ビジネス環境の変化が激しい現代では「タイムマネジメント」の重要性が高まっています。
丁寧に作業を進めることは重要ですが、与えられた時間内で終わらせることも大切です。時代の変化についていくためには、タスクを着実にこなしながらもその時間をできるだけ短縮させる必要があります。
本記事では、タイムマネジメントに取り組むことによる効果や、実行までのプロセスなどについて分かりやすく解説します。
タイムマネジメントは現代のビジネス環境に必須のスキル
自分自身のタイムマネジメントができるようになると、新しいことに挑戦する時間や心の余裕が生まれます。また、チェックや見直しの時間を確保できるため、業務の品質を高めることにもつながります。
イギリスの学者、シリル・ノースコート・パーキンソン氏によると、人間は与えられた時間に合わせて業務量を拡大し、期限の間近まで作業をする傾向があります。これは「パーキンソンの第1法則(※)」と呼ばれており、必要な仕事自体が終わっていても、人によっては新たな仕事を自ら生み出してしまいます。
※パーキンソンの第2法則「支出額は、収入額に達するまで膨張する」もよく知られる。例として、事業予算に余裕があっても使いきってしまう、年収が上がったにもかかわらず貯金ができずに使いきってしまう、など
企業を取り巻く環境がすばやく変化する現状を踏まえると、特定の業務に必要以上の時間をかけることは望ましくありません。変化についていくためには、目の前のタスクを期限内に、かつ、できるだけ早く終わらせることが重要です。
タイムマネジメントは現場の従業員だけではなく、経営者やエグゼクティブ層にとっても必要なスキルと言えます。タイムマネジメントで時間の余裕が生まれると、変化に合わせて新しい事業計画を考えたり、組織を見直したりすることが可能になります。
タイムマネジメントとは?
タイムマネジメントとは、仕事に費やせる時間をできるだけ有効活用して、自身の生産性や業務効率を高めるスキル(能力)です。日々のタスクに優先順位や目標を設定することで、作業フローを自分自身でマネジメントします。
スケジューリングと似ていますが、タイムマネジメントの目的は目標達成までの道のりを短縮することです。スケジュール管理のようにタスクを終わらせることではなく、あくまで「効率化」「改善」といった点に重きを置いています。
タイムマネジメントはスキルの一種で、計画の立て方や考え方を学ぶことで習得できます。
タイムマネジメントで期待できる3つの効果
タイムマネジメントを習得すると時間や心に余裕が生まれ、それに付随してさまざま効果が表れます。主な効果として次の3つが挙げられるでしょう。
- 効率的にタスクを進められる
- 全体を俯瞰する余裕が生まれる
- 新しいことに挑戦できる
具体的にどのような効果があるのか、以下で詳しく解説します。
1.効率的にタスクを進められる
タイムマネジメントをすることで効率的にタスクを進められるようになります。納期や時間に追われることが減り、かつ精神的にも余裕が生まれ、業務品質の向上にもつなげられます。
取りかかるタスクや作業フローを感覚だけで決めてしまうと、タスクの抜け漏れがあったり、タスク同士のつながりを見落としてしまうことがあります。少ない行動で複数のタスクを進めることが難しくなり、どうしてもムダが増えてしまいます。
2.全体を俯瞰する余裕が生まれる
タイムマネジメントでは、個々のタスクを洗いだし、自身の動き方を俯瞰します。その結果、効率を意識してタスクの順序を入れ替えたり、優先度の高いタスクに注力したりすることが可能になります。
こうしたタイムマネジメントのノウハウは、組織の動き方を改善することにも役立ちます。現場を俯瞰し、同じ流れでタスクの作業フローを洗いだし、見直せば、チームや部署の生産性も高められるでしょう。このような点からも、タイムマネジメントは経営者やエグゼクティブ層にとって重要性が高いスキルと言えます。
3.新しいことに挑戦できる
各タスクの作業フローが改善され、時間のゆとりができることで、新たなビジネスなどに挑戦することができます。タイムマネジメントは新しいことを始める際にも役立ち、会社や事業をスムーズに成長させることにもつながるでしょう。
空いた時間は新たなビジネスのほか、自分磨きや周りとのコミュニケーションなどに費やすこともでき、スキルアップやキャリアアップに有効活用できます。
タイムマネジメントの手順
タイムマネジメントは単なるスケジュール管理ではないため、正しい手順で進めることが重要です。基本的には以下の流れで進めて、行動をした後には振り返りの機会を作りましょう。
- タスクを洗いだす
- 優先順位をつける
- タスクごとの目標を設定する
- 実践して振り返る
ここからは4つの手順に分けて解説します。
1.タスクを洗いだす
まずは、自分自身や組織のタスクをすべて洗いだします。現時点のタスクはもちろん、将来の目標達成に必要なタスクまで漏れなく書きだしましょう。
なかでも経営層やエグゼクティブ層については、コア事業や新規事業、経営管理、社員同士のコミュニケーション促進、組織管理に関するものまで幅広く洗いだすことになるため、膨大なタスク量になることが予想されます。
自身だけでタスクを洗いだしたり、タイムマネジメントをすることが難しい場合は、秘書やアシスタントなどの第三者の活用も考えましょう。タスクやスケジュール管理に役立つツールを導入すれば、周りの人に任せてもタイムマネジメントは進められます。
