日(木)の株・債券・商品市場
ドル/円 外為注文情報(FX板情報・オーダー状況)
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人気通貨ペア 本日の予想レンジ
ドル/円の見通し:天井感を払拭できるかが焦点
昨日のドル/円は高値更新後に上げ幅を縮小した。日銀がこの日から始まった金融政策決定会合で大規模緩和を維持する見通しが強まる中、海外主要中銀との政策スタンスの違いを意識した円売りで一時141.50円前後まで上伸。昨年11月以来の高値を更新したが、欧米市場では欧州中銀(ECB)の利上げを受けたユーロ高や米長期金利の低下を背景にドル売りが優勢となり140円台前半へと押し戻された。日足はかろうじて陽線引けを確保したものの、長い上ヒゲが目立つローソク足で、足型は天井を暗示する「トンカチ」の様だ。
本日は日銀の金融政策発表でこうした天井感を払拭できるかが焦点となりそうだ。ただ、市場は日銀の現状維持を織り込み済みだろう。現状維持を発表しても物価見通しを改定する次回7月会合でイールドカーブ・コントロール(YCC)の修正・撤廃に踏み切るとの観測がくすぶり続けるであろうことも踏まえると、強い円売り材料にはなりにくそうだ。ドル/円は、本日の終値で週足一目均衡表の雲上限(140.65円付近)を上回れないようだと、来週以降に調整ムードが広がる可能性がある。
注目の経済指標:日銀金融政策決定会合
注目のイベント:植田日銀総裁発言
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1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。
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