「ZEH賃貸」の付加価値とは?投資用として購入したいZEH住宅の事例を紹介
(画像=Jonatan/stock.adobe.com)

本コラムでは、ZEH住宅を投資用として購入した場合の付加価値と実際に建築された物件の事例を紹介する。

目次

  1. 投資物件におけるZEHとは?
  2. ZEH住宅が注目を集めている
  3. ZEHにすることで得られる付加価値
  4. ZEH住宅の事例
  5. SDGsにも貢献できるZEH賃貸を検討しよう

投資物件におけるZEHとは?

ZEHとは「Net Zero Energy House」の略で、国土交通省の見解によると以下の内容を指す。

外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅

出典:国土交通省「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅関連事業(補助金)について」※この先は外部サイトに遷移します。

2018年度から集合住宅もZEH住宅補助金の対象になったことから、ZEHマンション(ZEH-M)の普及が進んでいることをご存じだろうか。ZEHを投資物件として考える場合は、有力な選択肢になりつつある。

ZEHマンションの種類は以下の4つだ。

・ZEH-M
・Nearly ZEH-M
・ZEH-M Ready
・ZEH-M Oriented

評価の基準は、共用部を含む住棟全体の省エネルギー(以下省エネ)率で区分される。再生可能エネルギー(再エネ)を含んで100%以上の省エネ率がないとZEH-Mとして認定されないため、取得すれば大きな付加価値になることが期待できるのだ。しかし、まだZEHマンションの認知度は低く「投資対象としてはこれから」という段階である。

今後ZEHの物件が過半数を超えるくらい普及すれば差別化にはならなくなるため、投資を考えるなら早いほうが有利と考えることもできるだろう。

出典:環境省公式Webサイト「COOL CHICE」※この先は外部サイトに遷移します。より株式会社ZUU作成
(出典:環境省公式Webサイト「COOL CHICE」※この先は外部サイトに遷移します。より株式会社ZUU作成)

ZEH住宅が注目を集めている

今後、ZEHマンションは以下の2つの理由により増える可能性が高い。

  • エネルギー不足問題の深刻化
  • 日本政府の再生可能エネルギー推進

<エネルギー不足問題の深刻化>
理由の1つ目は、ウクライナ戦争をきっかけとするエネルギー不足問題が深刻化し、再びZEH住宅が注目を集めていることだ。経済産業省がまとめた「令和3年度(2021年度)エネルギー需給実績(速報)」※この先は外部サイトに遷移します。によると、日本は発電電力量のうち火力(LNG、石油、石炭)が72.9%を占めている。その多くを輸入に頼っている日本は、世界的なエネルギー価格高騰の影響をまともに受けているのが実情だ。エネルギー自給率は13.4%にすぎない。

※エネルギー自給率:国民生活や経済活動に必要な一次エネルギーのうち、自国内で産出・確保できる比率
(画像=※エネルギー自給率:国民生活や経済活動に必要な一次エネルギーのうち、自国内で産出・確保できる比率)

出典:経済産業省資源エネルギー庁 広報パンフレット「日本のエネルギー2023 年 2 月発行」※この先は外部サイトに遷移します。より株式会社ZUU作成

<日本政府の再生可能エネルギー推進>
理由の2つ目は、日本政府の再生可能エネルギー推進という追い風が吹いていることだ。日本政府の第6次エネルギー基本計画(2021年10月~)では、2030年までに再生可能エネルギーの比率を36~38%にすることを目指し、そのうち太陽光を14~16%まで高めるとしている。LNG、石油、石炭の化石燃料の比率を減らすことでカーボンニュートラル(大気中に排出される二酸化炭素の量と吸収される量が等しく、全体としてゼロになっている状態)目標達成につなげたい考えだ。

<日本の全発電電力量に占める自然エネルギーの割合の推移>

2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
水力 7.6% 7.7% 7.8% 7.4% 7.9% 7.8% 7.1%
バイオマス 1.9% 2.0% 2.3% 2.7% 3.2% 4.1% 4.6%
地熱 0.22% 0.21% 0.22% 0.24% 0.25% 0.25% 0.25%
風力 0.54% 0.60% 0.69% 0.77% 0.86% 0.88% 0.85%
太陽光 4.4% 5.6% 6.5% 7.4% 8.5% 9.3% 9.9%
自然エネルギー 14.7% 16.1% 17.4% 18.5% 20.8% 22.4% 22.7%
VRE 5.0% 6.2% 7.2% 8.2% 9.4% 10.2% 10.8%
化石燃料 83.6% 79.7% 77.9% 75.0% 74.9% 71.7% 72.4%
石炭 30.8% 30.2% 28.2% 27.8% 27.6% 26.5% 27.8%
LNG 38.9% 38.4% 37.4% 36.0% 35.4% 31.7% 29.9%
原子力 1.7% 2.8% 4.7% 6.5% 4.3% 5.9% 4.8%

