企業間の協業関係のあり方は多様だが、その代表的な形が資本提携だ。一方が相手方に出資することが一般的だが、互いに株式を持ち合うケースもある。当初は小規模な出資であっても、資本提携を端緒として将来的に経営権の取得を伴うM&Aに発展するケースも少なくない。上場企業がかかわる主な資本提携の動きをマンスリーでチェックする。
大和工業、兵機海運の安定株主に
電炉メーカーの大和工業は1月31日、内航海運業者の兵機海運と資本・業務提携したと発表した。兵機海運株の11.33%を東京証券取引所の立会外取引(通常の取引時間以外で行われる売買)で取得するという内容。
大和工業は既保有分と合わせて13.33%の株式を持つ筆頭株主となり、最終的に20%に達するまで追加取得する。併せて、最大2人の取締役を派遣することで合意した。
兵機海運をめぐっては昨年10月から12月にかけて堂島海運(大阪市)による敵対的TOBが行われた。堂島海運は兵機海運株を18%程度追加取得し、持ち株比率を20%近くに高めることを目指した。
これに対し、兵機海運の取締役会は「公開買付者らの実態が明らかでなく、上場企業である当社の大株主になり、経営に関与することに重大な懸念がある」とし、TOBの受け入れに反対。こうした中、大和工業と兵機海運の両社は資本業務提携の協議に入ることを明らかにしていた。
兵機海運は鋼材の海上輸送を中心に港湾・倉庫運営を手がけ、大和工業を主要顧客とする。大和工業は兵機海運を戦略的パートナーと位置付け、物流の効率化や原材料調達の安定化などを通じて国内鉄鋼事業の基盤強化につなげるとしている。安定株主を望む兵機海運にとって、大和工業はいわば“白馬の騎士”といえる存在だ。
実際、堂島海運は12月5日まで実施したTOBで兵機海運株1.26%を取得後も、市場で買い増しを続け、今年1月半ばには13%超まで持ち株比率を高めていた。
エアトリはトキエアなど3社に出資
1月中、3件の資本提携を発表したのは航空券予約サイト大手のエアトリだ。
その1つは、新潟空港を拠点とする地域航空会社のトキエア(新潟市)への出資。重要取引先のトキエアとの事業連携を推し進めるのを目的とし、総代理店として各旅行会社への営業・販売をサポートなどにあたる。航空会社への出資はスターフライヤー、スカイマークに続く3社目となる。
残る2案件はいずれも投資事業の一環として、電動3輪車開発のTerra Motors(東京都港区)、収益不動産開発のエール(東京都港区)に資本参加を決めた。両社は将来の上場を視野に入れており、今後の企業成長によるリターン(投資資金の回収)を期待する。
個人のコンテンツ配信サービスを手がけるnoteは米グーグルと資本提携した。第三者割当増資を通じて、グーグルはnote株の約6%を取得した。両社はAI(人工知能)関連事業での連携について、かねて模索していたという。
AI関連ではもう1つ。IT人材のマッチング事業を主力とするTWOSTONE&Sonsは東京大学医学部発のAIスタートアップ企業OptimAIze Consulting(東京都港区)と資本提携。生成AI活用による人材不足などの社会問題解決への貢献を目指すという。