定年後の「お金の問題」を考えたとき、公的年金だけでは心もとないというのは大半の人に共通する不安ではないでしょうか。
そこで退職金なども活用してアパート投資(経営)などの不動産投資を始めて、家賃収入で生活を安定させたいと考える人も多いことと思います。
しかし、失敗したらどうしようと不安にもなりますし、そもそもローンの審査に通るのか?といったように、不安や疑問は尽きません。
本記事では、定年後の不動産投資としてアパート投資にスポットを当て、メリットや注意点、より実現性を高めるために知っておくべきことを解説します。
- アパート投資は貯金や退職金を有効活用になる
- 不動産投資は、物件選びよりも不動産会社選びが重要
- メリットだけでなくデメリットやリスクも説明してくれる不動産会社はおすすめ
目次
定年後にアパート(不動産)投資を始めるメリット
最初に、定年後に不動産投資を始めることで得られるメリットを紹介します。
「安定した家賃収入」に期待している方は多いと思いますが、実際にはそれ以外にも多くのメリットがあります。
1.公的年金に安定収入を上乗せできる
おそらくほとんどの人が定年後のアパート投資に期待しているのが、家賃収入による老後資金問題の解消でしょう。
もちろんこのメリットは実際にありますし、何も老後だけのメリットではありません。
現役世代のうちから不動産投資に進出して本業以外の収入源を確保している人も多くいます。
「老後2,000万円問題」が話題になったことがありましたが、こうした問題が取り沙汰されるのも、老後資金に対する漠然とした不安があるからです。
アパート投資(経営)によって得られる家賃収入は、老後資金の不安を解消する大きな力になることでしょう。
2.貯蓄や退職金を有効活用できる
定年退職時に勤務先から退職金が入る見込みがある人は、退職金を自己資金とすることで不動産投資の現実味が増します。
厚生労働省のレポートによると大卒者の定年退職時に支払われる退職金の平均は約2,000万円です。
これに貯蓄を加えれば本格的な不動産投資が可能になるでしょう。
金利が引き上げられたとはいえ、定期預金の金利は依然としてゼロに近い状態です。
それなら退職金を有効活用する意味でも不動産投資は検討する価値があります。
3.老後の節税効果が期待できる
不動産投資には節税効果があります。
アパート経営が赤字であれば他の所得と損益通算ができます。
また、不動産を所有していることで経費計上できる減価償却費は、キャッシュの流出を伴わない「会計上の経費」です。
定年後も何か他の収入がある人は、アパート経営で節税メリットが期待できます。
4.管理を任せられるので高齢でも運営可能
アパートを所有して管理していくとなると、映画やドラマに出てくるような「大家さん」を想像するかもしれません。
今やこうした「大家さん」のイメージは過去のものとなっており、アパートなど所有物件の管理は専門管理会社に委託するのが一般的です。
管理会社に委託すれば手間がかからず、体力も必要ありません。
高齢になっても問題なくアパート経営を続けることができます。
5.相続対策になる
相続税は税率が高いことで知られているため、いかに課税対象の相続財産を少なくするかが節税のポイントです。
不動産は現金よりも評価額が低くなるため、相続税対策としての有効性が広く知られています。
しかも、アパートのように賃貸として提供している不動産だとさらに評価額が低くなるため、節税効果が大きくなります。
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定年後のアパート投資で知っておくべき注意点やリスク
とてもメリットの多い定年後のアパート投資ですが、もちろんメリットばかりではありません。
注意するべき点もあるので、ここでは定年後にアパート投資をするうえで、知っておくべき注意点やリスクを解説します。
1.不動産投資ローン(アパートローン)の年齢制限に引っ掛かる
不動産は高額商品なので、ローンを利用して購入するのが一般的です。
もちろん定年後のアパート投資であってもローンの利用が前提になるわけですが、そのときに注意したいのが金融機関によって設定されている年齢制限です。
65歳で定年退職をした直後にローンの申し込みをしたとしても決して若い年齢ではないので、年齢制限に引っ掛かってしまう可能性があります。
