本記事は、内藤誼人氏の著書『不安や悩みがすぐに軽くなるアドラー心理学』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=pressmaster / stock.adobe.com)

共感できる人ほど仕事はうまくいく

仕事で成功するかどうかは、どれほど社会的に適応しているかによって決まる。同僚やお客の立場で物事を考え、その欲求を理解できることは、仕事での大きなアドバンテージとなるからである。

『The best of Alfred Adler』

どんな業界で働いていても、確実に成功するのは相手の感情に共感できる人です。「心配性のお客さまのようだから、こまめに進捗具合を教えてあげると喜んでくれそうだな」といったことを敏感に察知できる人ほど、仕事はうまくいきます。何しろ相手が嬉しく思うことをしてあげられるわけですから。

ドイツのギーセン大学のアンジェロ・ガルディニは、銀行のサービス業務(お客さまの融資の相談など)に携わる396名の銀行員についての調査を行い、感情有能性の高い人ほどお客さまからの評価も高くなることを明らかにしています。ちなみに、感情有能性というのは、「お客さまの感情に敏感」「お客さまの立場で考える」といった項目で測定したものです。

相手の気持ちに共感できる人は、ソツのない対応をとることができます。「痒いところに手が届く」対応をしてくれるので、お客さまも大喜びしてくれるのです。

自分本位で、自分のことしか考えていない人は、どんな業界の、どんな仕事をしていてもうまくいきません。なぜなら、どんな業界でも人間関係は避けて通れないものだからです。

「自分の仕事だけをきっちりやっていれば、それでいいんでしょ」という考えは間違いです。そういう人は、どんな職場でも浮いた存在になります。

乱暴なことを言えば、本来の仕事などどうでもいいのです。仕事よりも、職場の人たち、あるいはお客さまとの人間関係を重視しましょう。そのほうが仕事はうまくいく可能性が高くなります。

私は、これまでに200冊以上の本を出させてもらっています。というと、「よほど文才があるのだろう」と思われるかもしれませんが、そうではありません。残念ながら、私にはそんな才能はありません。

では、どうやってそんなにたくさんの本を書かせてもらっているのかというと、どの出版社の、どの編集者とでも良好な関係を築くことに力を入れているからです。

編集者が「次の本のカバーはこれこれで勝負したい」といえば、私はそれに反対しませんし、「本のタイトルはこれで行かせてください」と編集者に言われたら、やはりOKを出します。「急ぎの仕事でもかまいませんか?」という依頼も快く引き受けます。

どの業界でもそうだと思うのですが、頑固で偏屈な人とお付き合いしたいという人はいません。相手の言い分をホイホイと聞いてあげるような、素直で従順な人になりましょう。そうすれば、どの業界でも成功すると思いますよ。

だれに対しても協力的に

共同体で求められるのは、ある程度の従順さや適応、協力して他者を助ける能力であって、ほかの人を上回るために支配権を得ることではありません。

『性格の法則』

社会で必要なのは、他の人と仲良くやっていける能力。これがないと生きていくことができません。

だれに対しても親切な振る舞いを心がけましょう。どこにも敵を作らないように、いつントです。自分よりも立場が上の人には協力的でペコペコしているくせに、下の人間に対してはものすごく冷たい態度をとる人もおりますが、相手を選んで協力的になるのではなく、だれに対しても協力的になるのがポイントです。

「あの人って親切だよね」
「あの人って協力的だよね」

そういう評判が立つほど仕事はやりやすくなります。こちらは初対面でも、相手はすでにこちらの好ましい評判を聞いているので、非常に好意的に接してくれるのです。

カリフォルニア大学のキャメロン・アンダーソンは、80名のMBAコースの学生に、毎週30分から1時間15分の模擬的な交渉をしてもらいました。毎回、違うテーマで交渉をしてもらったのです。1週目は、ある医薬品工場の買収にかかわる交渉、2週目はある石油会社の幹部とガソリンスタンドの経営者の交渉、という具合に毎回それぞれの役割を与えて交渉をしてもらったわけです。

