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長野県を中心に主に循環器系の医療機器の卸業として発展
2011年以降、本格的に心臓血管外科系、消化器系等他分野にも商流を拡大
また、東北地区、関東地区の他地域への商流も拡大
2019年以降は、卸業ももちろんだが、地域医療連携を最終目標に掲げた医療DX分野から多くの病院・クリニック・施設等の顧客を拡げている
これまでの事業変遷
—— まず、これまでの株式会社エム・イーの事業の歩みについてお聞かせください。
株式会社エム・イー 代表取締役社長・小畑 貴志氏(以下、社名・氏名略) 私がエム・イーに入社したのは2011年のことです。当時の売上規模は約52~53億円で、長野県内ではある程度高いシェアを誇っていたものの、会社全体としての強さや事業基盤には課題を感じていました。信頼はあるものの、ビジネスとしての強みが薄い印象を持っていました。
なので、最初に着手したのは、ビジネスとしての強さを強化すべく、長野県でのシェア拡大です。以前は100%だったシェアが、入社時は70%を切っていたので、地道に病院を全て訪問しました。前職の名古屋での経験が功を奏し、多くの医師に覚えていただいていたこともあり、2年ほどでシェアを85%まで回復させることができました。これが社内での信頼構築の第一歩となりました。
—— その後、社長に就任されてからはどのような改革を進められたのですか?
小畑 社長に就任してからは大きく2つの改革に取り組みました。ひとつは社内改革です。当時、評価制度が存在せず、また、紙ベースでの業務が多く、デジタル化が進んでいませんでした。 そこで、PCを活用した業務改革を進め、全社員が最低限のITスキルを習得するよう指導しました。拠点長にはパワーポイントでの発表を義務づけ、事務スタッフにはエクセルの研修を実施し、私自身が講師を務めたこともありました。また、紙を排除し、ワークフローのデジタル化を進めました。1年後には社員のスキルが大幅に向上し、会社全体の業務効率が飛躍的に改善しました。
もうひとつは、事業の拡大です。エム・イーは長野県内での活動が中心でしたが、2014年に「5年で売上100億円を達成する」という目標を掲げ、県外進出を決断しました。その結果、4年で100億円を達成し、業界内でも一定の影響力を持つ企業へと成長しました。
—— なるほど。事業の多角化や新規分野への挑戦も印象的です。
小畑 はい、2020年頃からDXコンサルティング事業や電子カルテ事業、人材紹介事業など、新しい分野への進出を図っています。これらをもとに、全体の売上のうち30%を新規事業で賄うことを目標としています。「治療」だけでなく「予防」と「予後」にも焦点を当て、ITを活用した包括的なビジネスモデルの確立を進めています。
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—— 医療業界に転身された背景についてもお聞かせください。
小畑 私はもともと証券会社で働いており、新規支店の立ち上げや飛び込み営業を経験しました。この経験が、精神力を鍛え、新規開拓における基礎を築いてくれました。
しかし、金融の自由化に対応しない会社の姿勢に限界を感じ、どこでもよかったのですが新しいフィールドで自分の力を試したいと思い、医療業界に転身しました。 医療業界では未知のことが多く、最初は苦労しました。
自社事業の強みやケイパビリティ
—— 貴社の強みについてお聞かせいただけますか。
小畑 弊社の強みは、やはり総合病院との直接取引が多いことです。これは非常に重要な資産だと思っています。この10年間でさらに広がりを見せていますし、取引が途切れたことはほとんどありません。このような関係が築けているのは、単に商品を提供するだけでなく、知識や病院の役に立とうとする姿勢が評価されているからだと感じています。
—— 地域貢献についてもお話しされていましたね。
小畑 そうですね、地域への貢献も大切にしています。特に子どもたちを対象に、各支店で年に最低1団体に対して3万から5万円の寄付を義務付けており、地域に貢献することを目指しています。
—— 医療への貢献についてもお話しください。
小畑 医療への貢献も重要です。看護師のための研修会を十年前からほぼボランティアで開催しています。これによって人脈が広がり、病院での弊社のステータスも向上しています。このような活動が弊社の強みとなっていると考えています。
—— つまり、ギブの精神が大切ということですね。
小畑 ギブアンドテイクを求める業界ではないと考えていますが、与え続けることで信頼関係が築かれます。これがビジネスの基盤となっています。
これまでぶつかってきた課題や変革秘話
—— これまでの課題や変革についてお伺いしたいと思います。特に評価制度や社内のシステム化、いわゆるDX化についてお話しいただけますか?