不動産投資向けのローン(アパートローン)は、融資時の年齢だけでなく完済時の年齢も考慮されます。
申し込み可能年齢はクリアしていても、完済時年齢が引っ掛かってしまうといったことも考えられます。
2.年齢条件をクリアしても年齢が審査に引っ掛かる
定年後の不動産投資ローンを組むとしたら、早くても60歳からの申し込みになるでしょう。
その場合、高齢であることが審査に影響を及ぼす可能性があり、仮に年齢条件をクリアしていても審査に通ることとイコールではありません。
そこで、審査に通りやすくする対策の必要性が高くなります。
対策として考えられるのは、収益性の高い物件選びや、自己資金の積み増しなどです。
3.団体信用生命保険の年齢制限に引っ掛かる
不動産投資ローンの多くは、団体信用生命保険(団信)への加入を条件としています。
団信とは、ローンを返済している人が亡くなったり、高度障害によって返済の継続が困難になったりした場合、保険金で残債を完済する保険のことです。
生命保険である以上、加入には年齢制限があります。
高齢になってからの申し込みだと団信の年齢制限に引っ掛かる可能性があります。
4.キャッシュフローが赤字になったら返済原資がない
不動産投資の収支は、家賃収入からローンの返済や諸経費の支払分を差し引いて決まります。
場合によってはキャッシュフローが赤字になることもありますが、定年後に赤字が出てしまうと「持ち出し」による返済の原資を確保しにくく、資金ショートのリスクが高まります。
アパート経営はリスクを伴う事業なので、不測の事態に備えて十分な資金的余裕を確保しておくことが重要です。
5.ローン審査が厳格化している
近年、銀行の不正融資問題や安易な事業計画で不動産投資に参入したものの、失敗する事例が多発していることから、金融機関のローン審査が厳格化しています。
そもそも高齢であることが不利になりやすいだけに、ローン審査には十分な対策が求められるでしょう。
定年後のローン審査に通りやすくするための対策4選
定年後の不動産投資ローンは、「高齢であること」を踏まえたうえでの対策が必要になります。
ここではローン審査に通りやすくするためにできることを4つ紹介します。
1.自己資金を多めに用意する
自己資金を多めに用意することで融資額を少なくすれば金融機関にとってのリスクは低くなるため、審査に通りやすくなります。
また、不動産投資ローンでは事業への本気度も審査の判断材料になることが多いため、自己資金を多く用意することで「本気度」も伝わりやすくなるでしょう。
2.収益性の高いアパート物件を選ぶ
金融機関が重視するのは、事業の安定性です。
そのためには、購入するアパートの収益性が高いこと、それが長期的に安定すると見込まれることが重要です。
この点は、利用者の返済能力のみが問われる住宅ローンとの大きな違いです。
では、収益性の高いアパートをどう選べばよいのでしょうか。
これについてはプロの目利きが重要になるので、次章の「物件選びよりも重要な不動産会社の選び方7つのポイント」で解説します。
3.資産価値が低下しにくいアパート物件を選ぶ
不動産投資は長期スパンの事業だけに、今だけでなく将来にわたって資産価値が低下しにくい物件を選ぶことも審査対策になります。
木造アパートの法定耐用年数は22年なので比較的短いですが、土地は劣化しません。
立地条件に恵まれた土地であれば資産価値が保持されやすく、審査にはプラス要因となります。
4.不動産会社を味方につける
物件の提案や販売をする不動産会社には、提携金融機関があります。
その不動産会社の信用力が審査に有利に働くことがあるため、不動産会社を味方につけるのも有効な対策です。
その意味では、提携金融機関の質・数が充実していることは不動産会社選びの比較項目となります。
不動産投資において不動産会社選びはとても重要なので、次章では不動産会社の選び方について解説します。
物件選びよりも重要な不動産会社の選び方7つのポイント
定年後に初めて不動産投資を参入しようと考えている人の中には、初心者だけに物件に対する目利きに自信がない人も多いことでしょう。
そこで重要になるのが、不動産会社選びです。
