台風13号が関東・東海地方を直撃し、8日朝から大雨に見舞われた。台風接近と言えば、鉄道の「計画運休」が風物詩となっている。だが、台風13号に関しては8日の関東・東海地方への上陸が予報されていたにもかかわらず、一部路線を除いて計画運休は発動されなかった。8月15日に紀伊半島へ上陸して関西地方を縦断した台風7号では、東海道新幹線で計画運休が実施されている。なぜ、台風13号では大規模な計画運休は見送られたのか?
台風直撃で7号は計画運休、13号では平常運転
台風7号上陸前日の8月14日、JR東海は翌日の始発から名古屋―新大阪間で終日運休すると発表。東京―名古屋間についても「ひかり」全便は運休とし、「のぞみ」も1時間4本程度に減便すると決めた。JR西日本も山陽新幹線の新大阪―岡山間で終日の計画運休を実施している。
ところが関東・東海への台風直撃予報が出ている9月8日の東海道新幹線は平常通りの運行だ。計画運休を実施しているのは、伊東線と久留里線の全線と、東海道本線の小田原−熱海間、青梅線の青梅−奥多摩間、八高線の高麗川−寄居間に留まっている。利用客の少ない区間ばかりで、通勤やビジネスには大きな影響は出なかった。
そうなると「台風を口実に、儲からない路線を計画運休したのではないか」と勘ぐりたくもなる。しかし、JR東海・西日本はお盆のUターンラッシュの書き入れ時に新幹線を計画運休しており、「儲からない路線を計画運休にしている」わけではない。では、なぜ台風の直撃で計画運休の対応が分かれたのか?
台風による計画運休の判断基準には「風」と「雨」がある。そのうち基準がはっきりしているのが「風」だ。JR東日本の場合、風速20~25mで25km以下の速度規制、25m以上で運転中止となる。鉄道各社も同様の基準を設けており、風速25m超の予報で計画運休が発動される仕組みだ。
強風は「一律運休」、大雨では「路線ごとの判断」
台風7号の場合は計画運休前日に最大風速が35m、最大瞬間風速は50mを記録し、中心から半径130キロ以内では風速25m以上の暴風が吹いていた。だから風を基準に東海道新幹線の計画運休が決まったのである。一方、台風13号は「雨台風」で、前日の風は最大風速18m、最大瞬間風速25mと、運転中止基準を下回っていた。
もちろん雨も計画運休の判断材料になるが、風と違い路線によって事情が異なる。一般に1時間あたり40mm以上、継続300mm以上の大雨で運転中止となる。しかし、崖(がけ)崩れや河川の増水などが懸念される路線では、もっと少ない雨量で運転が中止される。台風13号で計画運休が実施されたのは、いずれも崖崩れが懸念される山間区間だ。
一方、東海道新幹線は、ほとんどが平野ルートを通過しているため崖崩れのリスクは少なく、高架で在来線よりも高い位置にあるため河川増水の影響も受けにくい。つまり「雨台風」には強い路線なのだ。山手線や京浜東北線をはじめとする都心の高規格在来線も、同様の理由で大雨の影響は受けにくい。「風台風」なのか「雨台風」なのかで、計画運休は予見できる。
ただ、相当な豪雨が予想される場合は、「雨台風」でも新幹線の計画運休が発動される可能性は高い。計画運休を免(まぬが)れ、新幹線で目的地に到着できても、在来線やバスが運休になっていたりタクシーがつかまらなかったりして移動に困るケースもある。台風接近時は計画運休の有無にかかわらず、予定を変更できる余裕を持っておく方がよいだろう。
文:M&A Online