2024年3月期に、2期連続の営業減益のセコム<9735>、1期で営業増益に転じる綜合警備保障(ALSOK)<2331>という構図が現れる。

警備サービス大手の両社は2023年3月期にそろって営業減益に陥った。2024年3月期はALSOKが1期で増益に転じるのに対し、セコムは連続で減益に陥るのだ。営業利益は本業の稼ぐ力を表す。両社の差は何なのか。

値上げがポイントに

セコムは主力のセキュリティーサービスで採算性が悪化したことや、積極的な投資による販管費の増加に加え、火災報知設備などの防災事業でも採算が悪化したことなどから、2023年3月期に2期ぶりの営業減益となった。

ALSOKは2021年に開催された東京オリンピック関連の売り上げが無くなったほか、システム関連費用の増加などから2023年3月期に6期ぶりの営業減益となった。

2024年3月期については、セコムは前年度比4.0%増の1兆1450億円の売上高を見込むが、営業利益は同3.3%少ない1322億円にとどまる。

生産性向上のための投資や、海外でのプロモーション(販促)活動の強化などに取り組むほか、地理空間情報サービス事業(航空機や車両などで測量した情報を解析する事業)が減収減益になるのが、営業利益が2期連続で減少する要因だ。

M&A Online

(画像=2024/3は予想、「M&A Online」より引用)

一方、ALSOKの2024年3月期は売上高5125億円、営業利益386億円を見込む。これは同4.1%の増収、同4.3%の営業増益となる。同社では「コスト増に対応した価格転嫁などに適切に対応する」としており、期中に値上げを行う計画だ。

また同社では2023年8月までにインドネシアの人材派遣や警備事業を手がけるPT.Shield-On Service Tbk(SOS)を子会社化する。SOSの2022年12月期は売上高142億2100万円、営業利益3億7600万円。当初の業績予想にこの数字は含まれておらず、2024年3月期の上振れ要因となる。

M&Aについては、セコムも2022年7月に270億円強を投じて、中堅警備業のセノン(2021年3月期は売上高343億3100万円、営業利益16億3400万円)を子会社化しており、この数字がフルに加わるが、これは業績予想に含まれているため上振れ効果は見込めない。

M&A Online

(画像=2024/3は予想、「M&A Online」より引用)

両社ともにコストアップが収益を圧迫する予想だが、値上げで対応するALSOKが一足先に増益に転じることになるようだ。

ただセコムは値上げについて言及していないが、期中に価格改定に踏み切ることも考えられる。そうなると両社の差はなくなる可能性がある。2024年3月期は値上げがポイントになるかもしれない。

文:M&A Online