良い不動産会社から物件を購入すれば、アパートを購入後も、あなたの心強いパートナーとして、さまざまな面で助けてくれることでしょう。
不動産投資は、物件選びよりも不動産会社選びが重要といわれています。
ここでは不動産会社の選び方を7つのポイントで解説します。
1.不動産投資に強い
ひと口に不動産会社といっても、得意分野はさまざまです。
賃貸専門や仲介専門、買い取り専門など、個々の不動産会社には「強み」や「個性」があります。
定年後の不動産投資において選ぶべきは、不動産投資に強い、もしくは不動産投資を専門としている不動産会社です。
これは最初に考慮するべき第一条件です。
2.投資物件の取り扱い実績が豊富
投資物件を豊富に取り扱っていること、そしてこれまでに豊富な実績があることも重要な選び方のポイントです。
投資物件には特有のノウハウが求められますが、経験や実績が豊富であればノウハウも蓄積しているでしょうし、実践的な提案も期待できます。
投資に強い不動産会社の多くは公式サイトなどで実績を公開しています。
こうした情報を比較検討の材料にするのがよいでしょう。
3.入居率を確認する
不動産投資を専門としている不動産会社の場合、取り扱い物件の入居率は重要な指標です。
入居率は物件の集客力を示しているので、その不動産会社の目利きや提案力をうかがい知ることができます。
入居率を公開していない場合は、そもそも不動産投資にあまり強くないか、出せるだけの数字ではない可能性があるので、おすすめできる不動産会社とはいえません。
4.提携金融機関の質と数を確認
先ほど述べたように、提携している金融機関の質・数は不動産会社の実力を知るバロメーターになります。
金融機関は厳格な審査を経て融資をするわけですが、それは提携する不動産会社に対しても同様です。
いい加減なビジネスをしていたり、投資価値の低い物件ばかり取り扱っている不動産会社と提携しようとは思わないので、提携金融機関も重要な比較項目です。
5.物件所在地の周辺環境に詳しい
アパートの所在地周辺の環境は重要です。
購入する人も土地勘があるのが望ましいですが、土地勘のない場所に投資をするのであれば、不動産会社に依存することになります。
治安や住環境、迷惑施設の有無などは地図だけではわからないため、物件の提案をされた際には、担当者に土地勘があるか確認しましょう。
土地勘がなければわからないような周辺情報を聞いてみることで、担当者の知識をはかることができます。
6.リスクやデメリットも説明してくれる
不動産会社には、物件を販売したい意図があります。
売りたいあまりに、メリットばかりを強調してリスクやデメリットといった「不都合な情報」をあまり説明しないというのは不誠実というものです。
リスクやデメリットなどについても事前にしっかり説明してくれるのは誠意ある対応といえますし、購入後のリスク管理という意味でも極めて重要です。
7.ネット上の評判がいい
不動産会社選びの過程でおすすめしたいのが、ネット上の評判チェックです。
「不動産会社名 評判」などのキーワードで検索してみて、利用者がどんな印象を持っているのかを見てみましょう。
もっとも、ネット上の情報は玉石混交です。
すべてを鵜呑みにするべきではありませんが、同じような趣旨の悪い評価が多い場合は要注意です。
不動産投資の勉強方法4選
不動産投資は物件の管理を管理会社に委託できるなど、アウトソーシングできる部分が多いことも魅力の一つです。
しかしながら、何もかも人任せだと失敗するリスクが高まってしまうので、投資家自身が勉強することはとても重要です。
ここでは、不動産投資の勉強をするための方法を4つ紹介します。
1.書籍で勉強する
最初に、不動産投資のことを基礎からまんべんなく網羅している書籍を一冊読んでみて、概要をつかむことから始めてみましょう。
体系的に理解しておくことで、以後収集する情報を理解しやすくなります。
不動産投資のことを体系的に学ぶのであれば、初心者向きの書籍が最適だと思います。
2.不動産投資のセミナーに参加してみる
投資物件を取り扱っている不動産会社の中には、セミナーを開催しているところがあります。
ネット上で視聴するウェビナーも含めて基本的に無料で参加できるので、不動産投資を体系的に学ぶ方法としておすすめです。