小畑 これまでの課題としては、まず最初にPCを使う文化がほとんどなかったことですね。今ではPCがなければ仕事ができないほどになっていますが、最初は大変でした。そして、一番大変だったのは人材育成です。最初の5年間は私が直接指導していましたが、マンネリ化してしまうので、外部の専門家に同じことを委託して考え方を浸透させる形にしました。この業界では、珍しく研修をしっかり行っています。
—— 確かに、業界全体の風土もありますね。採用についてはどのように変わってきましたか?
小畑会社のブランドが確立していなかったので、 最初は妥協して採用していました。しかし、数年後には選べる立場になりました。新卒の応募も増え、選択肢が広がったのは大きな変化です。継続的に新卒を採用することで、学校側からの信頼も得られています。
—— 長野でのブランド力も高まっているようですね。地域における採用の変化も感じられますか?
小畑 はい、長野ではブランド力が上がってきています。関東ではまだ知名度は低いですが、長野で就職を希望する人が増えているのは確かです。昔は東京の大学に行く人が多かったですが、今は家庭の事情もあり、県内の大学に進学し、県内で就職する人が増えています。地元の大学とのコミュニケーションも大切にしながら、今後も継続的に人材を育てていきたいと思っています。
今後の事業展開や投資領域
—— 今後の事業展開や御社の投資領域についてお伺いしたいのですが、例えばM&Aや業務提携、アライアンスなど、どのように考えていらっしゃるのでしょうか。
小畑 新しい事業で、売上の3分の1を賄って、合計で売上200億円に持っていきたいと考えています。
—— 新規事業とは具体的にどのようなものですか。
小畑 DXコンサルや電子カルテ、人材紹介などがあります。特に地域医療連携が重要です。地方では人口減少が進んでおり、労働生産性のある人の人口が減っています。これにより、病院や看護師の人手不足が深刻です。この状況に対応するためにはDXが必要です。都会よりも地方の方がDXが必要だと考えています。
しかし、病院の先生たちがこの必要性に気づいていないことが多いです。公立病院など、公的医療機関ではでは院長が任期で変わるため、変化を避ける傾向があります。この現状を変えるためには、現場が気づくことが重要です。病院の統廃合やクリニックとの役割分担も必要です。
—— 在宅医療についてはどう考えていますか。
小畑 国はベッド数を減らそうとしていますので、在宅でも同じくらい安心できる環境を作る必要があります。これもITで実現すべきだと考えています。ITでどれだけ安心感を提供できるかが鍵です。
循環器基本法に基づき、地域を25万人から40万人単位で分けて、効率的な医療提供の仕組みを作りたいと考えています。2035年にはこの状況を確立したいと考えていますが、これは理想です。業界のハードルは高いですが、ビジョンがないと達成できません。
ーーなるほど、どのように進めていきたいとお考えですか。
小畑 医療業界だけではDXは実現できません。通信会社やシステム会社との連携が必要です。もしかしたら、食品業界などとも協力する可能性があると思います。垣根を作らずに異業種の企業が医療業界に参入できるような業務提携を進めていきたいです。エム・イーが買収で大きくなるのではなく、連携を通じて業界に参入していく形を目指しています。
メディアユーザーへ一言
—— 最後に、メディアユーザーへのメッセージをお願いできますか?
小畑 私自身、卸業にはもう魅力を感じていないんです。しかし、お客様と直接取引することは非常に大事にしています。だからこそ、卸業は他の人に任せたいと思っています。そして、新規事業に力を入れていきたいのです。今、目途が立ってきたところで、実は分社化を考えています。
この新規事業を医療コンサルティングとして分社化できれば、100億、200億の会社に育てることができると考えています。卸業のことは静かに進めつつ、この新規事業を一気に伸ばしていきたいですね。そのために、新規事業には人材が必要です。今後、1年に10人、20人と採用しなければならない時が必ず来ると思っています。
—— ありがとうございました。
- 氏名
- 小畑 貴志(おばた たかし)
- 社名
- 株式会社エム・イー
- 役職
- 代表取締役社長