北海道函館市出⾝。1988年⼀橋⼤学商学部卒業後、⼤和証券(株)へ⼊社。1994年ペンシルバニア⼤学⼤学院ウォートン校を修了しMBAを取得。1997年モルガン‧スタンレー証券(株)⼊社。2008年に⾷品の製造‧販売を⾏う中⼩企業の⽀援‧活性化を⽬的として(株)ヨシムラ‧フード‧ホールディングスを設立、代表取締役CEOに就任。創業時よりホールディングス体制で展開し、グループ各社の強みを活かし、弱みを補完する中小企業支援プラットフォームを独自に構築、各社の再生支援・活性化を手掛けてきた。
社長のこれまでの変遷について
ーー経歴についてお聞かせいただけますか?
株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス 代表取締役社長・吉村 元久氏(以下、社名・氏名略) 私は元々大和証券に入社し、事業法人部という、上場企業相手に証券ビジネスの窓口を担当する部署に配属されました。その後、2年間アメリカへ留学した後再び同じ部署に戻り、大和証券には9年半在籍しました。
その後モルガンスタンレーに移り、約7年半ほど働き、独立して自分のコンサルティング会社を立ち上げました。もともと独立して事業をしたいという思いがあったので、勉強するために証券会社へ入社しました。
ーー証券会社での経験が現在の経営にどのように活きていますか?
吉村 証券会社で学んだことは、ビジネスマンとしての基本的な動作やコミュニケーション能力です。さらに、金融や投資の知識を通じて、ビジネスを見極める力も養われました。これらの経験は、今の経営に大いに役立っています。
ーーコンサルティング会社から食品業界の経営者へと転身された際のきっかけや、成長要因についてお聞かせいただけますか?
吉村 食品業界に転身したきっかけは、「口だけ出すのではなく、実際に株を買って経営してみないか」と言われたことです。時期的にはリーマンショックの後で、中小企業を引き受けるタイミングとしては良かったですね。不景気だったため、人材の確保もしやすかったですし、他の企業が手をつけていなかった領域だったこともあり、先行者利益を得ることができました。
ーー食品業界でのビジネスモデルについて教えていただけますか。
吉村 ファンドは投資家から資金を集め、買収した企業を売却してリターンを得るモデルです。中小企業に対してキャピタルゲインを狙う買収では、2〜3年で価値を倍増させる必要があり、それは現実的に難しいです。 私たちが目指しているのは、後継者がいない中小企業を買収し、長期的に成長させることです。ファンドは投資家に対するリターンが求められるため、どうしても短期間での売却が前提になりますが、私たちはその企業を持ち続け、長期的な視点で事業を進めています。これにより、企業や社員にとってもメリットが生まれます。
ーービジネスモデルが違うと、やはり経営方針も大きく変わりますね。
吉村 そうですね。私たちは事業会社として、中小企業の継承問題を解決することを目的としています。後継者がいないために廃業する企業が多い中、私たちがその企業を引き継ぎ、長期的に事業を継続させることで、社会にも貢献できると考えています。
社長が一番感銘を受けた書籍とその理由
ーー最も感銘を受けた書籍とその理由について教えていただけますか?
吉村 私は本が好きで、子供の頃からよく読んでいました。特に小学校1年生の頃、母親が「世界名作文学全集」というシリーズをセールスに勧められて買ってきたんです。分厚い辞書のような本が何十冊も家にあって、それを読み始めました。その中で一番印象に残っているのが、太閤記で、豊臣秀吉の人生を描いた本です。
誰が書いたかは覚えていませんが、豊臣秀吉がゼロから天下を取るまでの物語に強く惹かれました。私が初めて本というものに感銘を受けたのは、この本だと思いますね。彼の人生は、特に何もないところから成り上がり、最終的には天下を治めた、まさにゼロからの成功の物語です。それが小学生の私にとって非常に面白く、影響を与えたと思います。
ーー秀吉の影響が、社長の独立心や事業に対する考え方に影響を与えた部分もあるのでしょうか?
吉村 多少なりとも影響はあったかもしれません。小さい頃から何となく自分で事業をやりたいという思いはありましたし、秀吉のような「ゼロからの成功」という考え方が、私の中で根付いていたのかもしれません。
ーー直近で、経営に役立つと感じた本はありますか?
