総括
FX「壮絶な金融体験を有する次期米政権の財務・商務長官」
ドル円=152-157、ユーロ円=159-164、ユーロドル=1.02-1.07
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨10位(10位)、株価7位(5位)、ドル円の週足は8週連続陽線」
(もう少し円が強くなると思ったが、そうならなかった要因は)
11月の円はここまで5位、年間では10位、もう少し円が強くなると思ったが、そうならなかった要因は外貨投信への資金流入だ。10月の残高は9月から5.83兆円増加している。7月の円買い介入前の残高を越えた。貿易赤字は縮小中だがまだ赤字ということもある。ドル円の週足は8週連続陽線、日足、週足はまだボリバン2σ上限まで余地がある。
(財務省より日銀総裁が為替に口を出すこの頃)
やはり財務省は、介入については米国新政権から釘を刺されているのだろうか、あまり口先介入をしなくなった。代わって先週の日銀総裁は「インフレ見通しを策定する際には、現在の為替レートの変動理由も含め、為替レートの変動については確かに真剣に検討する」、「円安はコストを押し上げ、消費に大きなマイナス影響を与えたが、輸出やインバウンドにはプラスの影響を与えている。為替レートが経済見通しに与える影響を評価していきたい」と言及するようになった。介入が難しいなら日銀に利上げさせようとする意図も感じられるが、7月の介入後の株暴落や経済指標の悪化を見ると、利上げは日本の状況を悪化させそうだ。
(今週は10月の「3つの基調的なインフレ率を捕捉するための指標」の発表)
10月の消費者物価前年同月と比べて総合、コア、コアコアともに2.3%上昇した。電気・ガス代補助の再開でエネルギーの上昇幅が縮んだことなどから、2カ月連続で伸び率が縮小した。
今週は10月の「3つの基調的なインフレ率を捕捉するための指標」が発表される。9月までは3つともに2%割れである。利上げに脆弱な景気、株価だけに慎重な政策が望まれる。
また、週末に10月東京都区部消費者物価が発表される。
(長期的には円安緩和要因、原発再稼働で)
全発電量に占める原発の割合が2023年度は8.5%となり、12年度以降で最も高くなった。関西電力高浜原発2号機の再稼働などで、前年度より2.9ポイント高まった。ただ全体の需要は縮み、発電電力量は1.6%減の9855億キロワット時だった。 原発の比率は10年度に25・1%あった。東京電力福島第一原発事故をきっかけに13年夏から約2年間、国内の原発が全て止まったが、再稼働が進むにつれて、比率も高まってきた。今年10月には東北電力女川原発2号機が再稼働し、12月には中国電力島根原発2号機の再稼働も控える。24年度は原発の比率がさらに増える見込みだ。
*米ドル「通貨2位(2位)、株価(NYダウ)5位(6位)、注目人事は財務長官のベッセント氏と商務長官のラトニック氏」
(ドルは11月最強、年間では2位。米株はドル高金利上でも強い)
大統領選挙前に予想された通り、ドルが上昇している。米長期金利も上昇。日経平均は円高、金利上昇に脆弱だが、米株は上昇。ナスダックは年初来26.6%高。S&Pは25.15%高、伸び悩んでいたNYダウも日経均を抜いて17.53%高(日経平均は7月の介入と利上げ後は伸びずに14.4%高)
(米金融・通商関連の人事は強烈だ)
トランプ次期大統領が新政権主要ポストの多くを固めた。注目したいのは、財務長官のベッセント氏(Bessent)と商務長官のラトニック氏(Lutnick)だ。財務長官のベッセント氏は為替のプロだ。
*ベッセント氏(財務長官)=1992年、ベセント氏は1992年のソロスファンド在籍時にポンドのERM離脱危機に乗じてポンドを売り、英中銀の買い介入や急激な利上げにも勝ち10億ドルを儲けたとも言われる(私の友人も莫大に儲けてTVで英中銀を批判し退職を余儀なくされた)。また安倍元首相の「3本の矢」の政策を評価し日本市場でも利益を上げたと言われている。為替や金融市場の体験者でもあるので一家言を持つので、市場も発言に寄り注目するだろう。
ベッセント氏は同性愛者であることを公表した初の財務長官となり、ピート・ブティジェッジ氏に次いで2人目の同性愛者であることを公表した閣僚となる。
ソロス・ファンド・マネジメントのパートナーであり、世界的なマクロ投資会社であるキースクエア・グループの創設者である(キースクエア・グループの運用成績は思わしく無い)。
*ラトニック氏(商務長官)=ラトニック氏は金融サービスのカンター・フィッツジェラルドとBGCグループの会長兼CEO。カンター・フィッツジェラルドは9月11日の同時多発テロの際、従業員658名が亡くなった。ラトニックは生き延び、それ以来、攻撃や自然災害の犠牲者の家族を支援するカンター・フィッツジェラルド救援基金を通じた慈善活動で知られるようになった。