なお、毎回交渉の後で、クラスで一番協力的だったのはだれかということにも答えてもらいました。すると、協力的な学生ほど、何回かの交渉の後では「あの人は協力的」という評判が立ち、翌週の交渉が非常にやりやすくなることがわかりました。

営業の仕事をしている人ならわかると思うのですが、あるお客さまに親身に接客をしてあげると、そのお客さまが他の人にも声をかけてくれて、「○○を頼むのなら○○社のだれそれさんがいいよ」と紹介してくれます。すると、自分では何もしていないのに、お客さまが別のお客さまを次から次へと連れてきてくれるのです。これは非常にありがたいのではないでしょうか。

打算的になってはいけません。どんな人に対しても親切にしていると、その人がいろいろなところでこちらのよいところを吹聴してくれます。自分から売り込みなどをしなくとも、お客さまがどんどんやってきてくれるのです。

だれに対しても、ニコニコとした態度で接しましょう。相手が喜んでもらえそうなことは、何でもしてあげましょう。そうすれば、ひいきのお客さまになってくれますし、仕事も非常にうまくいくものです。

ポジティブな言葉とネガティブな言葉の比率に注意

「あなたは支配的な女性で、病気を使って支配しようとしています」と言っても意味はないでしょう。気分を害するだけです。
まずは信頼を得て、できるだけ味方にならないといけません。

『なぜ心は病むのか』

相手にとって耳の痛い指摘は、できるだけ慎んだほうがよいでしょう。いきなり「あなたのこんなところがダメ」と指摘するのは考えものです。相手を不愉快にさせてしまいますし、関係もギクシャクするようになってしまうからです。

とはいえ、仕事の場合には、言いたくないことでも言わなければならないケースも多々あります。「だらしない服装をやめろ」「1か月に一度は、きちんと髪の毛をカットしろ」「不機嫌な顔で接客するのはやめろ」などなど、注意すべきことは注意してあげなければならないからです。

部下や後輩に、言いにくいことを伝えるときには、「ゴットマン比率」と呼ばれるものがありますので参考にしてください。

ワシントン大学のジョン・ゴットマンは、何年にもわたる研究によって、好ましい人間関係を築くための黄金比率を見出しました。さまざまな関係において、ポジティブな言葉とネガティブな言葉の比率があり、その比率を守っていれば、人間関係もそんなにおかしくならないのです。

たとえば、夫婦におけるゴットマン比率は5:1。

「あなたのこんなところが鼻につく」というネガティブなことを1回言ったとしても、「いつもありがとう」「キミと結婚できて僕は幸せ者だ」などと5回、ポジティブなことを言ってあげるようにすれば、お互いの関係はそんなに悪くならないのです。

ゴットマンによると、両親と子どもの関係では、黄金比率は3:1。たとえ子どもに「あなたは本当にグズなんだから」と1回叱っても、「あなたは笑った顔がとても素敵」とその3倍くらいほめてあげるのなら、おかしな感じにはなりません。

仕事での比率はどうなるのでしょうか。

ゴットマンによると、職場の上司と部下では、比率は4:1。部下に厳しいことを言っても、だいたいその4倍くらいホメてあげれば、部下に恨まれたりすることはないのではないかと思われます。

お友だちとの関係では、ゴットマン比率は8:1。イヤなことを言ってしまった場合には、その8倍もポジティブなことを言ってあげなければなりません。「8倍もホメてあげないのは面倒だな」というのなら、そもそも友人に対してはネガティブなことは言わないほうがいいかもしれません。

『不安や悩みがすぐに軽くなるアドラー心理学』より引用
内藤誼人
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。著書に『人間関係に悩まなくなるすごい心理術69』(ぱる出版)、『いちいち気にしない心が手に入る本:何があっても「受け流せる」心理学』(三笠書房)、『「人たらし」のブラック心理術』(大和書房)、『世界最先端の研究が教える新事実 心理学BEST100』(総合法令出版)、『気にしない習慣 よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(明日香出版社)など多数。その数は250冊を超える。

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『不安や悩みがすぐに軽くなるアドラー心理学』
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  3. 共感できる人ほど仕事はうまくいく
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