9月19日を期限とする焼津水産化学工業<2812>へのTOB(株式公開買い付け)は成立が絶望的になっている。株価が買付価格を上回る水準で推移しているためだ。株価上昇の発端は旧村上ファンド系投資会社による焼津水産株の大量取得。焼津水産に対しては国内投資ファンドのJ‐STAR(東京都千代田区)が完全子会社を目的にTOBを実施しているが、成立に望みを託すためには買付価格の引き上げなどが必要となる。

南青山不動産、すでに10%近く保有

焼津水産に対するTOBの期間は8月7日~9月19日で、J‐STARが提示した買付価格は1137円。これに対し、焼津水産株の先週末(9月15日)の終値は1201円。大半の株主にとってはTOBに応募するよりも市場で売却した方が有利な状態となっている。

買付価格の1137円はTOB公表前日の終値823円に38%余りのプレミアム(上乗せ)を加えて設定。ところが、焼津水産の株価はTOB開始翌日に1142円と買付価格を超え、9月6日には1258円を付け、以降は1200円前後の高値圏で推移。TOB成立が終始、困難視される中、買い付け最終日を迎えることになったのだ。

TOBの場合、株価は買付価格の手前ぎりぎりまでサヤ寄せされるパターンが通例だが、今回は様相を異にした。一連の株価の動きに影響を与えたとみられるのが旧村上ファンド系投資会社の南青山不動産(東京都港区)の参戦だ。

南青山不動産が焼津水産株5.96%(共同保有を含む)を新規保有したことが9月7日に提出した大量保有報告書で判明。その後、南青山不動産は2度、焼津水産株を追加取得し、保有割合を9.81%まで高めている。

TOB維持、それとも不調を容認か

焼津水産は主力である天然調味料の国内市場が縮小に向かう中、ファンドの傘下で経営管理体制の強化や海外での事業展開を進め、業界再編を先導できる体制づくりを目指している。

同社は株式の店頭登録、名証2部上場を経て2001年に東証1部に上場(2022年4月に東証スタンダード市場に移行)したが、非公開化し、いったん株式市場から退場する。J‐STARによる買付代金は最大130億円強。

今回のTOBは焼津水産の賛同を得て行われているだけに、不成立に終われば、焼津水産自身にとっても想定外の事態となる。TOBを主導するJ‐STARとしてはひとまず買付期間を延長したうえで、買付価格の引き上げの検討に動くことになりそうだ。

ただ、買付価格を引き上げれば、旧村上系の南青山不動産側がさらに株式を追加取得することは必至で、買収合戦の様相を呈することになる。一方、TOBが不調に終わった場合、旧村上系が大株主として残り、自社株買いなどの株主提案が待ち構え、焼津水産としても八方塞がりになりかねない。

◎進行中のTOB一覧(株価は9月15日の終値)

TOBの対象会社買付価格株価期間
イー・ガーディアン 3000円 2629円8/2~10/2
焼津水産化学工業 1137円 1201円8/7~9/19
東芝 4620円 4608円8/8~9/20
ロックペイント 1415円 1413円8/9~9/21
東京日産コンピュータシステム 1748円 1744円8/10~9/25
キョウデン  600円 599円8/10~9/25
大建工業 3000円 3045円8/14~10/10
AmidAホールディングス   951円 947円8/14~9/25
三栄建築設計 2025円 2021円8/17~9/28
REVOLUTION      6円 17円8/28~9/25
HCSホールディングス 1800円 1793円9/1~10/16
星光PMC 1070円 1066円9/4~10/17
インテージホールディングス 2400円 2200円9/7~10/16
JMDC 5700円 5370円9/11~10/10
TAKISAWA 2600円 2592円9/14~11/13

文:M&A Online