例えば、株式会社シーエーシーで提供している『秘書室システム Olive(オリーブ)』は、役員のスケジュールや関連情報を一元的に把握、管理することができます。
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2.優先順位をつける
次は、洗いだしたすべてのタスクに優先順位をつけます。いきなり優先順位を設定することが難しい場合は、各タスクを以下の4つに分類してみましょう。
【1】重要度と緊急度が高い
【2】重要度は低いが、緊急度は高い
【3】重要度は高いが、緊急度は低い
【4】重要度と緊急度が低い
上記の重要度は「どれくらいの成果を生みだすか」、緊急度は文字通り「すぐに着手する必要あるか」で判断します。優先順位は【1】が最も高く、【4】になるにつれて低くなっていきます。
例えば、新規事業に関するタスクは【1】や【2】に含まれるでしょう。新規事業は多くが流行に左右されやすいため、必然的に緊急性が高くなります。
3.タスクごとの目標を設定する
優先順位を決めたら、各タスクに明確な目標を設定します。具体的な行動まで落とし込む必要があるため、目標には数値や期日を含めましょう。
以下では新規事業の市場調査を想定して、実際に具体的な目標を設定してみます。
- 〇月〇日までに競合△社の製品データを集める
- 自社だけでは難しい調査を〇日後までに選定して、依頼先の候補を△社探す
- 集めたデータは1週間以内に整理し、〇月までに約△ページの資料を作成する
上記のように目標を決めたら、具体的な作業フローや行動計画まで落とし込みます。目標を細分化して、「効率的に進めるには何から取り組めばいいか」や「1日あたりどれくらいの作業が必要になるのか」を考えてみましょう。
4.実践して振り返る
実践する際は、安易にやり方を変えないことが重要です。こまめに修正するとそれだけで手間がかかるので、まずは決めた作業フローや行動計画の通りにタスクをこなしてみてください。
十分なデータが集まったタイミングで、振り返りの機会を設けます。特に目標を達成できなかったタスクに目を向けて、主に以下のようなポイントを検討します。
- 各タスクをどこまで進められたか
- 目標自体に無理がなかったか
- 作業フローや行動計画に改善点はあるか
タイムマネジメントの振り返りは短い時間で構いませんが、定期的に行うことが重要です。「3日に1回」「毎週末1回」のように時期を決めて、こまめにブラッシュアップをしていきましょう。
タスクマネジメントに役立つフレームワーク
タイムマネジメントには、ビジネス用のフレームワークを活用できます。フレームワークを活用すると各ステップの精度が上がるため、結果として作業フローや行動計画の質まで高められます。
ここからは、タイムマネジメントに役立つ2つのフレームワークを紹介します。
ロジックツリー
ロジックツリーとは、ビジネスで抱える課題などを分解し、具体的な原因や対策などを見極めるフレームワークです。基本的には課題解決に利用されますが、業務や目的から枝を広げていくことでタスクの洗いだしにも活用できます。
上図では「新規事業の立ち上げ」を例にしましたが、業務の種類(コア事業の見直し、組織変革など)に分けて複数のロジックツリーを作成することで、タスクを細分化したレベルで洗いだすことができます。
SMARTの法則
SMARTの法則は、設定した目標が適切かどうかを判断するフレームワークです。以下のように、「具体性・計量性・実現性・関連性・期限」の観点から設定した目標を見直し、不足している要素がある場合は内容を追加します。
<SMARTの法則の5要素>
Specific(具体性):分かりやすい具体的な目標になっているか
Measurable(計量性):振り返るときに測定できる目標になっているか
Achievable(実現性):現実的な目標になっているか
Relevant(関連性):何と関連しているか、関連する目標はあるか
Time-bound(期限):明確な期日が設定されているか
例えば、ロジックツリーで洗いだした「大企業の事例を見る」について、「大企業〇社の事例を1週間で確認する」という目標を設定したとしましょう。この目標だけでは、「どのような大企業を確認するか」や「事例をどこまで確認するか」などの点が不明瞭です。
そのため、事例を確認する大企業の業種や、どのような資料で確認するかまで設定することが望ましいでしょう。SMARTの法則を踏まえると、「IT業界に関わる国内企業〇社の事例を公式サイトで確認し、可能であれば各事例の売上まで1週間以内に調べる」といった目標を設定することが理想です。
また、タイムマネジメントでは6つの観点からタスクを細分化する「HIROEN」や、目標の実現可能性を判断する「フィジビリティスタディ」なども活用できます。さまざまなフレームワークを活用して、作業フローや行動計画の精度を高めましょう。
タイムマネジメントは資質ではなくスキル
タイムマネジメントは個人に備わっている資質ではなく、努力次第で習得できるスキルです。タスクの洗いだしから振り返りまでの手順を繰り返せば、自分なりの作業フローや行動計画が少しずつ確立されていきます。
まずは自分自身の動き方を見直してみましょう。余裕ができたらチームや組織の改善にも目を向けてみましょう。
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