ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「トランプ大統領未だドルを語らず、関税引き上げが具体化されずドルと円が下落」

ドル円=153-158、ユーロ円=161-166、ユーロドル=1.02-1.07

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨7位(首位)、株価15位(最下位)、ガス抜きの利上げ」
(ガス抜きの利上げ)
 物価上昇は数字的にはたいしたことはないが、世論的には物価高への不満へのガス抜きの利上げだった。ただ昨年夏の円買い介入と、利上げで日経平均が1万円、ドル円が20円下落し、日本の資産が約200兆円近く失われたこともあり、市場に急落をもたらす意外感を持たせないために、メディア複数社を使って利上げの観測報道を行わせた。その結果、株も為替も結果的に利上げ後も小動きとなった。
 ただそれが経済に大きな意味を持つのかどうかはわからない。
円安が懸念されているが、円安が無ければ景気回復も、賃上げもなかっただろう。2024年はマイナス成長で、景気が強いがゆえの利上げではないことに寂しさを感じる。
 
(円は首位から7位へ後退。日経平均は漸くプラ転))
 円は先々週は首位に立ったが先週は7位に後退した。トランプ大統領が積極的に関税引き上げを宣言しなかったことでリスク選好の動きとなった。日経平均も年初来で漸くプラ転した(年初来+0.09%)
10年国債利回りは1.235%。

(ドル円需給)
 2024年の貿易収支は5.3兆円の赤字、23年が9.6兆円の赤字、22年が20.3兆円の赤字だったので大きく縮小している。ただ外貨投信残高が28.5兆円増加して89.1兆円となった。円買いでは為替介入が15兆円。
2024年は貿易・外貨投信・介入で19.2兆円のネットでの円売りでドル円上昇。もちろん、GPIF・生保などの外貨投資、第一次所得収支、直接投資などもあるが基本は貿易収支。それに資本収支と介入が関わってくる年もある。1981年から2010年迄は30年連続で貿易黒字で大円高時代をつくっていたが、2011年の東日本大震災での原発停止で、日本の貿易黒字による円高は崩れ去った。また原油が50ドルを超えていると輸入も減らず、なかなか貿易黒字には戻れないのが最近の需給だ。

(デイトレも需給、中長期も需給)
デイトレは仲値のドル需要が午前中は市場を支配する。時には夕方までドルが下げ渋るほど仲値ドル需要が多いこともあるので、東京市場の半分を占める仲値需給を知ることが重要。
中長期的には上述したように貿易需給を基本、それに資本需給が絡んでの動きとなる。いわゆる投機筋は実際は金額が小さく無視できる存在だろう。

*米ドル「通貨10位(6位)、株価(NYダウ)5位(6位)、さあFOMC。ドル弱い、大統領令連発も関税懸念後退、ドルにも言及せず、格付けは」
(ドルは10位と弱い)
 ドルは10位と弱い。大統領令を連発、過激な発言をしているトランプ大統領だが、関税については厳しい具体策は出なかった。また中国には関税をかけたくないと言い、米中首脳会談では良い合意が出来ると発言。「関税引き上げーインフレ上昇ードル高」の流れが後退した。NYダウは4.42%高、ナスダックは3.33%高、S&Pは3.73%高とまずまず。10年国債利回りは4.8%から4.6%へ低下。

(FOMC、GDP前の数値)
アトランタ連銀GDPナウは3.0%、CPIナウは2.84%(コア3.13%)、サプライチェーン・インデックスは-0.22、恐怖と欲望指数は49。それぞれ落ち着いて推移している。

(FOMCは、大統領介入は)
 今週のFOMCでは政策金利をいったん据え置き、3月に利下げを再開すると予想されている。フェッドウオッチでは据え置き確率が99%台。 トランプ大統領が高い輸入関税導入や減税の延長、不法移民の大量強制送還を約束していることから、米国債利回りが上昇していたが、就任後は特に厳しく具体的に関税引き上げに触れなかったことで、金利は低下、ドルも弱含み推移した。
 ただ、トランプ大統領は日、金利を巡るパウエルFRB議長の判断に疑問を呈した上で、議長と「適切な時期」に話すつもりだと語った。 トランプ大統領は、「FRBよりも私の方が金利に関してはるかに詳しく、その判断に当たる主な責任者よりも私の方が熟知しているのは確かだ」と述べている。

