5兆円ではとても足りない最先端半導体投資
そうなると同社に対する投資家の期待は膨らまず、IPOによる多額の資金調達は難しくなる。同社が生産する演算用(ロジック)半導体は国内で生産されている汎用品の半導体と比べて単価は高くなるという。
国産半導体メーカーは旧スペックの半導体を低価格で供給することで収益を上げる、いわば「ジェネリック半導体」のビジネスモデルで生き残ってきた。最先端のロジック半導体で生き残るためにはオーダーメードとはいえ世界最先端の製品づくりが必要になる。
少なくとも2028年の試作開始時点で1.4ナノ半導体生産にめどをつけない限りは、現在の7周遅れが1〜2周遅れに改善されるだけだ。ジェネリック半導体を生産するには設備投資がかかり過ぎ、最先端の半導体を生産するには力不足という中途半端な状態になりかねない。
大手半導体メーカーの2023年の設備投資額をみると、TSMCは減額して280億〜320億ドル(約4兆1000億〜約4兆7000億円)、サムスンは53兆7000ウォン(約6兆円)だ。単年度でラピダスの工場新設に匹敵するか上回る設備投資をしているだけに、量で勝負しないとしても5兆円の投資規模では心もとない。
ラピダスが成果を出すためには、政府が同社に対して10兆円を超える巨額助成金を投入して、2025年までに1.4ナノ級ロジック半導体の量産を始める必要がありそうだ。それでも生産技術でキャッチアップできる保証はないが、少なくとも数兆円程度の助成では「日の丸半導体」が再び世界を席巻する未来は期待できないだろう。
文:M&A Online