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(画像=株式会社ネクスウィル)
丸岡 智幸(まるおか ともゆき)
株式会社ネクスウィル代表取締役
高校を卒業し、大手電力会社に約10年勤務。その後、一部上場企業の不動産会社にて投資用アパートの販売業務などに従事。2019年に株式会社ネクスウィルを設立。 顧問弁護士からの相談をきっかけに訳あり不動産の買取事業を始める。 2024年5月2日に訳あり不動産について解説している書籍「拝啓 売りたいのに家が売れません」(自由国民社)を出版。
株式会社ネクスウィル
株式会社ネクスウィルでは、一般的な不動産と比べて売却が難しいとされる訳あり不動産の買取をし、権利関係を整理するなどの手を加え、取扱や売却が困難とされている要因である"訳"を排除して再販をしています。 日本全国で対応しており、空き家、共有持分、再建築不可、底地/借地、事故物件などの活用が難しい訳あり不動産を買い取り、再販することで、空き家をはじめとする日本の不動産問題解決を目指しています。

目次

  1. これまでの事業変遷について
  2. 飛躍的な成長を遂げた秘訣
  3. 経営判断をする上で重要視している点
  4. 事業拡大の未来構想
  5. ZUU onlineユーザーへ一言

これまでの事業変遷について

—— これまでの事業編成についてお聞かせください。

株式会社ネクスウィル 代表取締役社長・丸岡 智幸氏(以下、社名・氏名略) 弊社は2019年1月に設立し、今年で5年目を迎えます。もともと私は不動産販売をメインに長く携わってきました。その経験を活かして株式会社ネクスウィルを立ち上げました。当初は前職で一緒に働いていた5人ほどのメンバーでスタートしました。

創業当時、我々の特色をどう出していくか迷うこともありました。そんな中、弊社の顧問弁護士から、複数人で不動産を所有し、権利関係で揉めているケースが増えているという話を聞きました。これが一つのビジネスチャンスだと考え、ネット集客のノウハウを活かして、こうした問題を抱える方々をサポートすることにしました。

やってみると、相続時に権利関係で揉めているケースが多く、顔を合わせたくないので早く手放したいという相談が多く寄せられました。これをメインビジネスにしようと決意し、試行錯誤しながらビジネスを成り立たせてきました。

通常では売れない不動産、例えば共有持分や再建築不可の物件、底地借地など、そういったものに手を広げていき、現在では地方の空き家も買取できるようになりました。

—— 地方の空き家の買取のお話で、岩手県との連携がニュースにも出ていましたが、その経緯を教えてください。

丸岡 きっかけは、BSの番組で経営者とアスリートが対談する企画に参加したことです。そこで、元日本代表で現在いわてグルージャ盛岡の社長を務める秋田豊さんと出会い、意気投合しました。その際、空き家問題について話す機会があり、岩手県の自治体との接点を持ちたいと話したところ、秋田さんが紹介してくれました。

現在は岩手県の紫波町と話を進めており、空き家の流通促進に関する業務提携を結びました。9月には締結式も行い、具体的な取り組みを詰めているところです。

—— 今後の展望として、他の自治体とも連携を考えているのでしょうか。

丸岡 私がもともと茨城県出身なので、茨城県の自治体とも話を進めています。自治体は前例がないと動きにくい部分がありますが、今回の岩手県との提携が良い事例となれば、横展開も可能になると考えています。

—— 横展開する際に、他社に真似されるリスクはありませんか?

丸岡 弊社は単純に空き家の買取再販をしているだけではなく、空き家のCtoCプラットフォームも展開しています。空き家バンクに似た仕組みですが、例えば、登記上の名義変更がされていない不動産や複数人で所有している物件は、空き家バンクに載せるのが難しいんですね。しかし、弊社のプラットフォームでは、そういった制限を設けていません。売れるかどうかわからないのに先に費用がかかるので諦めたという方も、弊社のサービスは安心して利用いただけます。専門的な知識を持って手厚くサポートできるので、買主が見つかった時に必要な手続きを案内し、最終的には売却できるようフォローしています。この点が他社にはない強みだと考えています。

飛躍的な成長を遂げた秘訣

—— 飛躍的な成長を遂げた理由として、何か特別な秘訣があるのでしょうか?

丸岡 成長の秘訣は三つあると思っています。まず一つ目は集客です。ネット集客をメインに、前職のつながりでITに強い方々に協力してもらいながら、マーケティングチームを内製化しています。毎月の集客数やKPIをしっかりと管理し、広告の効率を高めています。主に空き家や訳あり物件を集めていますが、利益につながる集客ができるかどうかを重要視しながら運用できています。

二つ目はメディアへの露出です。設立から5年目の会社では比較的珍しいと思うのですが、弊社では広報部を設置しています。メディア露出を増やしサービスの認知度向上を図っています。

三つ目は営業マンの質です。特に訳あり不動産の買取では、不動産会社も上から目線というか、買い取ってあげるというようなスタンスになりがちです。その部分で、弊社ではお客様満足につながる営業を心がけています。他社があまりしていない提案や営業力、対応力が大きな強みです。

—— 営業マンの方々はどのような背景を持っているのでしょうか?

丸岡 未経験者もいれば、業界経験者もいます。ただ、法的知識が必要な分野を経験してきた人は少ないですね。デベロッパーから来た人もいますが、訳あり不動産の知識は初めてという方がほとんどです。なので、5年間で培ったノウハウを営業マンに標準化することが重要だと感じ、教育に力を入れています。

—— ビジネスモデルについてもう少し詳しく教えてください。ネットで訳あり物件を集め、その後どのようにマネタイズされているのですか?