ラトニック氏はテザーなどの暗号通貨を積極的に支持している。またラトニック氏は従来から保護主義的な通商政策を主張を続けてきた。高関税の影響は世界経済に波及しかねない。モルガン・スタンレーの試算では中国に60%、そのほかの国・地域に10%の一律関税を課した場合、米経済の実質経済成長率も1.9%の押し下げ要因になるとしている。
(今後の金融政策は)
ロイターのエコノミスト調査によると、FRBは12月会合で利下げを実施するものの、トランプ次期米大統領の政策が招くインフレ高進リスクを背景に、2025年の利下げ幅は1カ月前の予想よりも小幅になるとの見方が大勢となっている。
*ユーロ「通貨7位(5位)、株価6位(8位)DAX)、弱い、注意はボリバン下限まで落ちていること」
(弱い11月)
ドルがトランプ大統領誕生後に上昇しているのに比し、ユーロはその対価として一番売られている。ドルはここまで月間最強、ユーロは最弱だ。経済指標も時に強いものが出る米国に対し、ユーロ圏は総じて弱い。金融政策もFRBが「利下げを急ぐことはない」としているが、ECBは追加利下げを促す声が強い。注意すべきは売り一色だが、ボリバン下限まで落ちていることもあり彩戻しには気をつけたい。
(弱い指標を上げたらきりがない)過去 消費者信頼感 製造業・サービス業PMI
弱い指標を上げたらきりがない。
*11月ユーロ圏総合PMIは48.1と、10月の50.0から大幅に低下し、好不況の分かれ目となる50を割り込んだ。
*11月のユーロ圏消費者信頼感指数はマイナス13.7と、前月のマイナス12.5から悪化した。
(今週は独IFOにCPI)
今週は11月独IFO企業景況感指数、11月欧州消費者物価の発表に注目したい
(タカ派の独連銀も弱さ認める)
ナーゲル独連銀総裁は、 ECBが今後1年にわたり追加利下げを実施する見通しではあるものの、12月会合で決定される可能性のある利下げ幅についての議論は待つ必要があるという認識を示した。
「独経済が今年停滞しているという全体的な状況を多かれ少なかれ裏付けており、来年初めは間違いなく複雑な状況となるだろう」と述べた。
*ポンド「通貨3位(3位)、株価15位(16位)、ベイリー中銀総裁=利下げペースは緩やかなもの」
(11月のポンドは弱いが株が小浮上)
ユーロほどではないがポンドも11月は弱く、月間10位、年間ではドルに抜かれ3位、4位の人民にも迫られている。ただポンド安でFT株価指数は先週2.46%上昇、10年国債は4.39%で高止まり。
(ベイリー英中銀総裁は、利下げペースは緩やかなものにとどまる、CPIを受けて)
10月の消費者物価上昇率は前年同月比2.3%と、予想以上に加速し、英中銀の目標である2%を再び上回った。 予想は2.2%。
国内のエネルギー料金の値上げが主因。中銀が慎重なペースで利下げを進めている理由が浮き彫りになった。9月は1.7%で、2021年以来初めて目標の2%を下回っていた。
ベイリー英中銀総裁は、利下げペースは緩やかなものにとどまる可能性が高いと強調。予算案に盛り込まれた国民保険料の雇用主負担の引き上げについて「雇用コストの上昇を意味する」とし、物価の上昇や雇用の減少などにつながる可能性があると述べた。中銀は今月、政策金利を5%から4.75%に引き下げ、今後の利下げは緩やかなものになるとの見方を示した。
(経済指標は強くはない)
*11月消費者信頼感指数は、マイナス18と8月以来の高水準に改善した。予想はマイナス22。
消費者は予算発表と米大統領選を前に募らせていた不安を克服したようだと指摘。ただ、事態が好転したと判断するのは時期尚早と述べた。
*10月の小売売上高は前月比0.7%減と、予想以上の落ち込みとなった。予想は0.3%減だった。今年6月以降で最大の落ち込みとなった。 リーブス財務相は予算案で個人への大幅な増税を見送り、企業への増税を導入した。11月のブラックフライデーと12月のクリスマス商戦で小売売上高が回復すると予想されている。
*11月の総合PMIは49.9と、10月の51.8から低下し、好不況の分かれ目となる50を13カ月ぶりに下回った。新政権が発表した予算案に増税が盛り込まれ、雇用・投資計画に悪影響が出た。
今週は主だった英国指標の発表はない
(12月の次回会合で政策金利を据え置く見通し)
英中銀は12月の次回会合で政策金利を据え置く見通しだ。トランプ次期米大統領が導入する輸入関税の下で世界的なインフレが再燃するのではないかとの不安が広がっていることが背景にある。
ロイター調査ではエコノミスト66人全員が、12月に政策金利を4.75%に維持すると回答。政策金利は来年末まで四半期ごとに0.25%引き下げられ、3.75%に低下するという予想がコンセンサスだった。