吉村 最近ではないですが、歴史ものが好きなので、山岡荘八の『徳川家康』や司馬遼太郎の『坂の上の雲』が特に好きですね。あとは、『三国志』や今流行っている『キングダム』も、経営に通じるところがあって面白いです。
ーー経営においても、人生の選択においても、過去の人物がどういった選択をしてきたかを学ぶことが重要というわけですね。
吉村 そうですね。人生は選択の連続です。選択の場面で、過去の偉人たちがどういう考えでどちらの道を選んだのかを参考にすることは、非常に役立ちます。
読んだ書籍をどう仕事に生かしてきたのか
ーー読まれた書籍をどのように仕事に活かしてきたのかについてお聞かせいただけますか?
吉村 私は基本的に「人の意見を鵜呑みにしない」ようにしています。みんながやっているからといって自分も同じことをするということはなく、必ず自分で考えて判断します。これは歴史上の偉人たちが自分で考え、自分の道を切り開いていった姿勢から学んだことです。彼らは時には周囲の意見に反発してでも、自分の信念に従って行動しています。それが私にも影響しているんだと思います。
ーー歴史上の偉人たちの中で特に好きな人物はいますか?
吉村 私は司馬懿(しばい)が好きですね。彼は自分の孫を皇帝にするために、慎重に行動しつつも最終的には大成功を収めました。劉備や孫権といった有名な人物も魅力的ですが、司馬懿のような少し影のある存在に惹かれます。危ない橋を渡りつつも頂点まで上り詰める姿は、ビジネスの世界でも通じるところがあると感じますね。
中国の歴史を見ると、皇帝が軍人ばかりの意見を聞いたり、官僚ばかりに依存したりすると、必ず失敗しています。組織のバランスを保ち、常に異なる意見を取り入れることが、長期的な成功に繋がるのです。これは経営にも非常に当てはまります。
社長が経営において重要としている考え方
ーー経営において最も重要視している考え方を教えていただけますか?
吉村 強いて言えば「公平さ」を大事にしています。私はフェアにやりたいと思っていて、どの社員にも公平に接することを心がけています。評価や報酬においても、公平だとみんなが納得できるような仕組みを作ることが重要です。誰かが昇進したり、給料が上がったりするのを見たときに、「あの人なら当然だ」と思ってもらえるような仕組みですね。それが会社全体の活力に繋がると考えています。
もう一つは、柔軟であることです。歴史を見ても、成功した人でも晩年に判断を誤ることが多いんです。年を取るとどうしても頑なになりやすくなります。だからこそ、自分の成功体験に固執せず、常に柔軟に人の意見を聞くことを心がけています。
自分の成功体験に頼りすぎると、人の話を聞かなくなる危険があります。だから私は、常に家族や信頼できるアドバイザーの意見を聞くようにしています。彼らの指摘の中には気分が悪い内容もありますが、それでも大切なことだと思っています。
思い描いている未来構想や従業員への期待について
ーービジョンや目標、また社員の方々に対して期待していることは何でしょうか?
吉村 私は特に「このくらいの規模の会社にして、将来的にコントロールしたい」とか、「子供に事業を継がせたい」といった具体的な野望はないんです。ただ、社員の皆さんが自分の人生を幸せに送れるような機会を提供したい、というのが私の願いですね。
ーー機会を提供する、というのは具体的にはどういう形でしょうか?
吉村 自分の好きなことをやって、嫌なことをしないというのが一番の幸せだと思っているんです。ですから、社員にもできるだけ多くの選択肢を提供したいと考えています。例えば、会社内でもさまざまなポジションや役割を設けて、その人に合った仕事を提供することが重要です。人それぞれ、やりたいことや得意なことが違うわけですから、そういったことを尊重して、その人に合った環境を作りたいと考えています。
経営の視点で物事を考えることができる社員が増えれば、会社全体としても強くなりますし、結果的に国に対しても貢献できる存在になると思っています。社員には、自分のやりたいことをしっかりやって、充実した人生を送ってほしいですし、私としてはそれを支えるためのポジションや環境を提供していきたいと思っています。
- 氏名
- 吉村 元久(よしむら もとひさ)
- 会社名
- 株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス
- 役職
- 代表取締役CEO