丸岡 問い合わせいただいた不動産所有者に対し、営業が買取交渉を行います。複数人で所有している物件の場合は、弊社の担当者が共同所有者にも交渉を行います。再建築ができない物件では、役所と交渉して再建築可能にすることもあります。

—— 物件を売る工程は別の担当者がいるのでしょうか?

丸岡 いえ、入り口から出口まで営業は一貫して担当します。権利関係をまとめた後、ハウスメーカーやデベロッパーに販売します。最初に持ち分の価値を査定し、買い取る業者に卸すので、出口戦略はある程度決まっています。

地方の空き家に関しては、安く買い取り、転売するパターンがあります。あとはもともと投資用の不動産販売もしていたので、そちらの事業部もまだ残っており、アパート一棟ものの販売なども続けています。

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経営判断をする上で重要視している点

—— 経営判断をする際に重視している点についてお伺いします。何か軸として持っているものや、判断に迷ったときに頼りにしていることがあれば教えてください。

丸岡 リスクやコスト面はしっかり見ていますが、基本的には承認しようと考えています。例えば物件を購入するかどうかの判断もそうです。営業マンからリスクを説明させ、法的な確認が必要ならしっかりとさせた上で、問題がなければ基本的に承認します。営業マンを信頼している部分もありますね。

—— 営業マンが持ってきた案件なら大丈夫だろうという信頼感があるわけですね。

丸岡 そうですね。ただ、営業マンも数字を追わなければならないので、買いたい気持ちはわかります。しかし、結果的に物件が売れず赤字になることもあります。そうなると営業マンの信用が失われるので、事前に営業会議でしっかり話し合います。買いたい気持ちは理解しますが、問題が多い物件が増えないよう、リスクや問題点を営業マンから自発的に上げてもらうようにしています。

—— ファイナンス面でも工夫されていることがあれば教えてください。

丸岡 訳あり不動産は銀行からの融資が難しいんです。2分の1とか3分の1で最初に買うときは持分の権利だけなので、評価が出ず、現金で買うしかありません。内部留保を貯めながらやっていくしかないので、弊社としても本当は買いたいけど買えない物件も多いのが現状です。最近ようやく弊社のビジネスモデルを理解してくれる金融機関が増えてきて、融資が入りやすくはなってきました。節税を意識していかれる会社さんも多いかと思いますが、弊社は税金をしっかり払って内部留保を貯めて、それを元に物件を買うという方針でやってきました。

事業拡大の未来構想

—— 事業拡大の未来構想についてお伺いします。今後5年、10年の展望を教えていただけますか?

丸岡 空き家問題は多くの人にとって他人事のように思われがちです。しかし、いざ自分が相続した際、問題に直面した時に「どこに相談すればいいのか?」という疑問が生じるでしょう。弊社としては、そうした時にすぐに名前が浮かぶような企業になりたいと考えています。つまり、訳あり不動産の買取を行う企業の中で、リーディングカンパニーとしての地位を築くことが目標です。

ネットリテラシーが高い人であれば、検索してすぐに弊社サービスに辿り着けると思うのですが、そうでない方々にも知ってもらえるようにしたいですね。そのためには、地方自治体との連携が重要です。自治体が直面している空き家問題に対し、信頼できるパートナーとして協力していきたいです。地方の方ほど困っていると思うので、そんな方々に対して、しっかりとサポートを提供していきます。

—— 自治体自体もノウハウがなく、悩んでいるように思います。

丸岡 そうですね。自治体ごとに対応が異なり、空き家バンクが機能していないところも多いです。弊社のサービスを活用して、自治体と協力し、一つでも空き家を減らしていきたいと考えています。

—— 将来の市場規模についてはどうお考えですか?

丸岡 現在、空き家は約900万戸あり、10年後には倍増するとも言われています。相続で揉めるケースも増えており、共有持ち分の問題も深刻です。親族関係が希薄になり、持ち分が細分化されることで、売却が難しくなるケースが増えています。さらに、ペアローンで不動産を購入した後に離婚するケースも増加しています。この市場は今後も拡大すると考えています。

—— 資金調達についてもお伺いしたいのですが、将来的にIPOを目指すお考えはありますか?

丸岡 IPOももちろん視野に入れています。今年1年で方向性を決めていく予定です。

ZUU onlineユーザーへ一言

—— 最後に読者の皆様へ向けて何かメッセージをいただけますか?

丸岡 現在、空き家が注目されていますが、実は空き家以外にも売れない不動産はたくさんあります。最近、そのような不動産についてまとめた本も出版しました。しかし、こうした事業に取り組む会社は少ないのが現状です。

最近、弊社に来た人材の中にはデベロッパー出身者もいます。彼らに「なぜうちに来たのか」と尋ねると、少子高齢化や人口減少の中で不動産業界の未来が見えにくいと感じているようです。大手には勝てないという中で、自分のキャリアをどう築くか考えた結果、使われない不動産を再生するノウハウを身につけたいという方が増えてきています。

難しい領域ではありますが、誰かが取り組まなければならない分野です。新築が良いとされ、中古物件の流通が海外に比べて少ないのは、日本の不動産業界の特徴ですが、新しいビジネスモデルとして、社会に必要とされるサービスの一つだと確信しています。

興味を持っていただき、応援していただけたら嬉しいです。こうした取り組みを知っていただけるとありがたいですね。

—— 私も非常に興味深い分野だと感じました。今日は貴重なお話をありがとうございました。

氏名
丸岡 智幸(まるおか ともゆき)
会社名
株式会社ネクスウィル
役職
代表取締役