出典:環境NPO法人 環境エネルギー政策研究所※この先は外部サイトに遷移します。「2022年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)」より株式会社ZUU作成

またZEH住宅に対する補助金は、マンションも対象になるため、マンションビルダーには恩恵が大きい。今後ZEHマンションの開発が増えれば、投資家にとっても選択できる物件が増えるため、マンション業界全体の活性化が期待できる。

ZEHにすることで得られる付加価値

マンションをZEHにすることで、さまざまな付加価値を得ることが可能だ。例えば資産価値の向上や競合との差別化、退去率の低下などはオーナーにとって魅力的なメリットといえる。

<資産価値の向上が期待できる>
ZEH賃貸にすることで物件の資産価値が高くなることが期待できる。ただしZEHマンションは、2018年以降に竣工した物件が多い傾向にあるため、投資対象としての認知度がまだ高くない。そのためリセール市場に出回った際、通常のマンションより高いバリューを発揮できるかは不透明だ。現状は、期待する段階であるが、投資家の認知度が高まるにつれて資産価値が高くなる可能性は十分にあるだろう。

<競合との差別化を図れる>
ZEH賃貸がまだ少数であれば、競合物件と差別化できることも大きな付加価値といえる。ZEH要件を満たした物件には、入居者募集の広告に「ZEH-Mマーク」を表示することが可能だ。SDGs(持続可能な開発目標)に配慮した物件であることをアピールできるため、エコ意識の高いユーザーから選択されやすくなるだろう。

<退去率の低下が期待できる>
ZEHマンションは、断熱性に優れているため、暑い時期も寒い時期も入居者が快適に住むことができる。結果的に退去率の低下や空室対策となるため、オーナーにとって付加価値が高い。特に一般のマンションからZEHマンションに転居したユーザーは、違いを実感しやすいだろう。つまりZEHにすることで入居率が高くなり、退去率が低くなる理想的な効果が期待できるのだ。

ZEH住宅の事例

具体的にZEH住宅は、どのような形で開発が行われるのだろうか。ここでは、ZEH住宅の開発に取り組む事業者の事例を2つ紹介しよう。

<フィリックス株式会社>
フィリックス株式会社(愛知県名古屋市)が建築した名古屋市昭和区にある3階建て総戸数9戸のアパートは「Nearly ZEH-M」仕様のZEHマンションだ。物件の屋根に設置した太陽光パネルで発電できるだけでなく高性能の断熱材や高効率型の給湯器などを導入することで省エネ性能を高め、一次エネルギー消費量を75%削減し「Nearly ZEH-M」としての基準をクリアしている。

<株式会社アーバネットコーポレーション、株式会社メイクス>
投資用ワンルームマンション「メイクス氷川台アジールコート」(東京都練馬区早宮)は、マンションビルダー、不動産販売会社、銀行が3社協働で開発した「ZEH-M Oriented」仕様のZEHマンションだ。本物件では、以下の3社が協働している。

株式会社アーバネットコーポレーション
(東京都千代田区)
投資用マンションの設計・開発
株式会社メイクス
(東京都渋谷区)
個人投資家への販売
オリックス銀行株式会社
(東京都港区)
株式会社アーバネットコーポレーション向けの開発資金や、個人投資家の物件購入資金に対して貸付金利を優遇した融資を実行

これにより首都圏初(株式会社アーバネットコーポレーション調べ)となる「ZEH-M Oriented」仕様のZEHマンションが実現した。

SDGsにも貢献できるZEH賃貸を検討しよう

不動産投資における最大のリスクは空室の発生だ。しかしZEH賃貸にすることで一般のマンションよりも空室リスクが低い経営を行うことが期待できる。さらにSDGsにも貢献できるZEH賃貸は「カーボンニュートラルの達成で社会貢献も果たしたい」という志のあるオーナーにとって検討の価値がある投資対象になるだろう。

特に複数物件を保有するオーナーであれば試験的にZEH賃貸に投資してみることも有効な戦略の一つだ。既存の保有物件でベースを固めつつZEH賃貸への取り組みをすることにより、メリットが大きいと判断できれば将来を考えZEHの比率を高めていくのもよいだろう。

(提供:manabu不動産投資

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