*豪ドル「通貨5位(6位)、株価11位(11位)、RBAは依然、利下げに慎重。利下げは2月か5月か」
(豪ドルは対ドルで弱いが、対円ではこのところパラレルに動く)位置
豪ドルは対ドルでは8週ぶりに陽線。対円では7種連続100円台近辺で横ばい推移している。先週の全株指数は1.1%高、年初来で10.26%高。10年国債利回りは4.53%で米国の4.4%より若干高い
(RBAは依然、利下げに慎重、議事要旨)
RBA11月理事会の議事要旨では、1年にわたり据え置いている金利を直ちに変更する必要はないが、見通しの変化に応じて対応できるように備えることが重要だという見方を示した。
現在4.35%にある政策金利について、引き下げと引き上げのほか、長期間にわたり据え置くシナリオを改めて議論した。シナリオの一つとして、インフレの急減速は利下げの根拠になる可能性があるが、それが持続可能であると確信するには好ましい四半期インフレ指標を複数回確認する必要があると指摘した。
市場は来年の5月までの利下げは完全に織り込んでいない。2月の利下げ確率はわずか38%となっている。ただ、エコノミストの大半は依然として2月の利下げを予想している。
RBAは適宜対応が必要になるさまざまなシナリオを検討した。過去の情報に過度に依存して経済状況の変化への対応が遅れることを避け、将来を見据えた姿勢を維持することが重要だとしている。
現在の金融政策のスタンスが十分に抑制的ではないと判断した場合、引き締めが必要になるかもしれないとし、信用の伸びや銀行の融資姿勢、資産価格などのデータを注視する方針を示した。
インフレ率が目標範囲内に戻る時期は2026年になると予想している。3Qのインフレ率は政府の電気料金の値下げなどにより2.8%に鈍化したが、基調インフレ率は依然として3.5%となっている。
(今週はCPI、来週はGDP)
今週は10月消費者物価の発表がる。9月は2.1%、10月は2.3%の予想。他に3Q設備投資がある。ブロックRBA総裁の講演もある。
来週は3Q・GDPの発表があり予想は前年年比で1.3%増、前期は1.0%増。他に10月建設許可、小売売上高、3Q経常収支、10月貿易収支の発表あり。
*NZドル「通貨9位(9位)、株価10位(14位)、財務省、経済・財政見通しを下方修正の公算。今週は大幅利下げか」
(NZドルは対ドルで8週連続陰線と弱い。対円でも4週連続陰線)
豪ドルは8週ぶりに対ドルで陽線となったが、NZドルは8週連続陰線と弱い。対円でも4週連続陰線。NZドルが下落したことで先週は株価が2.81%上昇し年初来では10.8%高で豪より高い。10年国債利回りは大幅利下げ観測を受けて先週は4.76%から4.69%へ低下した。
(政策金利は0.5%引き下げか。0.75%引き下げの可能性もあり)
NZ中銀は今週、政策金利を0.5%以上引き下げるとの観測が高まり、豪ドルに対して2年ぶりの安値に下落した。
翌日物金利スワップは、NZ中銀が11月27日に政策金利を0.5%引き下げることは確実で、0.75%引き下げる可能性は22%あることを示している。経済は金融引き締め政策の影響で低迷しており、ANZ銀行グループは3Qに景気後退に陥ったと推定している。
オア中銀総裁は高金利が企業投資や雇用に与えた影響は依然続いていると語った。また、金利は現在低下しているものの、実体経済には依然として遅れがあると述べた。
(NZ財務省、経済・財政見通しを下方修正の公算)
NZ財務省は、政府の財政見通しは悪化しており、財政赤字の規模と期間の予測も修正される可能性があると述べた。
経済見通しの弱まりは成長への回帰の遅れを意味すると警告した。
スティーブンス財務相は、最近の指標は予算案で予想されていたよりも弱く、そのため予算予想の下方修正を余儀なくされたと語った。
「財務省の5月の予算予測では、2024年後半に経済成長が回復すると予想されていたが、最新のデータは回復がそれより遅く始まることを示唆している。
「リアルタイムの経済データは常に注意して読むべきだが、これは財務省の生産性、経済成長、税収予測にさらなる下振れリスクをもたらす」とした。
スティーブンス氏は修正の詳細については明らかにしなかったが、修正は来月の半期経済財政報告で明らかになる見込みだ。
消費者支出の弱さと製造業およびサービス部門の縮小が要因であると述べた。5月の予算では、2025年6月までの年度の成長率を1.7%と予測しているが、民間エコノミストのほとんどは1%程度の成長を予測している。政府の財政見通しも悪化しており、財政赤字の規模と期間の予測も修正される可能性があると述べた。
(今週は指標多い)
今週は政策金利決定の他、3Q小売売上、10月貿易収支、11月 ANZ企業信頼感指数、消費者信頼感指数の発表あり。