日本電子<6951>の株価が13日に一時、前日終値よりも189円高い4789円(同日終値は前日比98円高の4698円)をつけた。とはいえ、同社自身にに株価が動く材料があったわけではない。実は、この値上がりの背景には米インテルの子会社株売却がある。
株式譲渡に伴い、TSMCへの装置納入が加速するとの観測
インテルが12日に株式売却を発表した子会社は、半導体の回路パターンを描くマルチビーム描画装置(MBM)などを手がけるオーストリアのIMSナノファブリケーション(本社ブルン・アム・ゲビルゲ)。同社株の10%を約43億ドル(約6360億円)で、2023年第4四半期(10〜12月)中に売却する。インテルは引き続き過半数の株式を保有し、IMSを子会社のまま維持する。
これだけなら日本電子の株価は動かない。問題は売却先だ。半導体ファウンドリー(受託製造)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、IMS株をインテルから取得する。TSMCがマイノリティー(少数)とはいえ、IMSの株主となったことで、同社が取り扱っているマルチビーム描画装置を積極的に導入する可能性が高い。そうでなければ、わざわざIMSにマイノリティー出資をするメリットがないからだ。
このIMSは、日本電子の主要取引先の一つ。日本電子はIMS経由でマルチビームマスク描画装置を半導体メーカーに供給している。今期、日本電子は3ナノメートル対応でスループット(処理能力)が約2倍に向上した新機種を発売。すでに日本電子はTSMCとの取引はあるが、IMSがTSMC向けの供給を増やせばマルチビーム描画装置のさらなる販売増が見込める。それに期待して日本電子の株価が上昇したようだ。
今年5月に東海東京調査センターが日本電子の営業利益は2023年3月期の241億5500万円から、2025年3月期に250億円、2026年3月期には290億円になると予想している。今回、同社と深い関係があるIMSがTSMCと資本関係を持つことで、業績予想がさらに上ぶれする可能性もありそうだ。
文:M&A Online