アレナビオ(茨城県守谷市)は筑波大学発のソーシャルビジネスベンチャー。同大地中海・北アフリカ研究センターが開発に取り組んでいる植物由来の有用成分を活用した機能性食品や化粧品原料などを商品化するため、2005年9月に設立した。発展途上国の振興と先進国の食を支える社会貢献ビジネスを展開している。
高ポリフェノールのチュニジア産オリーブを活用
同社は他の地域よりも高いポリフェノールを含むオリーブがチュニジアの乾燥地帯に自生していることに注目。2015年には「JICA BOPビジネス連携促進(現 SDGsビジネス調査)」に採択され、2年間にわたってチュニジア産オリーブの成分や市場にについて調査した。
同時に醤油醸造メーカーのヤマヒサ(香川県小豆島町)が持つオリーブ葉の成分を保ったまま乾燥させる技術を現地に移転し、チュニジア産オリーブを素材にした高付加価値商品の開発に成功している。
オリーブオイルではフルーティーで良質なエキストラバージンオリーブオイルや、希少な原生種からごく少量だけ採取できるオレアスターオイルなどの高付加価値商品を日本で販売中だ。
さらに同国産のオリーブ葉には、ポリフェノールの一種であるオレウロペインやヒドロキシチロソールが含まれている。これらの成分は同大の研究から抗菌、抗炎症、免疫力強化のほか、血管系や骨、生殖系を活性化する効果があることが分かった。
政府系機関から高い評価
ただ、それらが豊富に含まれているオリーブ葉とはいえ、乾燥や保管の方法によっては含有量が低下してしまう。そこで2019年7月に現地のハービオテックアロマ社と提携。日本の技術を活用して、含有量を維持したまま乾燥する技術を確立した。
さらに加工されたオリーブ葉に対して同大が250種類に及ぶ残留農薬検査を実施したところ、全く検出されなかったという。高機能で安全性が高いことが証明された同社のオリーブ葉は、サプリメントや魚・家畜の飼料としての活用拡大が期待されている。
ハービオテックアロマ社との提携に当たっては、アグリ(農業)ビジネスの研究成果を実業に活用できると評価した日本戦略投資(東京都千代田区)が90万ドル(約1億3500万円)を拠出した。
アレナビオは2017年にJETROアフリカビジネス実証事業、2018年には経産省間接補助事業「飛びだせJapan! 世界の成長マーケットへの展開支援補助金」事業に採択されるなど、政府系機関からの評価も高い。途上国と関わるビジネスでは、政府系機関の後押しは極めて重要だ。同社はこうした機関とタッグを組んだ強みを生かし、途上国振興と日本を結び、SDGs(持続可能な開発目標)の実現につながるソーシャルビジネスを強化していく。
文:M&A Online