大学や高校、官公庁、企業などの給食・食堂運営を手がけるホーユー(広島市)が、自己破産を検討していることが分かった。しかし、経営危機にあるのは同社だけではない。売上高10億円未満の中小給食事業者の、実に4分の1近い23.8%が赤字に追い込まれているという。

深刻な物価高、値上げもままならず…

ホーユーは1994年7月に設立。中・四国地方を皮切りに、北は東北地方から南は九州地方まで営業所を展開している。だが、コロナ禍による食堂閉鎖で売り上げが減少していたのに加え、コロナ後の物価高騰や人手不足に伴う人件費の向上で収益が悪化した。

経営破綻の引き金になったのは入札制度だ。契約期間中は値上げもままならず、経営破綻に追い込まれた。報道によると、食堂運営がストップした自治体に対してホーユーから値上げの要請はなかったようだ。一方、同社の山浦芳樹社長は入札制度下では値上げ要請をしたところで回答まで1〜2カ月はかかり、1食当たり30円の値上げがせいぜいで手間暇がかかるだけだから要請しなかったという。

山浦社長は、柔軟な値上げができない入札制度による給食事業では原材料費や光熱費、人件費の高騰などでビジネスモデルは崩壊していると見ている。そのため自主再建は難しいとして、自己破産による廃業を選択したのだ。


入札制度の「罠」で、業界全体が大幅な減益に

全国の給食事業者も同様の問題に直面している。東京商工リサーチによると、給食業界の2022年度売上高合計は大企業(11社)が前期比2.7%増の5698億6200万円、中小企業(206社)が同4.5%増の6393億7300万円と、コロナ禍の終焉(しゅうえん)で回復基調にある。一方、同年度の利益合計は大企業が同18.7%減の159億4200万円、中小企業が同27.3%減の131億3900万円と、いずれも大幅減益となった。

コロナ禍による需要減の流れを受けて入札の過当競争が生じ、仕事量の確保を最優先して低額で落札をしたのが原因だ。実際に運営を始めたところ、物価高と人件費の高騰という大幅なコスト増で利益が出ない状況に陥ったと見られる。入札制度の「罠」に陥ったと言えそうだ。大企業はスケールメリットでコストを吸収できるが、中小企業では難しい現状が浮き彫りになった。

給食業界では生き残りをかけたM&Aが活発になりつつある。上場企業によるM&Aだけでも、今年2月に三井物産<8031>が給食大手のエームサービス(東京都港区)の株式50%を合弁相手の米アラマーク(ペンシルベニア州)から取得し、完全子会社化すると発表。8月にはヤマタネ<9305>が丸紅<8002>傘下で弁当・給食向け業務用食品卸のショクカイを、69億4600万円で子会社化すると発表した。

大手傘下の給食関連企業ですら、M&Aによる規模拡大で生き残ろうとしているのだ。今後は大手、中小・中堅の規模を問わず、M&Aによる給食ビジネスの業界再編が加速するのは間違いないだろう。

文:M&A Online