低価格食品販売を手がける「業務スーパー」と「ラ・ムー」の業績の足取りに差が生じている。

「業務スーパー」を展開する神戸物産<3038>の2023年10月期の営業利益は過去最高を更新する見通しで、「ラ・ムー」などを展開する大黒天物産<2791>の2024年5月期の営業利益は35%を超える大幅な増益となるものの、過去最高を更新した2021年5月期の70%ほどに留まる見込み。

両社はともに独自の商品を展開し特徴ある店作りを行うことで消費者の支持を集め、コロナ禍を乗り越えてきた。業績の足取りの差はどこから生じたのか。

店舗数は1032店に

神戸物産の2023年10月期は売上高4400億円(前年度比8.2%増)、営業利益297億円(同6.8%増)の増収増益見込み。2023年10月期第3四半期時点の進捗率は売上高で76.9%、営業利益で78.3%のところまで進んでおり、大きなブレはなさそうだ。

第3四半期は主力の業務スーパーが25店舗純増(出店34店舗、退店9店舗)し、総店舗数が1032店舗となったことや、プライベートブランド商品が多くのメディアで取り上げられたことなどから順調に推移した。

この結果2023年10月期通期では営業利益が過去最高を更新するほか、売上高も過去最高となる見通しだ。

M&A Online

(画像=2023/10は予想、「M&A Online」より引用)

コロナ禍前の水準に

大黒天物産の2024年5月期は売上高2572億円(同6.2%増)、営業利益61億円(同35.6%増)と増収大幅増益の見込み。

設備投資に伴うコストアップなどによって前年度に営業利益が前年度比47.3%もの減益となったが、今期はこうした要因が軽減されるために、大幅な増益となる。

ただ、過去最高となった2021年5月期の営業利益85億9900万円には届かない見込みで、コロナ禍の影響の少なかった2020年5月期(営業利益は59億3500万円)をわずかに上回る程度にとどまる。

M&A Online

(画像=2024/5は予想、「M&A Online」より引用)

消費者の節約志向が追い風に

最近のエネルギ―価格の上昇や円安による物価高になどより、消費者による低価格商品に対する需要は高まる一方だ。

大黒天物産は、地域最安値価格を目指すディスカウントストアとして店舗運営を行っており、改良を重ねた自社開発商品を投入し「高品質、低価格」な品ぞろえを行っている。

同社は2023年5月期に20店舗の新規出店と2店舗での建て替えや改装を実施。2024年5月期も15店舗の新規出店と6店舗の改装を計画しており、今後も同水準の出店や改装が見込まれる。

一方、神戸物産は「食の製販一体体制」構想のもと、食品工場の生産能力の増強や、独自商品の開発に積極的に取り組んでおり、ディスカウントショップの言葉は使っていないが、高品質で低価格な商品を数多く取りそろえている。

同社は売り上げの拡大に伴って利益率が改善する傾向があるため、毎年20店から40店の新規出店を計画しており、来期以降も増収による増益を目指す方針だ。

コストアップや出店などの要因で、両社の営業利益の推移を示すグラフの形は異なるが、物価高による消費者の節約志向が追い風になるのは共通していそうだ。

文:M&A Online