百貨店といえば、催事やセールなどを知らせる巨大な懸垂幕(垂れ幕)がいくつも建物外壁を飾っているのが見慣れた光景だ。ところが、労働組合によるストライキに伴い、8月31日の営業を全館で取りやめた西武池袋本店(東京都豊島区)では、その懸垂幕が一斉に姿を消した。

普段は8本の懸垂幕が掛かる

西武池袋本店では通常、本館(9階建て)正面の2階から7階付近にかけて長さ15メートルを超える懸垂幕が掛かる。前日までは8本の懸垂幕が設置されていたが、スト決行を受け、急きょ、しまい込まれた形だ。

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(画像=「懸垂幕」が掛かる普段の西武池袋本店(8月29日撮影)、「M&A Online」より引用)

大手百貨店は正月休みの元日、2日などを除き、ほぼ年中無休で営業している。正月休みの際も新年を祝うかのように懸垂幕が設けられているが、今回はストを理由とする前例のない臨時休業だけに、異例の対応がとられたと思われる。

実際、百貨店のスト自体は1962年の阪神百貨店(大阪市)から61年ぶりとされ、西武池袋本店にとっても1940年に武蔵野デパートとして開業以来、ストは今回が初めてだ。

百貨店の臨時休業で記憶に新しいのは新型コロナ感染症の影響が広がった2020年。緊急事態宣言下、政府は商業施設に対して休業を要請したが、それでも百貨店各社は生活必需品の食料品や化粧品などの売場に限って営業を続けた。

同じ日、セブン&アイが「そごう・西武」売却を決議

西武池袋本店は百貨店大手の「そごう・西武」の旗艦店。親会社のセブン&アイ・ホールディングス(HD)が業績低迷が続くそごう・西武を米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに今年2月に売却する予定だったが、これまで時期が2度延期されていた。

西武池袋本店などには家電量販店「ヨドバシカメラ」の出店が計画されているため、雇用維持や百貨店事業への影響を懸念するそごう・西武労組が売却に反発。労使の話し合いは不調に終わり、ついにストに突入したのだ。

これに対し、セブン&アイはストを横目に31日午前、臨時取締役会を開き、フォートレスへの売却を決議した。これにより、9月1日をもってそごう・西武の全株式が譲渡される。

西武池袋本店は9月1日に営業を再開する。ただ、ストの影響で一部通常の営業と異なる売場があるとしている。建物正面には懸垂幕が復活する運びだ。

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(画像=「全館臨時閉館」のお知らせ、「M&A Online」より引用)

文:M&A Online