TOPPANホールディングス<7911>と大日本印刷<7912>の印刷大手2社の2024年3月期の当期利益予想が、当初の減益から増益に反転する。
印刷業界はペーパーレス化の流れに加え、コロナ禍や原材料、エネルギー価格の高騰などが重なり厳しい環境下にあり、TOPPANと大日本はともに2期連続の当期減益を余儀なくされていた。
それが一転、リクルートホールディングス<6098>株の売却益を特別利益として計上することで、当期増益を見込んでいるのだ。ただ特別利益は一過性のものであり、長期的には厳しい環境に変わりはない。
このため両社はM&Aなどによって印刷以外の分野で事業拡大に取り組んでいる。特別利益に代わる新たなビジネスは何なのか。
2期ぶりの当期増益に
TOPPANはリクルートホールディングスが実施した自己株式のTOB(株式公開買付け)に応募し、2024年3月期第3四半期に投資有価証券売却益として402億円を計上する。
同社では当初、2024年3月期の当期利益を前年度比29.4%減の430億円と見込んでいたが、この特別利益の計上で同11.7%増の680億円に上方修正した。
大日本印刷もリクルートが実施した自己株式のTOBに応募し、2024年3月期に投資有価証券売却益として584億円を計上する。
同社も当初、2024年3月期の当期利益を前年度比23.0%減の660億円と見込んでいたが、この特別利益の計上で同2.7%増の880億円に上方修正した。両社ともに2期ぶりの当期増益となる。
特別利益に代わるビジネスは
TOPPANはM&Aによって2019年にドイツの大手建装材用化粧シートメーカーのINTERPRINTを、2021年に米国のパッケージメーカーInterFlexGroupを買収。さらに、2022年にインドの大手フィルムメーカーのMax Specialityと、タイの軟包装材メーカーMajend Makcsをそれぞれ傘下に収め、成長地域に積極的に参入してきた。
同社が2023年5月に発表した2026年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画でも、M&Aによって非連続な成長を目指すとしており、この中期経営計画中にもデジタルビジネスや包装材、建装材、半導体関連などの分野で新たなM&Aの実施が見込まれる。
大日本印刷も2023年5月に発表した中期経営計画で、液晶ディスプレイ用の光学フィルムや、半導体向けのフォトマスク、自動車用リチウムイオン電池のバッテリーパウチ(電池セルケース)など成長をけん引する事業に集中投資するとともに、M&Aにも積極的に取り組む方針を打ち出している。
来期以降、両社の特別利益に代わる新ビジネスは、今後のM&Aによってもたらされる可能性は低くはなさそうだ。
文:M&A Online