(GDP予想)
 4Q・GDP予想は前期比年率で2.7%増で前回の3.1%増から伸び幅を縮小する。4Qではないがこのところの1月総合PMI、1月ミシガン大消費者信頼感指数は弱かった。労働市場を巡る懸念や、トランプ米大統領が表明している関税措置による物価上昇への懸念が背景にあるとみられる。ただインフレ期待は弱まっていないところがFRBと大統領での齟齬が起きる原因となるかもしれない。
 消費者の1年先の期待インフレ率は3.3%。前月は2.8%だった。5年先の期待インフレ率は3.2%で、前月の3.0%から上昇した。

(為替を語らない大統領)
 事前の予想とは異なり。ドルについての言及はない。それも不気味だ。

(格付けは)
フィッチはトランプ大統領の政策が米国債の格付けに与える影響は今年夏の次回の格付け見直しまでにより明確になるとの見通しを示した。 フィッチは2023年8月に米国債を格下げし、S&Pに次いで米国債を最上位の「AAA」から「AAプラス」へ1段階引き下げた。ただ、格付け見通しは「安定的」としており、格付けが近いうちに変更される可能性は低い。
ただ積極的な減税政策を推進し、輸入品の関税を引き上げて世界との貿易戦争を引き起こすと予想されており、債務は年間2兆ドルずつ増加して既に36兆ドル規模に膨らんでいることが多くの不安を生み出している。

*ユーロ「通貨5位(10位)、株価首位(2位)DAX)、独株価は世界最強、ユーロは5位へ反発。今週政策金利」
(ユーロは5位へ上昇、トランプ関税政策先送りでリスク選好、今週は政策金利)
 ユーロは前週の10位から5位へ上昇、独DAXは年初来7.46%高とここまで世界最強。仏CACも7.41%高と強い。独10年国債利回りは2.5%。トランプ大統領が就任当初に厳しい具体的な関税引き上げ策を表明しなかったことで、ドル高、金利上昇が和らぎ、株価が上昇した。

(政策金利は)
 政策金利は0.25%引き下げられ2.9%となる予想だ。ラガルドECB総裁は、ダボス会議で「金利について方向性は非常に明確だ。今後のペースはデータ次第だが、現段階で想定されるのは穏やかな動きだ」
と述べた。レーンECB専務理事は、金利は引き続き低下するとみており、政策当局者はインフレ率が目標とする2%で安定すると確信しているとの考えを示した。
レーン氏は「近い将来、インフレ率は予想通り目標水準で安定的に推移し、金融政策は引き締め的でなくなると確信している。金利は低下し、そのペースは会合ごとに決定される」と述べた。
タカ派の独連銀ナーゲル総裁も「今週利下げする可能性が高い」と述べた。1月28日、29日にはラガルド総裁の講演も予定されている。

(今週はGDPも発表)
 ユーロ圏の4QGDP予想は前年比で1%増(前回は0.9%増)。独の予想はゼロ%(同0.3%減)。

(PMIは改善)
 ユーロ圏総合PMIは50.2と、12月の49.6から上昇し、好不況の分かれ目となる50を小幅に上回った。サービス業PMIは51.6から51.4に低下したものの、引き続き50を上回った。 製造業PMIは45.1から46.1に上昇。予想は45.3。

*ポンド「通貨11位(12位)、株価6位(3位)、ポンド急反発。ただ政策金利は依然引き下げ予想」
(大陽線)
昨年、後半の財政懸念もありポンドは弱含み推移していたが、先週は急反発した。対円で2.39%、対ドルで2.61%上昇した。12通貨中の順位は11位だが、前週の対円で年初来3.35%安から1.04%安へ下げ幅を縮小した。株価(FT)は強く年初来4.03%高、10年国債利回りは財政懸念騒動が一服し4.9%から4.6%台へ低下している。

(ポンド反発の要因は)
 ポンド反発の要因は1月のPMIの改善とトランプ大統領の関税引き上げに具体性がなかったことだろう。
1月の総合PMIは50.9と、3カ月ぶりの高水準だった。前月の50.4から小幅に上昇。サービス業PMIは51.2と、前月の51.1から上昇し、3カ月ぶりの高水準。製造業PMIは47.0から48.2に上昇した。 トランプ大統領は関税引き上げのターゲットの一つの中国の習国家主席と会談し、「中国との貿易合意は可能」との見方を示したことも中国貿易を強化している英国ポンドを買い支えた。