ただし、これらのセミナーは不動産会社が営業活動の一環でおこなっていることが多く、自社の物件を購入するように促す内容になっていると考えるのが自然です。
その部分は差し引いて、プロの話を聞いてみる機会にしてみるのがよいでしょう。
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3.ネット記事、動画で勉強する
ネット記事や動画はほとんどが無料で、手軽な情報源です。
書籍などで体系的に不動産投資を理解したうえで、ネットを活用して個々の情報に触れると理解しやすいでしょう。
4.不動産投資のブログを読んでみる
不動産投資家の中には、自分の経験や最新情報を逐一ブログやSNSなどで発信している人がいます。
こうしたブログやSNSではリアルな話が満載なので、不動産投資家としての生活を疑似体験できることでしょう。
定年後の収入が確保できるその他の不動産投資
ここまでは定年後の不動産投資としてアパート投資をテーマに解説を進めてきましたが、「定年後に安定した収入を確保できるのであれば方法はこだわらない」という人もいることと思います。
そのニーズを満たす方法はたくさんありますが、ここでは不動産に関連する投資商品を3つ紹介します。
この3つは、いずれも投資家自身が現物の不動産を所有することはなく、物件の運用・管理を第三者に任せたうえで利益を狙うことができます。
1.不動産小口化商品
不動産は高額商品ですが、その中でも大都市圏の都心にあるオフィスビルなどになると数十億円単位になります。
こうなると個人投資家が購入できるレベルではありませんが、こうした超高額物件の中には優良物件が多いのも事実です。
そこで登場したのが、不動産小口化商品です。
個人投資家が購入できないような高額物件を小口化して、数百万円から購入できるようにしていることが大きな特徴です。
ACNの不動産小口化商品「Aシェア」は、東京などの都心オフィスビルを1口100万円にまで小口化して、5口から投資ができる商品です。
小口化のイメージは、以下のとおりです。
1棟を保有するには50億円が必要になる都心オフィスビルであっても、この仕組みを利用すれば500万円から所有できます。
また、小口化された商品を複数所有すれば、リスクの分散効果も得られます。
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不動産小口化商品とはどんな投資方法?種類とメリットやリスクを解説
2.不動産クラウドファンディング
事業会社がネット上で資金を募り、その資金を元手に不動産を運用し、利益を出資者に分配するのが不動産クラウドファンディングです。
近年人気を集めており、人気のある案件には応募が殺到して、なかなか投資ができないという問題はあるものの、利回りが5%を超えるような案件が多いのは魅力的です。
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不動産クラウドファンディングの仕組みを解説!人気の理由や始め方がわかる
3.J-REIT
REITとは不動産投資信託のことで、REITのなかでも東京証券取引所に上場している銘柄群をJ-REITといいます。
J-REITには「ホテル主体型」「事務所主体型」「ヘルスケア施設主体型」「住居主体型」といったように、運用する不動産の種類によってカテゴリーがあります。
また、複数のカテゴリーを運用する「総合型」「複合型」もあります。
厳しい上場基準を満たしていることや、運用益の90%以上を分配する法人税が免除される仕組みがあることから配当性向が高く、5%前後の利回りが期待できます。
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不動産投資でREITはおすすめ?他の不動産投資と比較
まとめ
定年後の老後資金を確保するためにアパート投資を検討している方に向けて、メリットや注意点、ローン審査対策になどについて解説しました。
定年後からであってもアパート投資は遅くはありません。
順調な運用が続けば子や孫の世代に資産を受け継いでいくこともできるでしょう。
まずは行動、興味があるものがあれば具体的な情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。
(提供:ACNコラム)