(ただ次回政策金利は引き下げか)
 PMIは改善したが、依然英中銀が2月に政策金利を現在の4.75%から4.5%に引き下げる予想が強い。リーブス財務相が昨年10月末の予算案で国民保険料の雇用主負担を引き上げて以降、さえない経済指標の発表が相次いでいる。
 1月の消費者信頼感指数は、マイナス22と前月から5ポイント悪化し、2023年12月以来の低水準となった。また雇用者は昨年12月に大幅な減少となり、政策金利引き下げを後押しする格好となった。労働党政権が最初の予算案で増税を打ち出して以降、雇用は低調だ。
給与支払い対象の雇用者数は12月に前月比4万7000人減少し、約1年ぶりの低水準に落ち込んだ。雇用者数の減少は2カ月連続。

*豪ドル「通貨4位(5位)、株価10位(9位)、米中会談が好感され豪ドル上昇、今週はCPI」
(米中首脳会談が好感され豪ドル上昇)
 豪ドルは底堅く推移した。 トランプ大統領は1月21日、中国からの輸入品に2月1日から10%の関税を課すことを検討していると明らかにしていたが、その後の、米中首脳電話会談で「会談は友好的だったとし、中国との貿易合意は可能」との見方を示したことで、関税引き上げの懸念が和らいだ。中国を最大貿易相手国とする豪の通貨は上昇した。
 豪ドルは12通貨中4位で先週の5位から上昇、株価指数(全株)は年初来2.85%高。10年国債利回りは4.51%。

(今週は消費者物価発表)
 RBAの政策スタンスを見極めようと、今週の4Q消費者物価が注目されている。
ここ数週間で発表された米豪両国の消費者物価の軟化を受け、投資家は利下げに楽観的になっている。RBAウオッチツールによると、市場は2月の0.25%利下げを73%の確率で織り込んでいる。
4Q消費者物価の予想は前年比で2.5%上昇、前回は2.8%。コアは3.3%上昇予想、前回は3.5%。

 今週は12月企業信頼感指数の発表があり、またジョーンズRBA総裁の講演が1月30日に行われる。

(PMIはマチマチ)
 1月製造業PMIは49.8(前回47.8)、サービス業PMIは50.4(同50.8)でマチマチの結果となった。


*NZドル「通貨3位(8位)、株価17位(15位)、3位へ上昇「インベスト・ニュージーランド」を設立」
(3位へ上昇、株は弱い)
12通貨中3位へ上昇、前週は8位。NZドルは対円で4週ぶり週足陽線、対ドルでは先々週7週ぶり陽線後、先週は大陽線。ただ対ドルの週足のボリバンではまだ下位。対円では中位へ近づく。
株価(NZ50)は弱く年初来0.66%安。10年国債利回りは4.77%で再び英米を上回る。

(消費者物価は目標レンジ内)
 4Q消費者物価は前年同期比2.2%上昇し、前回と同じ。予想は2.1%上昇。 インフレ率は2022年に7.3%でピークに達したが、直近では目標レンジ1-3%に入りさらなる利下げの余地を残している。

(今週の経済指標は)
今週は12月貿易収支、1月企業信頼感、消費者信頼感指数の発表がある。

(「インベスト・ニュージーランド」を設立)
ラクソン首相は、外国投資誘致に向け規制を緩和すると明らかにした。経済活動が予想より大幅に落ち込み、3Qにリセッションに突入。中銀による追加利下げの可能性が出ている。

ラクソン氏は施政方針演説で、海外投資のワンストップショップとして政府国際経済開発機関内に「インベスト・ニュージーランド」を設立すると表明。「アイルランドとシンガポールの成功例をモデルに、インベスト・ニュージーランドは投資過程を簡素化し、外国投資家に合わせたサポートを提供して歓迎体制を整える」と述べた。
また「より多くのスタートアップ企業、IPO投資が見られ、所得が伸び、成長と革新の包括的エコシステムを備えた国を望む。海外から得た最高の発想と投資が国内に変化をもたらすよう望む」と述べた。